全身押形 朱銘兼基

朱銘、兼基 八十一翁松庵(花押)

しばらく前の刀剣美術「名刀鑑賞」に来国光の松庵朱銘がありましたので、以下その解説を引用させて頂きます。

『「松菴」は明治時代の故実家で、東京帝室博物館(現東京国立博物館)の学芸委員を務めた稲生真履(司馬遼太郎の歴史小説『坂の上の雲』の登場人物で、海軍軍人として日露戦争時の日本海海戦などで活躍した秋山真之の義父)のことで、刀剣をはじめとして古美術品に造詣の深い人物として知られており、他にも同氏が極めたものが幾点か確認され、本作の極めよりして同氏の炯眼の程が窺われるものである。』

三本杉基調ではありますが出入りは大人しく、頂点の尖り具合も優しい互の目です。元から先まで揃った形とはなず、三本杉の祖型的刃文となっています。地錵が細かく付き地景が多数確認できる板杢で非常に良質な鉄。
孫六と言いたくなる調子ですが、身幅若干狭めの大人しい造り込みであり、鋒も詰まり気味である事などを考慮してこの極めとされたのでしょうか。大変勉強になる良い極めだと感じます。

この様に締まった美濃の互の目を墨筆で描くのは結構難しく、先日の孫六も苦労しました。



全身押形 善定兼吉

刀 銘 兼吉(京都国立博物館2018年度館蔵品修復事業に於いて研磨)

京都府支部入札鑑定会が現在の文化芸術会館に移る前、京都私学会館で行われていた当時、鑑定刀に兼吉が出て来ました。その時拝見した兼吉が京都国立博物館に入る前のこの刀です。もう17,8年ほど前でしょうか。。
1の札で、絶対当たりだと思い「当麻」と入札し「イヤ」だった事をよく覚えています。私が過去に拝見した美濃物(志津系以外)の中で3本の指に入る好き度の刀です。
差し表の腰にある小さな尖り刃に気が付けば入札の選択肢は一つ、兼吉です。