山本亡羊読書室
NHKで2022年1月に放送された「幕末奇譚 知を武器にかく闘えり」はご覧になられましたでしょうか。
江戸後期の儒学者山本亡羊の私塾、”山本読書室”のお話で私も大変興味深く拝見致しました。
山本読書室は当時の知の結集で、資・史・試料の宝庫だったわけですが、番組の紹介では「オタク学者の銃や刀ではなく「知」を武器にした戦いに最新科学が挑む」とされていますので、刀剣類とは無縁なイメージを持たれた方も多かったかも知れません。
しかし山本読書室には刀槍や銃などの武具も多数遺されています。
その主要な物を2年半掛けて研磨、先日ようやくお納めさせて頂きました。
現在の管理者様から押形掲載の快諾を頂いていますので、ここに一部をUPさせて頂きます。
山本読書室に遺された史料は数万点に及び、その中から近年も重大な発見がありました。
今後また新たな発見が期待されています。
隆泉苑

佐野美術館さんに数日お世話になりましたが、隆泉苑が改修工事中でした。
瓦の葺き替えで古い屋根瓦を降ろしていましたので、渡邉理事長にお願いし瓦を一枚頂戴しました。
一輪挿しの台にしようと思い頂いたのですが、このままでは大き過ぎますし、切らないとダメそうです。
味のある割れ方をして小さくなった物があればとも思ったのですが、逆に綺麗な物を選んで頂いたので、ちょっと難しいですね。
切り方のセンスが問われますなぁ。。
切った物はUPしないと思いますw
佐野美術館|登録有形文化財の日本家屋「隆泉苑」改修にご支援を(佐野美術館 2022/05/10 公開) – クラウドファンディング READYFOR
佐野美術館 Sano Art Museum (sanobi.or.jp)
大太刀全身押形
日本刀展 月山 GASSAN
日本刀の美 刀剣の旅・長野坂城町篇 Part.2「刀匠の町坂城」
坂城町 鉄の展示館です。
来国行の短刀
二字国俊の短刀は重要文化財の愛染国俊(銘 国俊 刃長 九寸五分 反り 八厘)のみとされてきましたが、平成27年、新たに二字国俊在銘短刀が重要刀剣に指定され(銘 国俊 刃長 七寸三厘 反り 三厘)、二口目の二字国俊短刀が世に知られる事となりました。(平成30年には第25回特別重要刀剣に指定されています)
二字国俊の父である来国行にも在銘の短い物が一口存在し、特別重要刀剣に指定されています。(脇差 銘 国行 刃長 一尺一分 反り 七厘 平成4年 第12回特別重要刀剣指定)
しかし近年、再刃ではありますが来国行在銘の短刀が出現しました。

刃長 七寸一分三厘 無反り 銘 国行(来/再刃)
鎌倉中期以前の短刀が粟田口以外に無かったわけがありません。
何らかの理由で残っていないだけで、必ずあったはずと考えるのが自然です。
こういう発見は本当に嬉しいニュースですね。大発見です。
以下参考に山城物短刀の押形を。
綾小路定利は光山押形所載で、こちらも定利唯一の短刀とされる品です。
二字国俊短刀 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
大太刀の全身押形
映り
吉岡一文字生ぶ茎の太刀、内曇りを引く。
研磨前、全身発錆過多にて研磨必要状態。各錆部分研磨にて除去。発錆箇所多数につき内曇以降全身研磨。
図譜解説には「幽かに映りたち」と書かれ現物を見ても確かにその状態。というかほぼ映りは確認出来ない淡さ。
刃文は吉岡で良いと思うも、もっと映りがあってもよかろうに・・・。
旧研磨は内曇りの効きも良く、小肌を意識した良い研磨。刃取りは薄いが拭いもしっかり効いて好感の持てる仕上げ。
因みに砥当たりは非常に柔らかい。内曇りの研磨時間は新刀の5分の1程度か。つまり通常40時間必要なところを8時間で済む。それでいて明るさは新刀上作と同等かそれ以上。(時代が下るにつれ「柔らかい=眠い」となるが、古名刀は然にあらず)
今回内曇り刃砥を引き、映りの出現度合いに驚く。
焼き出しから横手下まで、こんなにも明瞭な乱れ映りが眠っていたか。。
映りは焼き入れにより発生する現象だが、研ぎ上がった刀に視認出来るかどうか、それは研磨次第。日々の研磨でよく分かっているつもりで居たが、ここまで鮮烈に体験したのは初めてかも。
元の木阿弥にならぬよう一旦置き、明日から新作下地研磨に入る。
鉄の鎺
鉄鎺は古い太刀や薙刀に稀に見ますが、金着せ太刀鎺の様にスッキリスカッとした物は少ない様に思います。
時代の姿故でしょうか。それとも素材が原因か。
構造自体、鉄鎺は基本どれも結構薄いんです。しかし重い姿。
比重の関係上、金銀銅製よりも軽く感じるからなんだか頭が混乱するんです。軽いのに重い・・・。
画像の通り刃方がこんなに厚いとどうしても野暮ったくなりますし、太刀鎺とはいえ踏ん張りも少ないし。
(画像の通り、棟に飲み込みが無いという事は刃にも無いという事になります)
古い時代の刀身はどうしてもそれなりに研ぎ減っていますので、鉄鎺が残っていてそのまま使用されている場合、刀身よりも鎺が一回り大きく見えてしまい、鎺が余計野暮ったく見えてしまうという事も。
しかし古い時代の太刀で、刀身製作当初の鉄鎺を今も使えているなんて奇跡なんです。