古い差し込み研ぎを拝見2

少し前、過去何度か拝見している刀ですが、差し込み研ぎで有名な研師が研いだものを久々に拝見しました。
古い研ぎ。多少のヒケや曇りは有るが状態は良好。
色々考えながらじっくりと何度も拝見。とにかく上手い研ぎで、以前拝見したときの感想をブログで確認してみました。
古い差し込み研ぎを拝見 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
今回の感想と寸分たがわず同じでした。。
7年前なんですけど。全然進歩していないんでしょうか。。

マーティンと一緒に拝見した時のこともありました。
「兼宣作」 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
その後も色々試しているのですが・・・。

でまた今回も試していましたら、古研ぎに見るトロトロの差し込み研ぎが完成しました。
グーグルマップ・浄拭 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
このブログの後半で「本阿弥の三事」についての意見を書きました。それはあのトロトロの差し込みがどうしても解明出来なかったからですが、解決です。鉄肌拭いとは原理が違うのでしょう。差し込み拭いの驚くべき効果を始めて体験しました。



『「愛宕山は砥石山」愛宕山砥石を知る人々の証言』

『「愛宕山は砥石山」愛宕山砥石を知る人々の証言』DVDをお送り頂きました。
“日本刀”は、愛宕山周辺を始めとする京都産天然砥石が無ければ完成しません。
現在我々が刀の美しい地肌や刃文を鑑賞できるのは、京都産天然仕上げ砥石があってこそです。
#8000,#10000・・・と粒度の高い人造砥石はいくらでもありますが、単に粒度の問題ではないのです。
天然仕上げ砥石のみが持つ特異な性質が刀に作用し、極めて精緻な研磨技術が発達、そして日本刀独自の鑑賞文化が生まれました。

今、愛宕山周辺の砥石鉱山は極一部を除きほぼ全てが閉山状態。
刀剣鑑賞文化の継続が危惧されるところです。
この映像記録作品には、まだ盛んに採掘が行われていた当時の採掘職人さんや、その仕事を支えていた周辺の方々の貴重なインタビューが収録されています。

ちょっと話が逸れますが・・・。
当時の採掘現場では、作業により傷んだタガネや矢(バール)をその場で鞴(ふいご)と炭を使い修理しながら使用したというお話がありました。刃がこぼれたり潰れたりしたタガネをそのまま研ぐのは大変なので、焼きなましてから研磨、その後再度焼き入れを行うのでしょう。
戦が頻繁だった昔、傷んだ刀は戦場で再刃されたであろうというお話を聞くことがありますが、その通りかもですね。



大和金房研磨

しばらく前、錆身で極一部に光る箇所をみる刀がありました。
僅かに覗く地刃からは錵の明るい激しい出来が確認できます。
身幅は4㎝以上あり、鎬が高く、長寸、超大鋒の豪刀。
無銘で長い茎。茎の錆は浅くまだ全体に銀色味を残し、新々刀の生ぶ無銘かと。
錆び切り~細名倉まで、完全に無銘新々刀のつもりで研磨を進めたのですが、内曇りを引き始めた直後、古刀だと気が付き。
錆び切りから内曇りまで新々刀と思い込み古刀と気づかないなんて事はめったにありませんが、とにかくこの刀は見誤りました。
造り込みの巧みさに加え地刃が殊に素晴らしく、ここまで出来た物に出会った経験はありませんが、金房の特徴が顕著でしたので「新々刀だと思っていましたが金房だと思います」とお伝えし納品。(その後鑑定で金房に)
金房刀は度々研磨しますが、時に大変豪壮な刀に出会います。
↓これらもその例です。
金房 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
石切劔箭神社長刀 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)

今回研磨した刀は金房の正真。
刃長は二尺四寸九分(75,3cm)と少々大きい程度ですが、元幅が39,1(40,6)mmあり、刀身重量は1197g。
仕上研磨で手首を痛めました。。



玉置神社に

ちょっと久々に玉置神社に。写真は玉置山の道中から。
世界遺産になって以降参拝者が増え、山道に慣れない運転者も多く対向車に注意しないと危険です。この日も前後輪とも脱輪している車が。。

最近は「呼ばれなければ辿り着けない神社」なんて言われている様ですが、誰が言い出したんでしょか。ライターさんでしょうか。
そういうの全然好きじゃないです。。

境内には杉の巨木が多数。

本殿。
おそらく軽く100回以上は行っているはずですが、今回が一番荘厳に感じました。
今後は毎回更新されるのでしょう。





肥前吉房研磨

新刀期、肥前刀の数は圧倒的ですが、その殆どは忠吉忠広、正広行広です。それに次ぐのが忠国や宗次などでしょうか。
過去に吉房を研磨した事はなく、手に取るのも初めてだと思います。
元は錆身。肥前の丁子で現在内曇り。
もう古刀ですね。軟らかいのに明るい、南北朝期以前の古刀の内曇りを引いている感覚です。
忠吉忠広は沢山研磨して来ましたが、こんな感覚を味わった事はありません。
吉房は忠吉忠広の作刀を支え生涯を終えたため自身作が少ない訳ですが、相当な腕利きです。肥前刀工の層の厚さを実感しました。



末古刀短刀窓開け

錆身の末古刀在銘短刀の窓開け。
刃長6寸4分。元重7.7mm。
末古刀によくある上身が小振りなので茎がやけに大きく見える短刀。

一般に短刀を押形にする場合、刃区に対し棟区側がかなり深い押形になります。それは、棟区の深さに加え、庵の高さも押形に描き出すためですが、重刀図譜などを見るとその様がかなり極端に感じます。
普段あまり意識せずその状態に慣れてしまっていましたが、改めて注視すると少々庵が高過ぎるきらいが。
もしかしたら重刀図譜は棟角の線を取り終えた後、庵の高さ分だけずらし、また棟角の線で庵の頂点線を引く事をせず、時短のためか或いは棟の片面の幅を表現するために、そのまま紙を巻き込んで実際の庵の頂点で線を引いているのかも知れません。(未確認)

さて今回の小振りな古刀短刀、おそらく打ちおろしに近い状態で眠っていたもので、刃区の深さが異様です。
この手の小振りな短刀は室町中期以降に多く見られますが、上身に比して茎がやけに大きく感じるのが通常で、その姿を見慣れていました。
しかし、減っていないこの造り込みはこの様な姿だったとは。。上身の長さは短いが身幅がしっかりと有り、刃区が異様に深く、決して茎ばかり妙に大きい訳じゃなかったんです。
通常みるこの造り込みの殆どは上身が研ぎ減った結果の姿という事です。



減っていない刀

鎌倉末期の著名工の弟子といわれる刀工の、新出現の在銘短刀を研磨。在銘の品は僅かしか確認されておらず大変貴重な品。
奇跡的なレベルに研ぎ減りが少ないため、刃区棟区とも非常に深い。
一般に流通する古い物の場合、基本的には研ぎ減った物が多く、刃区がしっかり有ったとしても実は茎の刃方をある程度磨って刃区を作っている物が多い。
今回の短刀は区下の茎が強く逆ハの字状となり、茎幅を狭めて居ない事がわかる。
研ぎ減りが極端に少ないため、寸の割に身幅が広くズングリとするも、フクラ枯れ振袖茎そして深い両区と、力強く美しい姿。

太刀でも短刀でも、研ぎ減って居ない古刀には区が異様に深い物をみる。
度々出会うその区の深さは、おそらく通常の現代刀よりも深い。
現代刀で異様に深い区に出会う事が稀にあり、見慣れぬ姿に違和感を覚えた事があるが、その作者は古刀をよく知っていたのかも知れない。



短刀研磨

鎌倉時代末期の備前物在銘短刀の研磨。
中直刃ですがそれなりの研ぎ減りがあり、腰と先の刃幅が落ちています。
地鉄は裏の元先以外や表の先に皮鉄が残り、その鉄はよく詰んで強く美しい地鉄です。
残念ながらそれ以外の多くの箇所は白い小傷が多く無地風の弱い鉄が露出しており、おそらく芯鉄と思われます。
短刀の場合斬撃で折れる様な使い方はしませんので、値段の高い皮鉄の節約のため、芯鉄を入れたという事になるでしょうか。
この短刀を見ても分かるように、皮鉄と芯鉄の美観差は大きく、コスト面を考えた上で美しい地刃の短刀を造るべくこの様な造り込みにしたと考えられます。
末~江戸期を通して数打ちなどには当時行ったと思われる埋鉄を多数見る事があります。
多い場合、1口に数十の埋鉄となるわけですが、非常に雑な埋め仕事にも関わらず、その埋鉄は発見しづらく見落とす事もしばしば。
それはどうやら刀の製作時に共鉄で埋めているようで、鉄質が完璧にあっているのです。
多くは平地や鎬地の傷を簡単な技法で埋めていますが、時には刃中にも埋鉄を見る事があり、それは焼き入れの前に埋めた物という事になります。
明治以前には刀の傷を気にする事は無かったとの説も耳にしますが、実は今と同様に傷を気にしていたわけです。



7月支部入札鑑定

7月は本部から。

1号 太刀
陰の太刀。時代、国、流派に特徴的な反り。地斑風に映り。小錵出来で細目に焼き出し、上は地より刃幅が広い。
小さく詰まる鋒。帽子深い。

2号 刀
少々鎬高。反り浅め。身幅広く大きい切っ先。直ぐ調と互の目。明るく非常によく働く刃。返りを断続的に腰まで焼き下げ。

3号 刀
2号より反る。良い姿で鋒形状がカッコいい。板目で差し裏物打~上が柾。新刀風に焼き出し、若干角ばる大互の目や複式を湾れでつなぐ。
刃がかなり沈む。腰の棟を大きく焼く。

4号 刀
それほど詰まない板目。互の目と丁子で所々眼鏡に。刃中沸え筋目立つ。

5号 刀
2,4,3号より反る。2尺4寸台か。重い。片落ち風交じり、隅谷丁子の低い時の様な互の目頭。映りがよく出る。




当同然

あまり悩まずパッと決めた方が良い結果になる。
その後長時間鑑賞。



八文字長義

薄錆身のまま重刀指定を受けた八文字長義を昔重刀指定展で見ましたが、あの時放たれていた異様なオーラが記憶に残っています。
海外に出て行きましたが、立派なお考えをお持ちの方の元で大切にされているようです。
(動画は日本語字幕の設定でご覧ください)