『「愛宕山は砥石山」愛宕山砥石を知る人々の証言』

『「愛宕山は砥石山」愛宕山砥石を知る人々の証言』DVDをお送り頂きました。
“日本刀”は、愛宕山周辺を始めとする京都産天然砥石が無ければ完成しません。
現在我々が刀の美しい地肌や刃文を鑑賞できるのは、京都産天然仕上げ砥石があってこそです。
#8000,#10000・・・と粒度の高い人造砥石はいくらでもありますが、単に粒度の問題ではないのです。
天然仕上げ砥石のみが持つ特異な性質が刀に作用し、極めて精緻な研磨技術が発達、そして日本刀独自の鑑賞文化が生まれました。

今、愛宕山周辺の砥石鉱山は極一部を除きほぼ全てが閉山状態。
刀剣鑑賞文化の継続が危惧されるところです。
この映像記録作品には、まだ盛んに採掘が行われていた当時の採掘職人さんや、その仕事を支えていた周辺の方々の貴重なインタビューが収録されています。

ちょっと話が逸れますが・・・。
当時の採掘現場では、作業により傷んだタガネや矢(バール)をその場で鞴(ふいご)と炭を使い修理しながら使用したというお話がありました。刃がこぼれたり潰れたりしたタガネをそのまま研ぐのは大変なので、焼きなましてから研磨、その後再度焼き入れを行うのでしょう。
戦が頻繁だった昔、傷んだ刀は戦場で再刃されたであろうというお話を聞くことがありますが、その通りかもですね。



大和金房研磨

しばらく前、錆身で極一部に光る箇所をみる刀がありました。
僅かに覗く地刃からは錵の明るい激しい出来が確認できます。
身幅は4㎝以上あり、鎬が高く、長寸、超大鋒の豪刀。
無銘で長い茎。茎の錆は浅くまだ全体に銀色味を残し、新々刀の生ぶ無銘かと。
錆び切り~細名倉まで、完全に無銘新々刀のつもりで研磨を進めたのですが、内曇りを引き始めた直後、古刀だと気が付き。
錆び切りから内曇りまで新々刀と思い込み古刀と気づかないなんて事はめったにありませんが、とにかくこの刀は見誤りました。
造り込みの巧みさに加え地刃が殊に素晴らしく、ここまで出来た物に出会った経験はありませんが、金房の特徴が顕著でしたので「新々刀だと思っていましたが金房だと思います」とお伝えし納品。(その後鑑定で金房に)
金房刀は度々研磨しますが、時に大変豪壮な刀に出会います。
↓これらもその例です。
金房 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
石切劔箭神社長刀 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)

今回研磨した刀は金房の正真。
刃長は二尺四寸九分(75,3cm)と少々大きい程度ですが、元幅が39,1(40,6)mmあり、刀身重量は1197g。
仕上研磨で手首を痛めました。。