当麻
15回目も大和物。当麻です。
当麻派の在銘作は僅少ではありますが、国行、有俊(含長有俊)、友行、友長などに遺されており、また「当麻」とのみ銘を切る作品も数点確認されています。
それら在銘の当麻派作品には比較的穏やかな出来が多い中、無銘の当麻極めには大和色の中に錵が一段と強く、働き豊富な相州気質を持つ作品が多々あります。
これは前述(尻懸)の通り本阿弥の古極めなどを踏襲した結果ですが、当時はその様な作柄の在銘作が存在したのではないかといわれています。
さて押形の当麻ですが、重ね厚く内反り、板目に柾で地錵厚く、刃中錵づき金筋入り、茎尻は当麻派の特徴である片削風入山形となります(尻懸も近い形状)。
そしてこの短刀には享保名物帳編纂に大きな役割を果たした本阿弥光忠の折紙が附帯しますが、現存する当麻派の享保名物は二口の上部当麻で、本短刀は造り込み及び作風がそれに近く、大変興味をそそられます。