刃取りを

ここのところ多分40日中20日以上が刃取り作業でした(一口の刀ではありません)。

同じ刀で何日も刃取り作業を続けると、指が擦れる部分の地鉄の色が変わってしまう”ぼうず”と呼ばれる現象が起こるのだと度々聞きます。
私は指に”ぺんダコ”的な物が出来ない体質で、毎日どれだけ長時間磨き棒を使い続けても、毎日地艶や刃艶作業で指を酷使しても、中高生の時毎日毎日何時間もギターを弾き続けても、磨き棒ダコが出来たり、弦で指先が硬くなったりしないんです。そのせいでしょうか、”ぼうず”になった事がありません。
刃取りの時の刃艶の当て方がたまたま地鉄に指が擦れにくいやり方になってるのか、いやしかし結構指が擦れていますので、やはり指先が柔らかいんだと思います。
で気が付けば、多分今年で研ぎを初めて30年目、だと思います
30年間ずっとこんな生活で。。

以前、18歳からの内弟子8年間の記録を見ましたら、3年目以降は年間70口以上を毎年研磨していました(毎日16時間ほどは研ぎ台に座っていましたし)。
独立し上賀茂神社社家町で研磨をしていた6年間は、部分研磨の本数が爆増しますので、研磨口数激増です。
そして今の研ぎ場になってしばらくは研磨数さらに増。。
しかしその後は新作刀を研磨させて頂く機会が増え、全体の研磨口数はかなり減りました(この10年少々で新作研磨は180口程度かと思います)。
新作刀を研磨させて頂く事、それは研師の研磨技術向上につながります。新作刀研磨は学びの宝庫。
基本的な下地研磨から、いざという時の対処、時にはアクロバティックな事も。(新作研磨経験が浅い内は研磨開始数日で、これ以上何を行うべきかが見えなくなります。その見えなくなったまま仕上がってしまっている新作刀を見る事多数です。アクロバティックな事でいえば、例えば樋を掻く前提の刀なら、鎬地は何をやってもOK。平地に大きな傷が有る場合、鎬地に大穴が空くほど鏨を打ち平地に鉄を移動。結果平地は大きく膨らみますが、その鉄で傷を閉じ消去。その後無用となった平地の膨らみは押し取ります)

幸いこの30年、研ぎの仕事に飽きを感じた事は一度もありません。おそらく一度も無かったはずです。
そういう性格なのか、それともそういう仕事なのか、どちらかは分かりませんが非常に幸せな事だと思っています。
そしてこんなにも毎日研磨を続けていますが、指先の皮はふにゃふにゃのままです。。





前の記事

研ぎ道具

次の記事

砥石の減り具合