「武士の表道具とその価値展」本能寺大寳殿宝物館出陳刀

本能寺大寳殿宝物館で開催中の「武士の表道具とその価値展」。
主な展示刀10口分につきまして、刀剣と合わせ、見どころ解説付き全身押形パネルを設置しています。

 展示例

・太刀 銘 石州出羽住直綱作(重要美術品) 
       刃長2尺2寸8分7厘
       反り4分5厘
      

元幅31.0mm(32.1)
元重7.3mm(7.4)
先幅21.9mm(22.5)
先重5.1mm(5.5)
茎最厚8.1mm

鎬造、三つ棟。
反り浅め、身幅広く、重ね厚く、茎短く、中鋒詰まる。
棒樋に連れ樋を茎尻まで掻き通す。
ヤスリ目切り。棟僅かに肉、刃方も肉あり。茎棟ヤスリ切り。茎尻、刃上りの栗尻。目釘穴2。
地鉄、板目肌詰み、地沸付き地景入る。鎺下より淡く焼き出し映りが立つ。
刃文、腰付近焼き幅狭く、腰開きの角張る互の目等を焼き、上に向かい焼き幅を広め、角張る互の目を間を詰めて焼く。刃錵が強く、特に焼き頭や谷に錵がこごり、飛び焼き、湯走りかかり、金筋目立つ。
帽子、乱れて先掃きかける。

※刀剣専用の展示施設ではないため照明設備が不十分で、一部展示刀に刃文が見え難いものがあります。



「武士の表道具とその価値展」本能寺大寶殿宝物館

9月6日より、本能寺大寶殿宝物館にて「武士の表道具とその価値展」が開催されます。

展示刀は以下の通りとなっています。

 太刀  銘 石州出羽住直綱作(重要美術品)

小太刀  銘 国行(来)

  刀 無銘 延寿(重要刀剣)

 短刀  銘 正宗(と銘あり)(本阿弥光温折紙付)

 太刀  銘 備州長船兼光(本阿弥光忠折紙付/重要美術品)

 太刀  銘 来国俊(本阿弥光常折紙付/特別重要刀剣)

 短刀 朱銘 則国 本阿(花押)(本阿弥光忠折紙付/重要刀剣)

 短刀  銘 来国光

 脇差  銘 長谷部国重(本阿弥光常折紙付)

  刀  銘 広次作

今回の展示では10口の出陳刀につきまして、鑑賞補助用全身押形パネルを設置しています。
押形パネルで刃文等を確認しながら刀身を鑑賞していただけます。

また、平置き展示ケースには以下の全身押形も展示しています。あわせてご覧いただけましたら幸いです。

 刀 銘 繁慶(永藤一コレクション 京都国立博物館蔵)
(2024年度、京都国立博物館修理事業に際し記録として全身押形採拓)
太刀 銘 正也 令和七年春(山鳥毛写)
太刀 銘 国行(来)(重要美術品)
短刀 銘 国広鎌倉住人
     元亨三年十月二日(新藤五国広)



古い太刀

代を重ねる某工の現存品中最も古い時代の太刀があった。
凄過ぎた。



再刃色々

再刃の重刀も複数あります。ざっと探すと以下の物が。
(全て「再刃」としたうえでの重刀指定です)

 第20回 太刀  銘 備前国長船住左近将監長光造 正応二年巳丑年六月日(集古拾種所載)
 第21回 短刀  銘 行光(享保名物不動行光)
 第25回 短刀  銘 国光(新藤五)(片切刃造)
 第26回 太刀  銘 近村上
 第43回 脇差 無銘 貞宗(享保名物獅子貞宗/初代康継再刃)
 第48回 短刀  銘 国光(享保名物小尻通新藤五)
 第68回 短刀  銘 正宗(享保名物八幡正宗)

重美にも2口ありました。
 重美 太刀 銘 有成(石切丸)
 重美 太刀 銘 豊後国行平作 元久二年二月

行平など古九州物は常に再刃っぽい作風なので判断が難しいとは思いますが、この元久二年の行平は茎に火肌があり確実に再刃と判断されたようです。ただ重美全集編纂時はその火肌は落とされて無くなっていたのだとか。
有成は「再刃との説もある」と書かれている書籍もありますが、全身押形を採拓させて頂いた時見たところやはり再刃と判断できるものです。

保存鑑定でも幾つか見た事がありますがちょっと失念で、確実なのはこれ。
 太刀 銘 有成(保存鑑定)(重美の太刀とは別)(有成 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
 短刀 銘 国行(来)(保存鑑定)(来国行の短刀 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区

昔の貴重刀剣等審査の記録を見ると、国吉、吉光、了戒、遠近、助近、則高、宗吉、古青江則吉、大和助光、長船盛景、村正などが「再刃」とした上で認定されていましたが、盛景や村正は今では考えられないですね。

享保名物にはどの程度?と思い、「図説享保名物帳」の索引にて見てみると、焼失の部で80口の掲載でした。多いですねぇ。

重要文化財でも幾つかあって、以下2口は全身押形を採拓させて頂きましたが、典型的再刃です。
どちらも茎に火肌が強く出ており、再刃刀に出現する事が多い大きなフクレやフクレ破れ(義元左文字)、著しい刃染み(骨喰藤四郎)がみられます。

 重文 太刀   義元左文字(享保名物)
 重文 薙刀直し 骨喰藤四郎(享保名物)


再刃は基本的には道具としての再生の意味が強く、焼失により鈍った鉄を鋼に蘇らせた物です。
現代の感覚(私の)では再刃刀の価値は著しく下がるという認識なのですが、かつてはそうとも限らない時代があったようで。。
春日大社の国宝、菱造打刀(拵え)の中身は再刃ですし、厳島神社の国宝、梨地桐紋螺鈿腰刀の中身は友成の再刃短刀です。
これらは再刃された刀身に誂えられた拵であり、今とは別の価値観であったとしか思えません。
2019年、佐野美術館にて「REBORN 蘇る名刀」として焼け身や再刃刀が多数出陳される展覧会が開催されました。関東大震災で被災した焼け身の享保名物児手柏包永や燭台切光忠出現後の扱いもそうですが、様々な価値観で刀を見る姿勢は大切だと感じます。(名物児手柏包永写し | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
何もかもゆるゆるで、再刃の鑑別が将来”失われた技術”となるようでは困りますが、再刃とした上での救済の道がもう少し開けても良いかも知れません。