天狗

薙刀、銘 天狗

しばらく空いてしまいましたが、何度目ですか、52回目ですか。押形紹介です。
先日、天狗の薙刀の全身押形をとらせて頂きました。
天狗とは紀州鍛冶で、山城の鞍馬関の末説など、その発生には諸説あります。
刀(脇差、短刀や槍等含む)の作品は少なく、鏃鍛冶としての方が知られているといいますが、過去に登録審査で天狗を見た記憶があり、ごく最近も刀を一口、また 「紀州住天狗作」「天狗吉實」「藤原吉次作省天狗総領作」などの作品の存在もうかがっています。

「紀州の刀と鐔」によりますと、「銘鑑では文明ころから天狗を名乗る鍛冶が居ることになっているが、現存刀を全く見ず」としていて、「室町期の作で鍛冶銘の上に天狗と冠したものさえも未だ経眼していない」とあるのですが、上記の「紀州住天狗作」「天狗吉實」「藤原吉次作省天狗総領作」の三口は古刀との事。
そして今回の押形の薙刀も、渋めの柾目肌に棒映り風の映りが立ち、古風で明るい丁子刃を焼き、古刀期の作品と思われます。
最初に書いた通り、天狗の発生は鞍馬関との説はあるのですが、この柾目の雰囲気が入鹿と全く同じに見えますし、入鹿や末手搔或いは末保昌の流れとみるのが妥当ではないかと感じます。