青江太刀

本日は研ぎ場にて在銘年紀入り青江の太刀を拝見。
腰反りですが深いものでは有りません。
少し細身ですが鎬重ねが有りますのでそこそこ重量はあります。
二尺四寸ほど。
直刃調子で刃中良く働いています。
匂い出来で焼頭に沸え付く部分あり。
それなりに疲れては居るのですが、研ぎでよく抑え込まれていますので柾状の白い肌は全く気になりません(古研)。   
湿潤な雰囲気で美しく仕上がっています。
ですが各部の研ぎは正直結構いい加減な感じです・・・。 
こういうパターンは多いものなのです。
ものすごく良い地鉄に仕上げて有るのに色々見るとかなり変な事をしている。
古刀の地鉄って案外「ざっ」っと仕上げてしまった方が良くなる場合が多いのか、それとも地のこなしが上手い人にも細部にこだわらない人が居るのか、諸事情有ってこう言う研ぎにしたのか、或いは成ってしまったのか・・・。
色々思います。
古刀の場合特にそうだと思いますが、「いかに抑えるか」と言う重要な場面がよくあります。
誠に見事にそう言う研ぎをされた古刀に出会うと本当に心が落ち着きます。
そう、まさに心が落ち着く感じです。 
 「抑えて居るが晴れて明るい」
こう言う事は鑑賞する側が求めたからこそ育った研磨技術だと思うのですが、そう言う目を持つ好奇者さんは考えてみれば本当に凄い目を持っています。
「日本刀は世界に誇る・・・」的な事がよく言われます。
とても世界には通用しないと思われる日本刀も多数あると思いますしまた私は世界の事をよく知りませんのでこう言う言葉を使った事は無いと思います。 
しかし単に”刀”そのものだけでは無く刀に関するさまざまな事柄を思えば、世界を知らない私にも「もしかしたら世界に通用するかもしれない」と思えて来てしまいます。
鉄、火、水、石、光、目・・・ちゃんと手間を掛けた物は本当に細かい細かい積み重ねで完成されています
・・・今日は丸一日平身の棟の下地で腰が痛くてだめです。
話はまとまらず尻切れトンボですがおしまいにします。
埋鉄用残欠に肌が荒れた物が有れば「粗し」「抑え」の比較をしてみたいと思います。
よく聞く話とは思いますが実際比較を見る事は少ないと思いますので。



少し調べものを

ちょっと調べものをしていますが大変ややこしい。
同一の刀についての解説が各書で違う。
流派の分類方も何パターンかある。
そもそもよく解明されていない流派であったりする。
こう言うの多いです。



ひさびさ

仕事場にて長船師光の太刀を拝見。
以前何度か拝見していた太刀ですが、1,2年振りです。
好きな太刀です。
年紀は有りませんが師光ですので南北朝末期乃至応永で”小反り物”に分類されます。
古研ぎで、大変静かな研ぎです。
以前拝見した時よりさらに良い刀だと思いました。
何度も拝見して、見る度に良さが増すと言うのはいいものですね。
好きな刀なんだと思います。



「薩摩の刀と鐔」を・・

確か「薩摩の刀と鐔」を持っていたはずだがどこに置いたのか誰かに貸したまま帰って来なかったのか、かなり探したが見つからず・・・。
箱に島津の○十の家紋が入った本なんだけど・・。
ずいぶん探したが諦めました。
何気に本棚から取ってみた本。 (リンク先に書いている助廣・真改合作刀は刀美の名刀鑑賞にも載りました。確か特重でしたっけ)
わぁこれかぁ。 勘違いしてました。
お隣さんですが昔の国(令制国)やそ中の支配関係は難しい。



刀身の”ねじれ”

錆身が有れば、ほぼ8,9割の物は曲がっているものです。
真っ赤に錆びさせてしまう扱いを受けてきた物は数十年から百年程度の間に色々と斬っているのでしょう。(軍刀仕込み以外は”人”では無いと思います)
研ぎ上がって光っている物でも曲がって居る物は結構有ります。
研いだ後に曲がったのでしたら曲がりを直せば良いだけですが、研ぐ前から曲がって居た場合は厄介です。
曲がりを直さず研ぐくらいですから地ムラなどには関心を持たず研ぎ上げている訳ですが、その場合ある程度曲がりに合った肉置きになってしまっています。
そう言う状態の物に曲がり直しをするとムラを作ってしまう事になります。(きちんと研がれた刀が曲がってしまった場合、曲がった場所に大きなムラが出来ますが、曲がりを直せばそのムラもほぼ無くなってくれます。 しかし曲がったまま研いだ刀の場合、曲がりを直すとムラが出来ると言う事です。)
ねじれた刀身もたまに有ります。
ねじれてしまう理由は幾つか有ると思います。
研ぎで片減りさせて刃線が表裏どちらかに寄りねじれた様な状態に成る。
斬り損じ。
作刀時点でねじれている。
その他諸工作による後天的ねじれ。
などなど・・・。
以前ねじれた平脇指の下地を行なっておりました。
刃線が特にねじれてしまっています。
刀身の曲がりも含め平地棟角が飛び出しています。
その部分を伊予砥で少し押します。
刃線を確認するとねじれが戻り、むしろ若干逆方向に寄って居ました。
色んな現象が起こるものです。



平成23年2月 京都刀剣入札鑑定

 
 一号 刀
二尺三寸代か。 反り大変浅く物打辺りで特に減じる。 鋒が大きく残る。
湾れ調で足や葉が多数入りよく働く。 所々頭がクルリと丸い部分有り。
腰の方は小詰む焼き。
物打より上で大人しくなって行く。
研ぎのせいか全体に肌立つ。
分からないので後にする。
 二号 脇指
尺三寸ほど。
片切り刃(表。四分の一)。
重ね尋常。 三つ棟かなり高い。
表草倶利伽羅、裏護摩箸・梵字。
皆焼(ひたつら)。
地刃共大変健全で美しい。 差込。
 長谷部国信と入札。
 三号 太刀
二尺三寸ほどか。
細身、反り深(少し腰反り)。 重ねそれなりで先一寸五分で急に落ちる。
小鋒。
すっきりした樋を鎺貝先で角止。(桐紋透金無垢二重鎺)
地は大変柔らかく、詰みぎみ。
全体に映る。
直刃で柔らかい働きが多い。
ちょっと難しく後に。
 
 四号 刀
二尺一、二寸ほど。
室町期備前物。 鎺上丸止棒樋。
応永では無い。
中期か中後期か迷う。中期なら則光にして中後期なら法光にしようと自分の中で決める(細分はややこしいので)。
 法光と入札。
 五号 脇指
一尺四寸ほどか。
本造り。
中鋒延びる。
帽子が大変特徴的。
地は詰み気味で美しい。
所謂志津写し。
慶長新刀の先を切り取った様な姿ですが全体の雰囲気からウブの脇指と分かります。
良く詰んで美しい地鉄ですが、ほんの少しだけ白い粒が多い。
刃中の粒子の密度が大変濃く匂い口も含めかなり滑らか(例えばパティシエだと相当気合を入れてかき混ぜた状態)。
この造り込みは私はあまり知りませんが、この地と刃のバランスならば迷わず行けます。 
 國廣と入札。
 
 一号
分からず後で。
 三号
了戒を頑張って晴らすとこんな地鉄になるので、造り込みを考え、筑紫了戒と入札。
 一号
姿やその他の状態に惑わされていました。
落ち着いて見ると良い映りが薄っすら確認出来ます。 状態を変えれば鮮明になりそうです。
太刀です。
 長光と入札。
やっと提出。
 
 然
 当
 ヨク
 然
 当
 三号 筑紫了戒で国入能候と言う事ですので行平に。
 然
 当
 通り
 然
 当
 九州のこの辺り大変ややこしく記憶するには厄介なところです・・。 私も県名、藩政時代の国名、刀工の流派名が交錯してしまいます・・・。
筑前でよいとヒントを頂きました。
実阿にしては肌目が目立たないので西蓮と入札。
 然
 当
 当
 然
 当
一号 太刀  備前國長船住近景 (重要刀剣)
         嘉暦二年五月日
二号 脇指  長谷部国重
三号 太刀  安芸國入西 永仁伍年閏十月日 (国指定重要文化財)
四号 刀   備州長船則光
         嘉吉二年八月日
五号 脇指  國廣

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御刀多数拝見

この数日で5、60振り以上の御刀を拝見。
しっかりと勉強させて頂きたい刀も多数あるのですが、時間の都合上数秒しか見る事が出来ない物も多数有り残念です。
古山城、古大和、古備中、古備前などから無名の新々刀までさまざまでしたが、興味を惹かれたのが「無名大道」です。
拝見した瞬間初代伊賀守金道の美濃出来の枯れた雰囲気がよぎり、「初代伊賀金ですか?!」と言葉が出ましたが無名の大道と言う事でした。
伊賀金や越中、丹波などのお父さんが美濃の兼道(大兼道)で大道同人です。
何度か拝見した事がある初代伊賀守金道の美濃伝の大人しい手の作に比べると、さらに力強い造り込みであり、白けも一段と強くなる点などからそう言う極めになるのかも知れません。
大道と言っても大兼道(三品兄弟の父)同人だけではなく、同時代に多数おりますので、今回の御刀の「大道」の極めが何を指して居るのかを詳しくお聞きするのを忘れてしまいました・・。
一般には大道と言うとあまり注目されない刀工かもしれませんが、こういう渋い出来の刀にはなぜか引かれる物があります・・。
また、この御刀は下地研磨が大変丁寧に行なわれておりました。
そして仕上げも誠に地味ではありますが、地肌を押さえ込み、とかく嫌われがちな白けを自然のままに最後まで残す艶使いと拭い・・・。
本当に色々と考えさせられ、大変勉強になる御刀です。



万力(バイス)を

仕事の道具類はネットで購入する事が多いです。
夕方までに注文すれば翌日には届くお店も有れば、注文後数日~2週間程度でやっと届くお店も。
翌日に届くと、「ネットはこれでしょ!」っと思います。 ちゃんとした所はこれです(在庫切れや取り寄せ商品を明記して無い店も多い)。
酷い所はメール連絡までに何日も掛かる事もあります・・。
基本的に仕事道具は「今欲しい!」と思い我慢出来なくなるタイプですのでホームセンターに走る事はよく有ります。 ちゃんと状況を考えずに行ってしまう場合が多いので、何件もはしごしたり一日に2回3回と往復する事もしばしば。
先日はちょっと特殊な万力が欲しくなり、以前確かホームセンターで見た記憶がありましたので行って見ました。
うちの近所のホームセンターはあまりやる気が無いのか品切れが多い(怒)。
万力なんて言うめったに売れない物は当然品切れ多数。
しかしなんとか一つだけ目当ての物が有り購入(嬉)(ドイツ製で見た目以上に異様に高く驚いた)。
ホームセンターって色んな商品で結構頻繁に「あれはもう扱って居ないんです・・」と言われる事が有ります。
別タイプの万力で二つ持っている物があるんですが、今回見かけなかったので聞いてみたら、「今はこのタイプになります」と言って別の物を見せられました。
めちゃめちゃな商品です。  こんなの売るなよ(悲)。
閉じても片側がミリの大台を越えてるんじゃないかと思うほど隙間が出来てしまいます。 考えられへんわ・・・。
挟む部分3~4センチの小さい万力でそんなに隙間が出来るなんて。 
10個ほど有って全部アウトでした。
所詮ホームセンターなんてもんはこの程度と言う事なんでしょう。  とブログに書かれても仕方無い商売をやってます。
やっぱり made in Japan を応援しよう。
おもちゃコーナーで娘にこれを買って帰りました。

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無言でず~っと切っています。 後姿がいい(楽)
これはもしかしたら made in china かな(^^;)



砥石にはいつも振り回される

今日は砥石屋さんへ。
お昼はCoCo壱でカレー。 久々です。4,5年振りでしょうか。
私の口は家で子供用に作る味の薄いカレーに慣れてしまって居る事をすっかり忘れて”5辛”を注文してしまい後悔・・。
口の中がシャーッて言うてました。 
せっかく久々のカレー屋さんやったのに・・・。 トッピングもいっぱいしたのに。(私はもともと辛い物は苦手なんです)
そう言えば嫁さんはいつも10辛を食べてて、何でそんなもん食べんの?みたいな事を聞いた事がありますが、「女の人は刺激を欲しがってんねん」て言うてました。  
そう言うもんなんですか・・・。 
でも確か「女の人は安定が欲しいねん」てのもよく聞きますけど(^^;)
毎年砥石や仕事関係の道具に新刀上作脇指が買える程度費用が掛かってしまうものですが、砥石には天然人造問わず本当に振り回されています(私の場合)。
残念ながら安定供給は有りませんので安定した研磨をするには闇雲に色々入手して良い物に当るしか無いのです。
研磨レベルを安定させるのはなかなか大変なものです。
 
 



研磨工程を ⑭ 研磨完了

某日、裏の刃取りが完了。(工程を紹介する都合上、「表が完了し裏に移り、裏が完了」と言う風に綺麗に進んでおりますが、実際は表を刃取ったり裏を刃取ったりと表裏の調整を行いながら研磨を進めています)
刃取りは、刃文にかなり忠実に細かく刃取る方や、刃文に縛られず(縛られずと言う表現は正確では無いと思いますが簡単に言い表す良い言葉が見つかりません)かなり大きく刃取る方などさまざまですが、私は大きく取る刃取りを理想としています。 もちろん何でもかんでも大きくやってしまう訳ではありませんが。
しかし「大きく刃取る=手抜き(細かく刃文に忠実に刃取る方が技術が要り時間がかかる、大きく取るのは細かく取る技術が無くまた時間短縮の手抜きだと)」と見る方が以外と多く居られます。
まったくその通りの理由で簡単な刃取りで済ませて居る刀も沢山有りますので、考え抜いた末の大きく滑らかな刃取りとの違いを見分ける事は初心者の方には難しいかもしれません・・・。
私は大きな刃取りを理想としていると言うだけで、まだまだ刃文の谷を刃取りの山とするのにも毎回大きな勇気を必要としています。
刃取りの才能の有る人は刃文の構成から瞬時に刃取りのイメージを完成させ、躊躇無く大胆に刃取る事が出来ると思いますし、結果無駄な過程を省き短時間で完成出来ると思います。
この辺のところは、経験でカバー出来るのかどうかどうも微妙な感じがします。
後は砥石の質です。 

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棟の磨きは既に終えておりますのでこれで全ての研磨が完了です。(今回は平造りでしたが鎬造りの場合はこの他に鎬地の磨きや横手を切る作業、鋒をナルメる作業などがあります)
※艶入れ以降の画像はデジタル画像の性質上、刀身の実物よりも肌の出方が強く見えたり肉眼では全く確認出来ない色ムラが強調されたりと、画像としては課題の残る物です。  それらを解決するには部分画像を使用すれば済むのですが、工程の紹介と言う意味であえて刀身全体画像を使用致します。