日刀保京都府支部入札鑑定会

今回は私が当番でしたので、備前物・備前伝の互の目をテーマとして刀を集めさせて頂きました。

1号 短刀  銘 法廣 
         平成二十一年鮎季 
         刃長 八寸八分 内ぞり
2号 太刀  銘 出羽国住人大慶庄司直胤(花押)(重要刀剣)
         文政三年仲秋  
         刃長 二尺七寸六分 反り 六分
3号 太刀  銘 備州長船兼光        (重要美術品)
         刃長 二尺四寸一分
4号 太刀  銘 備前国長船住景光       (重要刀剣)
         刃長 二尺二寸七分 反り 五分 
5号  刀 無銘 真長             (重要刀剣)
         刃長 二尺一寸三分 反り 六分七厘

宮入法廣刀匠景光写
大慶直胤兼光写
兼光
景光
真長

大切な御刀を支部鑑定会のためにご提供下さった皆様、誠にありがとうございました。



現代刀専門ショップ

左京区聖護院に現代刀専門ショップ「現代美術刀剣」が誕生しました。
東山丸太町を東へ直ぐの場所。
平安神宮の北西。武徳殿から徒歩3分です。

落ち着いた雰囲気の店内には、30口ほどの新作刀が展示されていました。
新作を研磨させて頂く機会も多い私には、これだけの数の新作刀が常に見られる空間は大変貴重。
藤原宗永刀匠の短刀が古刀を研ぐ様な研磨が施され、落ち着いた風合いに仕上がっていました。
今後の新作刀研磨に大変参考になります。

グーグルマップの写真や口コミは旧店舗の物で、「現代美術刀剣」へのものではありません。



支部入札鑑定

今回は熊谷和平先生を講師にお招きしての入札鑑定会でした。

1号 太刀
古い太刀姿。焼き出し映りが見え、生ぶと思う。肌立ち気味。映りが多いが暗帯部が明瞭なタイプではない。備前の頭揃い気味の丁子。物打から上は長光風。刃肌がかなり目立つ。先尖り気味に返り長船風。明るい研磨で美しい。
なんでしょか。難しい。以前研磨させて頂いた特重の正恒が古備前よりも長船寄りの出来で、物打より上以外はよく似ていた様に思う。
古備前正恒と入札。

2号 刀
反り浅。鋒延び。映りがあり腰が開く匂い出来の互の目。上は直ぐ調になる。
長船盛光と入札。

3号 刀
先までよく反る。少し寸は詰まる。重ね厚く鎬が高い。詰む地鉄。広直刃で働き豊富。
末備前以外には無いが・・・。彦兵衛の直刃に見えるがこんなに健強な彦兵衛を見た経験が無く。
姿はいつもの清光では無いが、直ぐ刃だとやはりこれの方が確立が高いという事になると思う。
清光と入札。

4号 刀
反り浅、切っ先伸び、直ぐ調に荒錵、物打焼き上がり錵散り刃沈み気味で国広の刃文調子。詰み気味の肌に板目目立つ。
堀川は確かだが普段の典型的ザングリ肌でな無い。
持つ瞬間に大隅掾正弘だと思ったのだが・・・。国広で当たりか同然よりも正弘で当たりか同然を選択しよう。
大隅掾正弘と入札。

5号 刀
反り浅、少し細身で重ねも厚くない造り込み。よく詰む。互の目連れ、浅い湾れ調子。所々食い違い砂流し~二重刃風になる。互の目~横手、帽子と抑揚無く素直。
これは全然分からん。この刃の調子をもっと大袈裟にすると初代忠吉の写し物とされる刃文に似る気がする。
初代忠吉と入札。

6号 刀
鎬地がかなり狭い。無地の地鉄に親肌風走る。荒錵の付く新々刀の丁子。
きつい差し込みで本来の出来が解り難い。映りは無い。
刃は全く違うが分からないのでとりあえずこれに。次郎太郎直勝と入札。

能く
能く
同然
同然
イヤ
能く

まいった。
1号は地鉄と刃の具合から長光には入れ難く。これにしては少し優しい姿だが吉房と入札。
2号は何故盛光に入れたのか分からんくらいに南北朝姿。帽子も完全にこの帽子。長義と入札。
4号は国広でしたか。
5号、法成寺は経験が少なく、どうしても虎徹に近い印象を持ってしまっているが、この出来も標準なのかも。法成寺正弘と入札。
6号が難しく。次郎太郎でも信秀でも細川でもない刃文。正雄にしてみる。

能く
能く
同然
同然
同然
能く

1号、肌立つという事で、セオリー通り畠田守家に。
2号、帽子の長義加減から完全に当たりと思っていたのに。選択肢がこれだけになった。大宮を見る機会が少なく経験不足。大宮盛景と入札。
6号、沸えの固山もあるので。固山宗次と入札。

能く

同然
同然
同然
同然

1号 太刀 銘 長光 (特別重要刀剣)
2号  刀 折り返し銘 備州長船盛景(大宮)(重要刀剣)
3号  刀 銘 備前国住長船彦兵衛尉祐定作之
        天正六年二月吉日
4号  刀 銘 国廣
5号  刀 銘 但馬上身法成寺橘貞国 (重要刀剣)
6号  刀 銘 石堂運寿是一精鍛作之
        萬延二年二月日

3号、直ぐ刃だといつも清光に入れる初心者みたいな癖があるが、清光ではない事を示す箇所が幾つも有るはずで、もう少し深い考察が必要。



「現代美術刀剣」専門ショップ

現代刀専門ショップが京都にオープンする事になりました!
この店舗が国内外に向けた新作刀の販売拠点となるのです!!
愛刀家の皆さんに新作刀の素晴らしさを知って頂くため、入札鑑定会の鑑定刀として新作刀出題の機会を増やそうと実行して来ましたが、この様な拠点が出来るとは!!!
全日本刀匠会



入札鑑定記

上部メニューの入札鑑定記、2014年辺り以前のリンク先がサービス終了したウェブリブログだったので切れていました。
しかし現在のブログに移行出来ていましたのでつなぎました。
2008年分はさらにその前にサービス終了していたヤブログなので移行出来ておらずリンク切れです。



支部入札鑑定

今回は本部から。
本部刀は答えは上げない方がよいそうなので、答えは無しで。

1号 脇差
平造り、真の棟、身幅広く、重ね極薄く、反りが付く。
板目で棟寄りは柾目がうねる。
互の目と湾れを基調に皆焼。帽子乱れ込み先尖りごころ、返りから棟を長く焼く。

2号 太刀
長寸太刀。中反り深い。鎺下より強めの焼き出し映りに始まり乱れ映りとなり、上に向かい地斑がかり鮮明さを増す。焼き出し映りの状態から生ぶだと思う。
直ぐ調の小互の目、小丁子、上半更に直ぐ調で小足。
帽子若干三作風で大丸、返り極浅い。

3号 刀
反り浅く磨上げ体配。造り込み健強で中鋒。差表、腰に梵字、上部に太めの二筋樋。差裏、素剣、鍬形、蓮台、梵字を重ね、上部に太めの二筋樋。
板目肌立ち気味で全体に映り。華やかな丁子刃で房も豊。帽子大人しくほぼ焼き詰める。

4号 太刀
身幅広く反り浅く中鋒。良鍛だが総体に肌立ち、映りが線状となり棒風。小湾れ、小互の目、小丁子で大きな出入りは無く少々細かい。帽子乱れ込んで尖る。

5号 刀
輪反り、小板目美しく詰み、地斑映り鮮明に立ち、所々筋映りとなる。
広直刃基調に互の目、角がかる刃等交えやや逆がかり、足、葉しきりに入り、小沸え付く。
帽子少し乱れるもフクラに沿う。

一巡目は1号以外絞れず、二巡目でようやく決めて入札。

当同然

当同然
当同然

2号は選択肢が一つしか無くなったが、どうもその様には思えず。しかしそれしか残っていないのでその様に入札。

当同然
当同然
当同然
当同然

2号は私は初めて見た刀工で素晴らしい太刀でした。出来に嫡流との微妙な差があり、こういう刀工を覚えておくのは大切ですね。
名品揃いで大変勉強になりました。



二筋樋の全身押形

少々太い二筋樋だからではあるが、先日の道具のおかげでストレス無しの作業が出来た。
二筋樋が有る場合、差し表と差し裏で刃線と庵を合わせると14本の長い線を引く事になる。
両チリだと16本、真の棟になれば18本も。(文字にして改めて驚いた。そんなに沢山の線を引いているのか。。)
道具は大事です。



二筋樋

二筋樋、両チリの樋、添え樋や連れ樋など、全身押形で手間が掛かる作業が幾つかあります。

先日の二筋樋を修正していて、気付いたら1時間以上かかっていました。
この写真じゃ全然わかりませんが、全体で見ると線は良くなっています。(ただ最初が悪過ぎて直らずですが)

簡単な物を作りましたが、多分これで大分ましになるんじゃなかろうか。



入札鑑定

2月例会

1号 刀
肥前。反り少し浅い、元幅広い、直ぐ刃。帽子綺麗。少し映り気。
よく見る中直刃に比べ、焼き幅若干狭い。匂い口それ程深くない。刃錵が刃先に向かい直線的に止まる独特の雰囲気が顕著ではない。少しばさけて揺らぐ。
やはり代別が判らず。そろそろ判別出来るようになりたいが。。
武蔵大掾忠広と入札。

2号 刀
少し長め。反り浅め。しっかりした造り込み。帽子表たるみ、裏少し進んで丸。よく詰む新刀。
焼き低めの互の目を元から先まで。基本頭は丸い。所どころ崩れ、いくつかくびれ、離れる。
刃は細かく錵る。少々荒い箇所も。
全く分からず。何も出て来ず。。
以前研磨した助広の初期作に、こんな作品があるのかと驚いた刀がこの様な互の目だった記憶が。
津田助広初期銘と入札。

3号 脇差
焼き出し少し。大互の目を間を詰めて涛乱風。
候補が色々有るが・・・。普通は助直だと思うが、物打付近の刃調がこれなのかも。
粟田口忠綱と入札。

4号 脇差
角互の目風など交じり、腰付近に簾風が。帽子たるむ。
丹波守吉道と入札。

5号 脇差
平身。応永備前の姿。良い皮鉄が残る部分は応永杢。常よりも刃文が細かく、焼きの高低が少ない箇所が多い。普段見る応永備前より帽子まで強い互の目足が続く。
太目の二筋樋で、刃側が棟側の樋先に連れ樋風に被さる。
全体に少し変わっているが、応永か正長永享嘉吉頃なのだろうか。。
とりあえず康光か盛光にした方が良さそうだが。
長船盛光と入札。

当たりにて候
国入りにて能く候
国入りにて能く候
当たりにて候
同然にて候

2,3が全然分からん。
2号、先日研磨した初代国助が完全互の目だった。初代国助と入札。
3号、じゃぁ助直で。

当たりにて候
国入りにて能く候
国入りにて能く候
当たりにて候
同然にて候

2号 親国、3号越後包貞に。

当たりにて候
当たりにて候
国入りにて能く候
当たりにて候
同然にて候

3号、加賀守貞則→尾崎助隆で当

2号を一発で親国に入れ(もちろん偶然じゃなく)、3号も普通の見方から尾崎へと直ぐに修正出来る眼力の学生さんが凄過ぎる。
当然他も全部当たりで。天才。