研磨工程を ②

①の結果、錆びの程度はそれほど悪い状態では無さそうです。
下地研磨も棟以外に大きな斑は有りません。
古研ぎで地肌は見え難い状態ですが過去の経験から察するに、この国の特にこの一派独特の地鉄を有する刀と思われます。
古研ぎですが、刃の状態はほぼ確認出来ます。
刃中、改正或いは中名倉の筋交の砥目が多数残る(数百)。  
この度の研磨でそれらの砥目は完全に抜くのですが、その上で内曇・刃艶を入念に効かせても、一見さほど大きな変化は無いでしょう。
しかししっかり見れば、確実に違いが出てくれるはずです。   刀剣美とは本当に微妙な物です。
 

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研磨開始。
三つ棟、錆びを切りつつきめる。
刃、地、少し錆びの進んだ部分は伊予砥を切りに。 後に改正を筋交に押し、その後筋交に突く。
錆びの浅い部分は改正を突く。
樋の錆びを除去後、磨棒にて磨き。



研磨工程を ①

以前、研磨記録の更新予告をしましたが少し予定を変更して、↓の平脇指の研磨の進み方をご紹介致します。

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某日、平脇指研磨開始にあたり、状態を精査。
錆び、以前の下地研磨の状態などを確認し砥石の進め具合を決める。
地刃の出来から、研磨すればどの様な地鉄になるか、この刃文ではどう言う刃取りにするか等を考える。



印刷中で

仕事関係の往復ハガキの印刷中です。
往復ハガキの印刷は初めてなのですがややこしいですねぇ。
4回印刷すると言う事ですか・・・? もしかして非効率な事をやってしまっているのでしょうか。
色々試しましたがこれしか出来そうにありません。     疲れた・・・。
今晩娘(1歳半)をお風呂に入れている時、研磨の仕上げに関して大変良い方法を思いつきました。
何故今までこの考えに行き着かなかったかなぁ・・。  
私は研ぎの仕事しかした事が無いので発想の範囲が狭いのかも知れません。
しかし長い年月に亘り少しづつ小出しに色んな事が分かって来ますのでモチベーションが維持出来てよいのかも知れません。
それにしてもお教え頂いたり発見したりする内容は、新たな工程を作ってしまう物が殆どですので研磨の時間が増える一方です・・・(泣)
職人ですので高レベルの仕事をいかに短時間で仕上げるかと言う事も重要で、その事も平行して考えていますがなかなか難しいものです。



良いところを見よ

例えば「研ぎ」を見る場合ですが、「良いところをみる」。 これが以外に見落としがちなのです。
傷、欠点、補修などを見抜けず研磨を行なうと、内曇の工程で初めてその事に気が付く様な事になってしまいます。
その時もしも前回の研磨と同等、或いはそれ以上の技術が無かった場合原状回復は不可能です。
結果、研師で有る私は常に刀の欠点を探す事にばかり目を向ける傾向にありました。
仕事柄、刀をそう言う目で見るものですから、どうしても”研ぎ”に関してもその方向で見てしまいがちです。
技術が高いか低いか。 そう言う価値観です。
しかしそれでは自分が成長する事はないですね。
よく分かっているつもりでいましたが、同業の大先輩から御自身の失敗談をお聞きして改めて自分の認識の甘さを実感致しました。
 良いところを見よ。 
あたりまえの事ですが、大変重要な事です。
本日は研磨に関し、自分一人では絶対辿り着けなかったであろう事をお教え頂きました。
ずっと大きな課題であった事です。
なんと言いますか・・・・。例えば絶対に傷が付いてはいけない品物が有ったとします。
無傷が100点、超極微傷で0点と言う品です。
その品に刃物が近づいても0.001ミリでも隙間が有れば無傷で100点な訳です。
しかしあと0.001ミリ近づけば0点になってしまうのです。
極僅かな違いが結果に多大な影響を及ぼす訳です。
本日知った事はそう言う内容でした。(例えが下手ですみません)
毎日やっている事ですが、次から次へと知らなかった事が出てきます。  嬉しいです。



刀剣入札鑑定会 平成22年12月19日

今年も押し迫ってまいりました。
最後の追い込みで疲れも出て来ているのか、最近エビを食べたらひどいジンマシンが出る体質になってしまっています。
2度目は原因を確かめるために、3度目は本当かどうか確かめるために。
もうエビとはお別れです。
鑑定会当日、頭が晴れず・・・。 
ざっと刀を見ましたが曇った意識の中からは何も出てきません。
確かめるために、応永正長永享嘉吉文安宝徳享徳康正長禄寛正文正応仁文明長享延徳明応文亀永正大永享禄天文・・・・・・・・と唱えてみます。
正保慶安承応、寛保延享寛延辺りが出てきません。 
そらんじている事が出て来ないのに入札鑑定で微妙な記憶を呼び起こす事は無理でしょう。
一号 薙刀
 所謂男薙刀で静型寄り。 長さはその尋常な物。  薙刀樋や梵字有り。
 互の目、湾れ、波のぶつかる刃など。足が目立つ部分などあり。 匂い口深く明るくキメ細か。 細く鋭く金筋。
 非常に大人しい研ぎでもあり、詰む地鉄。 地景や砂流し有り。
この匂い口、この互の目の頭、この刃文の間隔、研ぎ上がった場合の刃取りの流れ、確かに何度か刃取りをした経験が有るタイプです。 しかしどうしても出てこず。。 二号刀へ。
二号 脇指
 一尺八寸ほど。少し反りめ。中直刃。匂い口深く明るく。中央腰寄りに長ーい食い違い刃が表裏揃う。
 平地鎬地ともに綺麗に詰む地鉄。
 武蔵大掾忠廣に入札。
三号 脇指
 一尺八寸ほど。少し反り浅。中幅で湾れ。匂い口、二号より浅く、刃縁のみ細かく働くも刃中寂しい。
 ハバキ上に焼き出し映り風が確認出来る。(焼き出し付近は水影状になっていると思われる)
 平地鎬地ともに板目など肌が立つ。(古研ぎ故大肌のみ)
 康継の2、3代と思うが決めきれず。 初代でも嫌なので「越前康継」と入札(汗)
四号 平脇指
 平身で減って崩れぎみの樋を棟寄りに。 少し矢筈がかる刃、丸く跳び焼き少々多めに。
 長さ、身幅、反り、重ね、樋、全て美濃にしか見えませんが、どうしてもこれに入れたいのです。
 島田義助と入札。
五号 短刀
 八寸台か。 先で内反り。 身幅重ね尋常で末古刀。
 細目で絞まる直刃。 匂い口沈みぎみ。 フクラ下付近で刃が細り、その部分の匂い口が一段と沈む。
 地は少しだけ流れ、全体に白く肌立つも整う。しかし地沸えや地景は見えず。
 これは困った。 
 入札が少し遅れたので、「五号は当らない」と言う声が聞こえて来ました。
 備州三原住貝正興と入札。
一号 疲れてしまい、肥前行廣と入札。
 イヤ
 当
 当
 イヤ
 通り
一号 そうでしょう。  
    親国貞に入札。
三号 そうでしょう。
    濃州兼道と入札。
五号 そうですか。 「東西どちらかの隣国」と言うヒントを頂きました。
    備後を挟んで東は備中、西は安芸に周防。 芸州って輝廣しか浮かびません。もう少し西で二王ですが二王    とも微妙に違いますし二王なら当てられます。 当てられないと言う事で、備中。 青江以降でしょうから、古     水田です。   アザエ為家と入札。
 
 国入
 当
 当 
 然
 然
一号 一干子忠綱と入札。
 当 
 当
 当 
 然
 然
 一号 薙刀  粟田口近江守忠綱  彫物同作
 
 二号 脇指  近江大掾藤原忠廣
 三号 脇指  葵紋 越前康継作之 以南蛮鉄 (三代)
 四号 脇指  兼道作    
 五号 短刀  備中国荏原住国重作 天正年紀入り
五号、先ほど名鑑で見てみましたら、呰部為家は新刀期からしか載っていませんでしたので、古水田で入れるなら普通に古水田国重としたら良いようです。 これから先、古水田が鑑定に出る可能性は少ないと思われますが。
大変珍しい御品でした。

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粟田口忠綱

先日の京都支部の入札鑑定、一号刀に粟田口忠綱(一干子)の薙刀が出ていました。
また一の札、二の札と外してしまいました・・・。
研師で一干子を毎回の様に一、二と外すのはまずいですよねぇ。  ・・ブログに書いちゃってますけど。
造り込みは静型薙刀、彫りは梵字と薙刀樋だけです。
一応越後包貞までは頭に浮かびましたが、忠綱は最後まで出て来ませんでした。(薙刀から大坂新刀を導き出すには匂い口の特性によほど自信が無いと難しそうです)
それにしても忠綱、彫りをもてはやされますが、良い刀身です。
そろそろ頭に入って来たと思います。 
匂い口の雰囲気を掴んだ気がします。
次回からは典型作ならば積極的に出て来そうですし、変わり出来でも消去法でしょうけど一の札で行きそうな気がします。



冷えますが

明日は凍りますな。
10年、20年後に、「2尺7寸を越える刀は重いので研げません」とは言いたくないので、迫り来る40代を前にここ半年くらい色々はじめてます。
肩こり無くなりました。
下地研ぎも今までの限界時間を大幅に越えられる様になりました。
まだまだ鍛えに反応してくれる体じゃないか!っとちょっと嬉しくなって小腹が空いたので深夜のマクドを買いに行ってしまいました。 



先日の画像は表、これは裏です。

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薩摩新刀

本日は研場にて薩摩新刀を拝見。
薩摩新刀独特の非常にきめ細かな刃中。 これは何と表現するのでしょうか。 
この刃中は薩摩新刀か古名刀でしか思い浮かばないです。
本当に美しい。
おそらく刃艶ののりも最高でしょう。
地の明るさも際立っておりました。
もっと長い時間鑑賞したい御刀でした。