小刀の押形採拓

小刀の押形を採拓する事に。考えてみれば小刀は初めてです。
重ねが無いので通常の楔形の台では輪郭の採拓は無理と思われ、シリコンで刀身に完全に隠れる台を作り刀身を浮かせます。

研ぎ崩れて鎬が無く銘も薄いです。石華墨での採拓ではおそらく銘は出ないでしょう。
インクなら出るでしょうか?!インク採拓の経験が無くちょっと分かりません。
小刀は茎の棟区部分が二段構造になっているのでここをどう摺り出すか・・・。
小刀の押形を書籍で確認してもやはり茎棟区部が摺れないので空白になっています。なんとか摺り出したいですが。。

銘が有る事はなんとか確認出来ますが、かなり厳しいですねぇ。。
茎の鎬が高いので重りを外し紙を平面にすると茎幅が実際より広くなってしまいます。
普通の鎬造りや菖蒲造り等は茎から上身へ鎬が通っており、実際の身幅より押形の方が広くなったとしても刀身全体にその現象が起こるので見た目の違和感はありません。しかし小刀は茎だけに鎬があり、押形の棟角の線にずれが生じてしまいます。
二段になった区を摺り出したうえに幅が広くなってしまう現象を解決する事は無理そうで、この辺は曖昧に処理するしかないですね。



雲林院短刀

少し前ですが雲林院(うじい)の両刃短刀を拝見しました。
2012年の支部鑑定に雲林院包長の両刃短刀が出た事がありそれと同一かと思いましたが、事前に刃長をお聞きすると7寸程と小振りとの事。
確か鑑定に出た包長は大振りだったイメージで。。
結局それは私の完全な記憶違い。まぎれもなく当時支部鑑定で拝見した雲林院包長の両刃短刀でした。

銘はよく切れた細鏨で勢州雲林院住包長。裏年紀は文亀三年八月日。
長年のお手入れが行き届き鉄味抜群の茎。在銘品の良さを改めて感じさせてくれます。
平成24年 京都支部新年恒例一本入札 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
当時の入札鑑定記にも書いていますが、杢目と柾目が美しく、室町期の最上質の鉄です。
所謂本国物ではありませんが、皆に大切にされて来た事がよくわかる清々しい名品でした。



無題

少し前に美濃物の皆焼刀2口の全身押形を採拓しましたが、その前後、綾小路太刀、大和鎌倉期在銘太刀、大和南北朝期在銘太刀、大和応永頃の在銘刀、清麿、則重と全身押形を採拓。
描き手によって描きやすい刀、難しい刀と色々あると思いますが、清麿は墨派の人にとって難しい刀ではないかと感じます。刃文の形こそ信秀に似ていますが刃文描写の難易度は別次元です。



5月京都府支部入札鑑定(2)

そもそも1号から古い物順だとしたら、3号で善定なので4号で鎌倉~南北の大磨上げという見方は破綻しているのですが、苦しい時はこういう事が起こり得るのが入札鑑定です。しかも3号善定でイヤだったし。全て立て直しが必要です。

1号、表裏揃う村正風の刃文ですが、若干箱になる互の目がフクラ下にあり。
兼若と入札。

2号、通にて能く候と来ましたのでもうこれしか無いです。
帽子少し深く、頂点が中央で、庵が大変高く、先まで重ねを維持し、柾目は目視出来ないが刃縁が柾の働き。初見からこれを認識しているのに何故に1の札で入れないかなぁ。。
手掻包俊と入札。

3号、地錵が少なく白い鍛接面で、善定に結構自信があったのですがイヤでした。教科書通り節もあるし。
この刃だとおそらく末手掻なのでしょうが、実は末手掻は大磨上げ無銘の極めでは大量に存在しますが、在銘の末手掻の長い物に出会う機会は滅多に無くイメージがわかず。末手掻には大磨上げ無銘の寛文新刀風の姿のイメージが頭にこびり付いていて、こういう応永~の姿と結びつかない。
しかしおそらく末手掻なので・・・。
手掻包俊と入札。

4号。南北長船に行ってしまったが、国分寺助国の方が絶対良い札だったと思う。が、イヤなので行けず。全く分からない。
来国真と入札。

5号、文殊で取ってもらい通りなので堀川です。
広実は数がほぼ無いと思うのですが、昔本部から来た広実の野趣溢れる錵のイメージと完全に合致する。
堀川広実と入札。



同然
イヤ
同然

1号康継
4号清左



同然
イヤ
同然

4号藤島→簀戸国次でイヤ。5回イヤをもらうってなかなかの奇跡です。

1号 脇差 表(葵紋)肥後大掾藤原(重要美術品)
      裏 越前康継
2号 短刀 包俊(重要刀剣)
3号 太刀 大和国住藤原包久作(重要刀剣)
4号  刀 兼宿
5号  刀 国安(堀川)(重要刀剣)

今回本気で反省しましたので、これからは作品単体だけで判断し入札します。
全部肥前刀に見えてもビビらず全部肥前刀に入れられる勇気を持ちましょう。



5月京都府支部入札鑑定(1)

今回は熊谷和平先生が講師に来てくださいました。

1号 平身。寸延び。幅広く重ね薄い。三つ棟。
皮鉄は詰んでピチピチ立ち白い。刃文は表裏揃い村正風。
重ねはかなり薄い・・・。

2号 短刀 三つ棟かなり高い。定寸ほど。重ねは先まで落ちず。下地が上手い。
板目でかなり上質。少し映り気で白け気味というべきか。直刃で元が少し広く中程少し狭く、ほつれなど働く。
帽子の頂点は中央なので僅かに倒れる様に見える。返りは来国俊風。

3号 刀。少々反る。室町の反り。刃寄り柾。
焼き出し映り風が鎺上に見え、生ぶだとおもう。直刃で刃中に柾気の働き。しかしばさけず。
中央上付近に節。上半匂い口しっかりして深く大変明るい。
善定兼吉と入札。

4号 刀。反り浅く大磨上げだと思う。中鋒枯れ気味。匂い口沈み気味。下半匂い口締まり小足。少し逆足も。
上半直調小丁子。帽子長義風。

5号 刀。少し長い。反り浅め。表は板目肌立ち気味。裏詰む。
乱れ刃で少々ばさける。錵粒荒目。帽子表焼き詰め風。裏僅かに返る。

どれも素晴らしい刀ですが、入札となると非常に難しく、なかなか書けず何度も見る。
こんなに書けない事は滅多に無い。
今から書く事は入札鑑定時の頭の中の悪い見本の様なものですが、当日の考察を・・・。

熊谷先生は確か過去に1号から古い順に並べる事が多かったはず。。という事は今回の1号も古いのか?!
刃文は村正風だが地鉄に皮鉄がこれだけ残っていてこんなに重ねが薄いし、そもそもフクラが村正ではない。
長義にこの手の素直な互の目があったはずで。ただ2号が鎌倉短刀だとすると古さの順番が違う。
2号は身幅と棟角の雰囲気が左文字風だが反りが違い、来と見たいが地鉄が来だと国行の地鉄になってしまい、来とは見る事が出来ず。
1号を来国次として、2号も来か。だとすると2号は国俊国光だが、それだと古さの順番が違い・・・。
1号2号ともに来国光で、来国光の作風の広さを見せるための出題か。。

4号も難しく、1,2号も苦しんで、苦しいとこんな事を考えて札を入れようとしてしまうのです。

1号 来国光、2号 来国光と入札

4号、地鉄は室町の鉄だが、この刃文がどうしても出て来ず。
大磨上げ無銘だと思うので、例えばこんな極めが付いているとか。
長船重真と入札。

5号、焼き詰めに引っ張られてしまい、1,2号の苦しみもあいまってもうよく分からない。
文珠の包国で行ってみよう。
駿府包国と入札。

時代違いイヤ

イヤ
イヤ

1札目、多分過去最低の結果となりました。



名刀展チケット締め切りました

名刀展のチケットは全て差し上げる事が出来ました。
ご連絡頂きました皆様、ありがとうございました。



本能寺「名刀展」のチケットを差し上げます

本能寺、大賓殿宝物館にて開催中の「名刀展」チケットを頂きましたのでご希望の方にさしあげます。
当ホームページ上部メニューの「お問い合せ」の入力フォームからご連絡頂きましたらお送りします。
お送り先のご住所とお名前をお願いいたします。
先着9枚です。
本能寺「名刀展」 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)



室町時代の皆焼

美濃刀全身押形の続きです。
刃文描写は差し表に入りました。
そういえば先日ご自身も押形をされている方に「刃文はどこから描き始めますか?」とたずねなれました。
私は差し裏の刀身中央から描く事が多いのでその様にお答えしましたら驚かれていて。
言われてみれば確かに意外なのかもですが、私と同じ人も結構居そうな気もします。
因みに鉛筆やボールペンなどで物打先の簡単な図を描く時、私は昔から必ず横手から描くのですが、もしかしたら研師には多いのかも。



美濃刀

美濃刀は現存数が多いわりに研磨する機会は少なく、手元に残る全身押形にも美濃刀は殆どありません。
今回は美濃の同一銘の刀を同時に採拓。
同一銘を連続して採拓するのは以前採った忠吉大小以来だと思います。

今回の刀、銘は同じですが銘振りや茎仕立てに多少の違いがあります。ただ独特な雰囲気を持つ作風には共通性を感じ・・。
同人なのか同一工房作という事か。。