天然砥石比較 5

表面
裏面
側面

砥石硬度  6/10
研磨力 7/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10


研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試し纏めた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。ですので後々変わるかも。

この山の石は独特の匂いと研ぎ味ですね。この砥石、研磨力は強いのですが、さすがに当たります。ただ見た目程ではなく、当たる時も感触などはありません。光に透かしてみるとピチピチ来ているという感じで。刀身硬度がもっと高い刀や、その刃中のみなら引けるという感じです。また、水に長期間つけておくとヒケの具合が和らぐとお教え頂いた事があります。

この石は複数持っていて総体に硬い物が多いのですが、柔らかめの物は刃艶として使用すると非常に良い効果を発揮してくれます。この角砥は今回試した結果、砥石硬度6とこのタイプの石としては柔らかめ。という事で少し硬めの刃艶として使えそうなので、今後カットして刃艶になるかもです。



天然砥石比較 4

表面
裏面
側面

砥石硬度  6/10
研磨力 5/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10


研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試し纏めた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。ですので後々変わるかも。

これも10年程前は主力として使用していた石。今使ってみると当時思っていたよりも若干硬くそして研磨力も弱め。

長らく全く使っていなかったが、今後はたまに使う事になるかも知れない。



天然砥石比較 3

表面
裏面
側面

砥石硬度  4/10
研磨力 5/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10


研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試し纏めた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。ですので後々変わるかも。

10数年前ごろ主力として使用していた石。特に研磨力が強い訳でもありませんが、柔らかめで使いやすい石で使用頻度も高く、よく減っています。

天然砥石を砥石硬度と研磨力だけで表そうとするのはかなり無理がありますが、自分の中での整理のためでありご容赦を。



天然砥石比較 2

表面
裏面
側面

砥石硬度  6/10
研磨力 7/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10


研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試し纏めた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。ですので後々変わるかも。

30〜25年程前、主力として使用していた砥石。久々に使用したが頗る上々。何故今まで使わなかったか…。今後はまた主力に復帰です。



天然砥石比較 1

表面

裏面
側面

砥石硬度  2/10
研磨力 2/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

一時期よく見かけたタイプの砥石。カラスが特徴的。

茶色の筋は当たります。黒は大丈夫。
研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試し纏めた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。ですので後々変わるかも。



”地を引く”

昨日のブログで「効く効かないよりも、地を引くか引かないか、そういう判断で良い時代だったのではないか」と書きました。
書きながら、ちょっと間違った事を書いてるなぁと思いながらも、そのままにしてしまいました。
一応訂正といいますか補足しておくと、内曇りには地を引く砥石はめったにありません。
特に刃砥ではほぼ無いというくらい少ないです。
(”地を引く”とは内曇り工程の地引(じびき)や地砥の事ではなく、ヒケ傷が入るという意味です。研ぎ台や水を清潔にしても、砥石中の硬い成分により、どうしてもヒケ傷が入ってしまう物が有るんです。)

天然砥石は見た目に綺麗な物ばかりではありません。筋や皮やと硬い部分がある場合も多く、その箇所は刀にヒケ傷がつく物もありますので、事前に掘り取って安全な状態で使用します。
ここでいう地を引く砥石とは、筋などではなく、綺麗に見えてもどうしてもヒケが入る砥石です。
しかし内曇りは基本的に綺麗ならばヒケは入りません。今研ぎ場には百数十の内曇り系の砥石がありますが、地を引く砥石は一本だけです。
たまに趣味の研磨の方が刃引き写真を載せ、ヒケが入るので石が悪いやら刀に合わないなどと書いているのを見かけますが、まずほぼ100%、砥石が悪いのではなく引き方が悪いのです。



くさい砥石

しばらく前に角砥では初めて買う山の内曇質の砥石を購入しましたが、結構な研磨力でした。
普通ならグレーの部分が多くなるべく見た目に綺麗な砥石を求めるところですが、この山のこの層の質は違う様です。(蓮華などは当然まじりますが。私はカラスで効く砥石に出会ったことはありません。先輩方の評価にはカラスも入っていますので、世代でしょうか。)
グレーの部分は泥で、白い斑で刀を引く事を躊躇してしまう部分に研磨力があります。
そもそもこの砥石は見た目からの判断で普通は購入しない物ですね。やはり砥石は使ってみなければ分からない(見た目だけで判断できる時代もあったと思います。しかしおそらくですが、昔は全体にかなり高次元の砥石だらけだったのではないかと。効く効かないよりも、地を引くか引かないか、そういう判断で良い時代だったのではないかと想像します。私の想像です。)。
で、この砥石を使った後の細工場は臭いんです。独特な酸味のある臭いに包まれます。
この斑の部分の成分が臭うのか、それとも鉄を異様に卸すので鉄のにおいがしているのか。



砥石をいただきました

天然砥石を頂戴致しました。
この写真以外にも多数なのですが、内曇りが30丁以上。名倉・細名倉が10程度。
いつも好んで使っている大平の合砥も10以上。
あとは刀研師にはもったいない中山や産地不明の大判砥石が多数。

内曇り用の棚にはもう入りませんので、人造砥用の棚にあった使っていない砥石を出して入れ替える事に。
この写真以外にも箱入りの新品砥石が沢山ありますが、結局使わないので処分です。
この十数年、人造砥に関しては使う砥石が大体決まっています。良い砥石を沢山教えて頂き、様々な好きな砥石に出会うことが出来ました。
この写真の砥石達ももちろん良い石なのですが、砥石は良否よりも好みの違いが大きく、使わない物は有っても結局使わないんです。(写真中程の備水はついでに洗っただけで、また棚に戻ります)

人造砥用の棚ですが、結局五分の三以上は天然砥石に。
人造砥は好みベースで大丈夫ですが天然砥はそうは行かずなんです。様々な刀に対応するため様々なタイプの天然砥石が必要です。
同じ砥種でも出来るだけ多くの砥質を持っている方が対応力が上がります。
この様に多数の砥石を引き継がせて頂けるという事は、今後の研磨の質向上に確実につながります。



砥石の減り具合

の事は最近書きましたっけ? 書いた気もしますがどうだったか。。まいいか。

とにかく砥石は減らないに越した事はない。研磨の経験が増えれば増えるほど、砥石は減らなくなります。これは荒砥、中砥、内曇砥、どれも同じです。経験が浅いほど砥石は減ります。

不思議なもので、たとえ仕上がりの到達点が同じだとしても、砥石の減り具合は大きく違います。この減りの度合いですが、本当に驚く程の違いで。例えば細名倉でいうと、10年使えると思っていたら、2年で無くなる。内曇刃砥で言えば、私が8年使うつもりでいたら、1年で使い切ってしまう。こんな感じでしょうか。過去の経験上全てこの通りでした。こまめに面直しをするから減ってしまうとか、そういう事では無いですね。何故か無駄に減ります。



刃取りを

ここのところ多分40日中20日以上が刃取り作業でした(一口の刀ではありません)。

同じ刀で何日も刃取り作業を続けると、指が擦れる部分の地鉄の色が変わってしまう”ぼうず”と呼ばれる現象が起こるのだと度々聞きます。
私は指に”ぺんダコ”的な物が出来ない体質で、毎日どれだけ長時間磨き棒を使い続けても、毎日地艶や刃艶作業で指を酷使しても、中高生の時毎日毎日何時間もギターを弾き続けても、磨き棒ダコが出来たり、弦で指先が硬くなったりしないんです。そのせいでしょうか、”ぼうず”になった事がありません。
刃取りの時の刃艶の当て方がたまたま地鉄に指が擦れにくいやり方になってるのか、いやしかし結構指が擦れていますので、やはり指先が柔らかいんだと思います。
で気が付けば、多分今年で研ぎを初めて30年目、だと思います
30年間ずっとこんな生活で。。

以前、18歳からの内弟子8年間の記録を見ましたら、3年目以降は年間70口以上を毎年研磨していました(毎日16時間ほどは研ぎ台に座っていましたし)。
独立し上賀茂神社社家町で研磨をしていた6年間は、部分研磨の本数が爆増しますので、研磨口数激増です。
そして今の研ぎ場になってしばらくは研磨数さらに増。。
しかしその後は新作刀を研磨させて頂く機会が増え、全体の研磨口数はかなり減りました(この10年少々で新作研磨は180口程度かと思います)。
新作刀を研磨させて頂く事、それは研師の研磨技術向上につながります。新作刀研磨は学びの宝庫。
基本的な下地研磨から、いざという時の対処、時にはアクロバティックな事も。(新作研磨経験が浅い内は研磨開始数日で、これ以上何を行うべきかが見えなくなります。その見えなくなったまま仕上がってしまっている新作刀を見る事多数です。アクロバティックな事でいえば、例えば樋を掻く前提の刀なら、鎬地は何をやってもOK。平地に大きな傷が有る場合、鎬地に大穴が空くほど鏨を打ち平地に鉄を移動。結果平地は大きく膨らみますが、その鉄で傷を閉じ消去。その後無用となった平地の膨らみは押し取ります)

幸いこの30年、研ぎの仕事に飽きを感じた事は一度もありません。おそらく一度も無かったはずです。
そういう性格なのか、それともそういう仕事なのか、どちらかは分かりませんが非常に幸せな事だと思っています。
そしてこんなにも毎日研磨を続けていますが、指先の皮はふにゃふにゃのままです。。