支部入札鑑定

今回は本部から。
本部刀は答えは上げない方がよいそうなので、答えは無しで。

1号 脇差
平造り、真の棟、身幅広く、重ね極薄く、反りが付く。
板目で棟寄りは柾目がうねる。
互の目と湾れを基調に皆焼。帽子乱れ込み先尖りごころ、返りから棟を長く焼く。

2号 太刀
長寸太刀。中反り深い。鎺下より強めの焼き出し映りに始まり乱れ映りとなり、上に向かい地斑がかり鮮明さを増す。焼き出し映りの状態から生ぶだと思う。
直ぐ調の小互の目、小丁子、上半更に直ぐ調で小足。
帽子若干三作風で大丸、返り極浅い。

3号 刀
反り浅く磨上げ体配。造り込み健強で中鋒。差表、腰に梵字、上部に太めの二筋樋。差裏、素剣、鍬形、蓮台、梵字を重ね、上部に太めの二筋樋。
板目肌立ち気味で全体に映り。華やかな丁子刃で房も豊。帽子大人しくほぼ焼き詰める。

4号 太刀
身幅広く反り浅く中鋒。良鍛だが総体に肌立ち、映りが線状となり棒風。小湾れ、小互の目、小丁子で大きな出入りは無く少々細かい。帽子乱れ込んで尖る。

5号 刀
輪反り、小板目美しく詰み、地斑映り鮮明に立ち、所々筋映りとなる。
広直刃基調に互の目、角がかる刃等交えやや逆がかり、足、葉しきりに入り、小沸え付く。
帽子少し乱れるもフクラに沿う。

一巡目は1号以外絞れず、二巡目でようやく決めて入札。

当同然

当同然
当同然

2号は選択肢が一つしか無くなったが、どうもその様には思えず。しかしそれしか残っていないのでその様に入札。

当同然
当同然
当同然
当同然

2号は私は初めて見た刀工で素晴らしい太刀でした。出来に嫡流との微妙な差があり、こういう刀工を覚えておくのは大切ですね。
名品揃いで大変勉強になりました。



二筋樋の全身押形

少々太い二筋樋だからではあるが、先日の道具のおかげでストレス無しの作業が出来た。
二筋樋が有る場合、差し表と差し裏で刃線と庵を合わせると14本の長い線を引く事になる。
両チリだと16本、真の棟になれば18本も。(文字にして改めて驚いた。そんなに沢山の線を引いているのか。。)
道具は大事です。



二筋樋

二筋樋、両チリの樋、添え樋や連れ樋など、全身押形で手間が掛かる作業が幾つかあります。

先日の二筋樋を修正していて、気付いたら1時間以上かかっていました。
この写真じゃ全然わかりませんが、全体で見ると線は良くなっています。(ただ最初が悪過ぎて直らずですが)

簡単な物を作りましたが、多分これで大分ましになるんじゃなかろうか。



入札鑑定

2月例会

1号 刀
肥前。反り少し浅い、元幅広い、直ぐ刃。帽子綺麗。少し映り気。
よく見る中直刃に比べ、焼き幅若干狭い。匂い口それ程深くない。刃錵が刃先に向かい直線的に止まる独特の雰囲気が顕著ではない。少しばさけて揺らぐ。
やはり代別が判らず。そろそろ判別出来るようになりたいが。。
武蔵大掾忠広と入札。

2号 刀
少し長め。反り浅め。しっかりした造り込み。帽子表たるみ、裏少し進んで丸。よく詰む新刀。
焼き低めの互の目を元から先まで。基本頭は丸い。所どころ崩れ、いくつかくびれ、離れる。
刃は細かく錵る。少々荒い箇所も。
全く分からず。何も出て来ず。。
以前研磨した助広の初期作に、こんな作品があるのかと驚いた刀がこの様な互の目だった記憶が。
津田助広初期銘と入札。

3号 脇差
焼き出し少し。大互の目を間を詰めて涛乱風。
候補が色々有るが・・・。普通は助直だと思うが、物打付近の刃調がこれなのかも。
粟田口忠綱と入札。

4号 脇差
角互の目風など交じり、腰付近に簾風が。帽子たるむ。
丹波守吉道と入札。

5号 脇差
平身。応永備前の姿。良い皮鉄が残る部分は応永杢。常よりも刃文が細かく、焼きの高低が少ない箇所が多い。普段見る応永備前より帽子まで強い互の目足が続く。
太目の二筋樋で、刃側が棟側の樋先に連れ樋風に被さる。
全体に少し変わっているが、応永か正長永享嘉吉頃なのだろうか。。
とりあえず康光か盛光にした方が良さそうだが。
長船盛光と入札。

当たりにて候
国入りにて能く候
国入りにて能く候
当たりにて候
同然にて候

2,3が全然分からん。
2号、先日研磨した初代国助が完全互の目だった。初代国助と入札。
3号、じゃぁ助直で。

当たりにて候
国入りにて能く候
国入りにて能く候
当たりにて候
同然にて候

2号 親国、3号越後包貞に。

当たりにて候
当たりにて候
国入りにて能く候
当たりにて候
同然にて候

3号、加賀守貞則→尾崎助隆で当

2号を一発で親国に入れ(もちろん偶然じゃなく)、3号も普通の見方から尾崎へと直ぐに修正出来る眼力の学生さんが凄過ぎる。
当然他も全部当たりで。天才。





備前物

備前物の押形採拓を少し減らそうと思っていましたが、先日の吉岡一文字に続きまた二口。
備前物の圧倒的な数の多さからどうしてもこうなります。これはもう仕方ないですね。
にしても二筋樋の採拓が難しい(面倒)。鎬筋を鎬筋でとる感じの仕上がりなら簡単ですが、もう少しクオリティーを上げようとすると工夫が必要です。次も二筋樋の備前刀が控えているので道具を変えます。



山本亡羊読書室

NHKで2022年1月に放送された「幕末奇譚 知を武器にかく闘えり」はご覧になられましたでしょうか。

江戸後期の儒学者山本亡羊の私塾、”山本読書室”のお話で私も大変興味深く拝見致しました。
山本読書室は当時の知の結集で、資・史・試料の宝庫だったわけですが、番組の紹介では「オタク学者の銃や刀ではなく「知」を武器にした戦いに最新科学が挑む」とされていますので、刀剣類とは無縁なイメージを持たれた方も多かったかも知れません。
しかし山本読書室には刀槍や銃などの武具も多数遺されています。
その主要な物を2年半掛けて研磨、先日ようやくお納めさせて頂きました。
現在の管理者様から押形掲載の快諾を頂いていますので、ここに一部をUPさせて頂きます。

山本読書室に遺された史料は数万点に及び、その中から近年も重大な発見がありました。
今後また新たな発見が期待されています。



隆泉苑

佐野美術館さんに数日お世話になりましたが、隆泉苑が改修工事中でした。
瓦の葺き替えで古い屋根瓦を降ろしていましたので、渡邉理事長にお願いし瓦を一枚頂戴しました。
一輪挿しの台にしようと思い頂いたのですが、このままでは大き過ぎますし、切らないとダメそうです。
味のある割れ方をして小さくなった物があればとも思ったのですが、逆に綺麗な物を選んで頂いたので、ちょっと難しいですね。
切り方のセンスが問われますなぁ。。
切った物はUPしないと思いますw

佐野美術館|登録有形文化財の日本家屋「隆泉苑」改修にご支援を(佐野美術館 2022/05/10 公開) – クラウドファンディング READYFOR
佐野美術館 Sano Art Museum (sanobi.or.jp)



大太刀全身押形

押形を収納している筒ですが、大きなサイズがあったので幅の広い紙はその筒に入れる事に。
画像中央の薙刀、普通サイズに見えますが刃長で二尺三寸六分です。
左は刃長三尺三寸、右が刃長三尺四寸六分。
大太刀(大薙刀)の全身押形採拓は本当に大変な作業になりますが、こうして並べるとその苦労も忘れます。