刃切れ

昔は刃切れを気にしなかった説もやはり問題ありかと思います。
刀を使用した際一撃で折れたり、或いは何度かの使用で突然折れる場合は別ですが、何度も使用し段階的に傷んで行きやがて折れる場合、まず最初に起こる現象が、曲がり、うつむき、刃切れ、このどれかです。この事は荒試しの結果などに記されています。
損傷の第一段階を既に過ぎている刀を普通は嫌いますよね。。(ここで言っている刃切れは後天的なケースです。焼き入れで生じる刃切れとはまた別です)ただ、刃切れがあるだけで全てが完全否定されるのを非常に惜しく感じる事がありますし、何らかの救済的考え方があっても良いですね。
以前は保存審査基準に「刃切れのある物は不合格とする」との一文があったはずですが、今はありません。
今後は考え方も変わって行くのでしょうか。



刀の傷

江戸時代以前は現代のように”刃切れ”を気にしなかった説を唱える人は結構多いです。(本当かどうか、私には分かりません)
同じ様に、刀の鍛え傷を気にするのは現代だけだという人も居るようですが、それは言い過ぎですね。

写真は数打ち刀ですが、この刀には埋鉄が沢山入っています。
ちょっと見え難いのですが本当に沢山入っていて、5個や10個ではないと思われます。
そしてどれも長く。長さ3,4㎝は普通で、確認出来る長い物で6,7㎝には達しています。
研磨している研師なのになぜ埋鉄の数が曖昧なのか、それはあまりに鉄が合い過ぎていて見つける事が困難だから。
この事はブログに度々書いていると思いますが、この種の埋鉄は、刀が製作された後の時代に行われた物ではなく、刀工が刀を製作する過程で行われていると思われる物です。では何故そうだと分かるのか、それは鉄があまりに合っているから。
埋鉄は入れる鉄の選定が非常に難しく、どんなに慎重に選んだとしてもそう簡単に完璧に合う事はありません。
この様に発見する事が困難なほど完璧に鉄が合っているという事は、その刀を製作した鉄その物を埋鉄として入れて居るからです。
根拠がこれだけだと、「いやいや鉄を完璧に合わせる埋鉄名人だったかも知れないじゃないか!」と言いたくなってしまう所ですが・・・。
こういう埋鉄だらけの数打ち刀、刃中にも普通に埋鉄があったりするんです。普通はやりませんが一応現代なら超鋼合金のタガネもありますし、その他の手法も含め刃中を埋める事も可能な訳ですが、江戸以前に刃中に埋鉄があるという事は、焼き入れ前に埋鉄を行っているという事になります。ですので刃中の埋鉄にも普通に焼きが入り、精査しなければ発見出来ない状態になっています。
埋める際の技法は現代の様に繊細な仕事はしておらず、いうなれば、雑。普通はこんな雑なやり方では妙な事になってしまう訳ですが、焼き入れ前の柔らかい刀に、その刀を造った鉄その物を使って埋める訳なので、こんな短時間で作業が出来る雑なやり方が可能なのでしょう。
そういう仕事なので、数打ちの当時の安刀に10も20もの埋鉄が可能なのだと。
そんな数打ち刀でも少しでも傷を減らすために沢山埋鉄をしている訳で、昔は傷なんて気にしなかった説はちょっと言い過ぎですね。

過去ブログを検索したら幾つかありました。
フクレ | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)