安全に仕事を行う
今日も無事に研磨の仕事を終える事が出来ました。その後押形作業も少し進めましたが、それも無事終了。
「刀剣研磨のお仕事で一番心掛けている事は何ですか?」との質問を受ける事は度々あります。
伝統文化・伝統技術の継承、文化財を守る、刀を研ぎ減らさない、1000年先に日本刀を伝える!等々、求められているワードは分かっているのですが、私にとってはそんな事より何より「安全に作業を終える事」、これが一番ですので必ずその様にお答えしています(こういうコメントは使われない事が多いですけども。以前取材して頂いた週刊日本刀の『押形の美学』では「安全に作業を終える事」、このワードをしっかり書いて下さいました。)。 実はこのワードが全ての事とつながっていますよね。
なんだかんだ言っても、365日中、刀を握っている時間が一番長いのは研師です。何十年間も、日々一日中刀を持って作業をしている訳ですから、研師の誰もが様々な場面に出くわしているはずです。所謂”ヒヤリハット”というやつ。どんなに注意していてもそれは必ず起こります(注意しているからそれで済んでいる)。
その度に刀はもちろんですが、研ぎ場環境、様々な物や道具の持ち方や動線などが考え直されます。研ぎ場は一見雑然としていますが日々の仕事の中で事故が起こらない工夫がなされています。磨き棒を持つ瞬間、持った手を移動する動線、天然砥を持って移動する動線等々(天然砥は急に割れて落ちる事があります)、研師それぞれの経験に基づき考え行われているわけです。
こんな事はわざわざブログで書く様な事でもありませんが・・・。
電車の運転士さんの指差喚呼とまでは行かずとも、日々の研ぎの中でそういう動きをしながら引き締めていますが、こうして書いて改めて気を引き締めているんです。(鑑賞刀の前で一礼する行為。「先人への感謝」など色んな理由がいわれますが、安全のために気を引き締めるワンアクションである事も忘れてはなりません)