八重の桜

今年のNHK大河ドラマは「八重の桜(綾瀬はるかさん主演)」ですね。
幕末から昭和を生きた女性、新島八重のお話です。
この度、同志社大学の御用を勤めておられる京都の刀剣開陽堂様からの御依頼で、新島八重遺愛の御刀(同志社大学蔵)の研磨、そして以前研磨させて頂いていた同志社大学創立者、新島襄遺愛の御刀(同志社大学蔵)の修復研磨をさせて頂きました。
八重遺愛の御刀は複数有り、この度は研磨が必要と判断されるもの数振りを研がせて頂きました。
八重は新式銃を持ち刀を差して会津の地で戦ったわけですが、研磨させて頂いた御刀にもその勇壮な姿を髣髴とさせるものがありました。
中でも特に目を引いたのが、二尺五寸を越える大薙刀直し刀。 
堅牢長大で女性の佩刀とは思えないほどの御刀です。
そして研師として興味を引かれたのが「表 河内守藤原国助 造 笹丸雪 裏 慶安二年八月日 大脇勢兵衛尉正長望作之」、二尺三寸六分の御刀です。
 

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この種の銘は従来”初代河内守国助”として扱われて来たもので、同種の銘が昭和42年第16回重要刀剣審査でも”初代”として重要刀剣指定を受けています。
しかし後の重要刀剣図譜には、国助研究に於いて最も重要な文献資料となる大阪の竜海寺過去帳により、国助各代の歿年が明らかとなり、この銘は二代国助初期銘で有る事が察知される、と言う内容が記されています。
本刀の作風は詰んで精美な二代国助らしい地鉄に明るい刃を焼き、数箇所に二代らしい形の互の目を交えています。
ドラマの方はまだ始まったばかりですが、幕末~のお話で私も馴染み安く、楽しみに見させて頂きたいと思います。



コッパは

先日買った10kgの某山曇り系コッパですが、今回の物は期待した研磨力では有りませんでした(通常は刀剣研磨に使用する山ではなく、私が勝手に刀剣への使用を試みただけです。刀剣用として販売されているコッパでもありません)。 
砥石自体を薄く磨り下ろす感触は上々です。 期待は消えていません
古い時代から”良い”とされる山が良い傾向に有るのは確かです。
でもねぇ、もっと可能性を探りたくなる訳です。 
刀に使用可能な砥石の質は全体から言えば極々狭く、上質の物はさらにその一部でしかない。
しかしその質の狭さの中にも支路を見出す事は可能です。
刀剣以外、道具としての刃物を天然砥で研ぐ人は、あらゆる方向から可能性を探る場合が多いようです。
私も柔軟に考えたい。



恒例新年一本入札

本日は京都支部新年最初の会。
恒例の一本入札です。
入札は一度きりですが答えは三つまで書いてもよしと言うサービス!
一号 太刀
二尺三、四寸か。 ほぼウブだと思う。 中反り。
良く詰んで位の高い地鉄。
小互の目小丁子など細かく働く。
山陽でしょうけど非常に難しい・・・。
照りの強い研磨ですが仔細に見れば底に地斑映りが見える。
 青江次弘、雲次と入札。
二号 太刀(刀か)
二尺三寸ほどか。 ウブだと思う。 反る。
整って美しい地鉄。
腰から中ほどは互の目、上に行き元重風に低い角互の目。
角互の目の角から地に向いツーッと尖る匂いが出ている部分が有るので藤島でいいと思いますが念のためもう一つ。
 藤島友重、出雲道永と入札。
三号 脇指(平身)
一尺一寸弱か。 浅く反る。 柾。 焼き詰め。
地刃共に冴え冴え。 凄い出来。
柾目ですが柾オンリーではなく詰んだ板目が多く有る。
仙台の地鉄とは違う様に思うが保昌は大振りが少ないイメージを持っており、入れ辛い。
大志津の包氏とは別の大和残留系包氏にこんなのは無いかな?
しかし踏ん張らず腹が少し目立つので保昌の雰囲気も強く見えて来てしまった・・・。
 仙台国包、手掻包氏と入札。
四号 短刀
一尺弱か。 ちょっとよく反る。 フクラ枯れぎみ。
表、素剣に爪、梵字。 裏護摩箸。
よく整った美しい地鉄。
湾れに互の目が入る。 乱れ込んで尖る帽子。 錵も付き地刃共に明るい。
相伝の上位で素直に南北朝期だと見たい。
おそらくウブ無銘だと思うがどこにしようか・・。
一尺前後の平身で素剣、梵字、護摩箸の貞宗スタイルは南北朝期、北から南まで各地の相伝刀工が造っているので・・・。
おそらく無銘ならば高木に極まって居るのではなかろうか。
 高木貞宗、左吉貞、一応信国(南北)も足して入札。
五号 短刀
両刃。重ね厚。小ぶり。
小ぶりの両刃は初期でしたっけ?そうですよね。
 勝光。与三にも少し小さく重ねの厚いのが有るのでそれも入れて入札。
 通り
 当
 然
 当
 然
一号 太刀 備州住親次(備後) 正平七年二月日(重刀)
二号 太刀 藤島友重
三号 脇指 貞清(保昌)(重刀)
四号 短刀 無銘 高木貞宗(重刀)
五号 短刀 備前宗光

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大太刀研磨

二尺九寸弱、大太刀研磨
大変柔らかい鉄。
所謂重文級などは分かりませんが一般に見る古刀期の大太刀には大変柔らかい鉄の物が多いように思います。
どの程度の柔らかさかと言うと、例えばアルミの平角棒と打ち合えば結構大きく刃が潰れるのではないか…、こういう柔らかさです。
鉄で言うとちょうど針金位でしょう。
実戦で長い物を使うとなるとこの位柔らかくなければいけなかったと言う事なのでしょうか…。
しかし、大摺上無銘とされる刀が大量に存在しますがここまで柔らかい刀は少ない。
余程の名刀が多く摺上げられたのか、そもそもその中に実はウブに近い物が多数含まれるのか…。
また、以前青江か古三原の三尺のウブの太刀を薄錆身で拝見しましたが、これなどは多く現存する大摺上無銘の原型で有ると素直に納得出来た。この手の大太刀はそこまて柔らかい鉄ではなく、通常の大摺上無銘同様の質。
様々な事を検証する上でも三尺近い古刀期の大太刀が摺上げられずに残っていると言う事は誠に貴重な事なのですね。