無題

数ヵ月ぶりに生品を二十口ほど拝見。
玉石混淆。

大磨上げで一尺八寸ほどの錆身。鎌倉中期~末期の力強い造り込み。各所に見える地刃が非常に良い。
その他をざっと見て最後の一口。
反り浅めの刀。定寸ほど。重ね厚く身幅尋常。中鋒延びごころ。
最上の研磨で全体に薄錆。
差し表の腰から中程にかけて、大板目がうねり流れるも、白い線は少なく細く、殆どが青黒い線なので全く肌立つ事はない。
差し裏は最上の貞宗の様。表裏共潤う肌。
少し沈む直刃。下半は刃中に柾気の働き。物打付近、足がよく入り刃中賑やか。
帽子は細かく掃きかけて小丸。

実は最初、山積みの刀の一つから「来国光」の札が見えた。
ここまでそれらしき刀は出て来ずなので、これの札か。
しかしこの刀、来国光には見えず。。今思えばだが、それでも来派として肯定できる要素を探そうとしている。
そしてボロボロの白鞘袋を払うと古鞘には「甘呂俊長」と古い鞘書き。





古備前景助

太刀、銘 景助(古備前)

44回目です。
磨上げながらも腰反り高く、凛とした太刀姿。
茎の下半平地に細鏨で暢達な書風で景助の銘。
景助は古備前派の刀工で、銘鑑には建保頃(1213年 鎌倉時代初期)とあります。
板目に杢交じり、地景の多い湿潤な地鉄。総体に錵強く所々荒錵交じり、小乱れを主調に小丁子を交え、ほつれ、砂流し、金筋、飛び焼き等を見せ、いかにも古香で格調の高い古備前物の作風となっています。
景助の数少ない有銘作として、資料的にも大変貴重な作品です。



HPをリニューアルしました

より安全なHPにしました。
内容はほぼそのままです。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。



「明治の拵、令和の刀」銀座三越

meijinokatana
「明治の拵、令和の刀」が銀座三越にて開催されます。

本展では、明治期に趣向と技術を凝らされて製作された拵や刀装具の数々と、令和と元号を変えてもなお脈々と息づく、現代刀匠による日本刀を中心に、刀にまつわる作品の数々を、時を越えて繋ぎ合わせます。

侍の国、日本では、刀は命のように大切なもの。帯刀を許された武士たちにとっては、まさしく誇りそのものでした。そしてそれを保護する拵や鍔などの刀装具で個性を競い、その意匠の進化と共に、同時代の職人の技磨きに寄与しました。

明治に入り近代化が進み、帯刀を禁じられると一気に需要は減じてしまいますが、培われた職人の技を尽くしたまさに超絶技巧の結晶が、刀装具として形に残されています。

また、時は現在の令和に移ってもなお、日本刀は日々鍛錬され、新しい作品が生み出され続けています。本展にご出品いただく、河内一平、根津秀平、上山輝平の3氏は、いずれも「新作日本刀研磨外装刀職技術展覧会」において、作刀部門最高賞である『経済産業大臣賞』を受賞された実力派です。

明治と令和、150年の時をまたいだ共演をぜひご高覧ください。

会場:銀座三越 7階 ギャラリー
〒104-8212 東京都中央区銀座4-6-16
会期:2020/8/26(水)〜9/1(火)午前10時〜午後8時<最終日は午後6時まで>
出品刀匠:河内一平・根津秀平・上山輝平

銀座三越



「明治の拵、令和の刀」銀座三越

meijinokatana

「明治の拵、令和の刀」が銀座三越にて開催されます。

本展では、明治期に趣向と技術を凝らされて製作された拵や刀装具の数々と、令和と元号を変えてもなお脈々と息づく、現代刀匠による日本刀を中心に、刀にまつわる作品の数々を、時を越えて繋ぎ合わせます。

侍の国、日本では、刀は命のように大切なもの。帯刀を許された武士たちにとっては、まさしく誇りそのものでした。そしてそれを保護する拵や鍔などの刀装具で個性を競い、その意匠の進化と共に、同時代の職人の技磨きに寄与しました。

明治に入り近代化が進み、帯刀を禁じられると一気に需要は減じてしまいますが、培われた職人の技を尽くしたまさに超絶技巧の結晶が、刀装具として形に残されています。

また、時は現在の令和に移ってもなお、日本刀は日々鍛錬され、新しい作品が生み出され続けています。本展にご出品いただく、河内一平、根津秀平、上山輝平の3氏は、いずれも「新作日本刀研磨外装刀職技術展覧会」において、作刀部門最高賞である『経済産業大臣賞』を受賞された実力派です。

明治と令和、150年の時をまたいだ共演をぜひご高覧ください。

会場:銀座三越 7階 ギャラリー
〒104-8212 東京都中央区銀座4-6-16
会期:2020/8/26(水)〜9/1(火)午前10時〜午後8時<最終日は午後6時まで>
出品刀匠:河内一平・根津秀平・上山輝平

銀座三越



名物児手柏包永写し

児手柏包永全身

konotegasiwanakago
太刀、銘 包永
兵部大輔藤孝磨上之異名号児手柏 天正二年三月十三日
(棟銘)大和国住月山貞利謹作(花押)平成二寿久年五月吉日
(公益財団法人 徳川ミュージアム蔵)

43回目は月山貞利先生の児手柏包永写しです。
享保名物「児手柏包永」は大正十二年の関東大震災で被災しました。各刀剣書にもその事が記されていますが「焼失」と書かれる事が多く、刀剣界では現品は残っていないと認識していた方が多いと思います(私もです)。
しかし近年、焼け身の状態で茨城県水戸市の公益財団法人徳川ミュージアムに保管されている事が判明、
徳川ミュージアムでの展示や、佐野美術館の「REBORN 蘇る名刀」に出陳、広く知られる事となりました。
(以前は錆身や焼け身が展示される機会は稀でした。しかし観る人の価値観は多様です。
既存の価値観にとらわれず、刀の歩んできた歴史を知り、様々な価値を探り見出す取り組みとして「REBORN 蘇る名刀」は素晴らしい展示だったと思います)

徳川ミュージアムでは「刀剣プロジェクト」として、児手柏包永写し(月山貞利刀匠が担当)、そして同じく被災した燭台切光忠の写し(宮入法廣刀匠が担当)を制作。
「児手柏」とは表裏の刃文が著しく違う事から名付けられた異名ですが、焼け身となった今、その刃文を知るすべは明治の鑑定家今村長賀が残した全身押形のみ。今回の再現刀はこの長賀の全身押形を元に制作されました。

大和物らしく流れ肌を見せつつ、奥行きがあり強く美しい手掻派の地鉄をこしらえ、長賀の押形の通り佩表は大きく乱れ、裏は直ぐ調の刃が焼かれ、児手柏包永が見事に再現されています。

私はこの児手柏写しの研磨を担当させて頂きその時全身押形も採拓していましたが、この再現プロジェクトからも刀剣の今を全身押形として記録に残す事の重要性を強く感じる事となりました。

公益財団法人 徳川ミュージアム



日本刀の美

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いつも大変お世話になっております銀座盛光堂の齋藤さんが日本刀文化普及のため、「日本刀の美」というYouTubeチャンネルを開設されています。
昨日は研ぎの取材をしてくださいました。
どの動画も大人の落ち着いた雰囲気の内容となっております。
チャンネル登録の上、是非ご覧ください。


(日本刀の美・第一回 ~前田日明と日本刀の美~ エピソード2「光忠の魅力」)

「日本刀の美」他の回のご視聴は下記リンクをクリックしてください。
「日本刀の美」



井上真改(重美)

重美真改完成3
重美真改完成2
刀、銘 井上真改
(菊紋)延宝四年二月日

42回目も大阪新刀井上真改、重要美術品指定の刀です。
前掲の真改に比して一見大人しく見えますが、美しくも強さの有る地鉄に匂い深く錵厚く付く刃文を焼き、実物を手にすれば全くその様な印象は受けません。
真改は江義弘に範をとったと考えられていますが、中でも江が独自の作風を完成させた後期作を狙ったと思われ、本刀もそれに成功しさらに真改独自の魅力も加味し、貫禄と品格を備えた出来となっています。
この数年で手に取った重美指定品は三十数口程度ですが、その内新刀は2割以下。
新刀重美の研磨はこの真改が初めてとなり、貴重な経験を積ませて頂く事が出来ました。



井上真改

sinkai
刀、銘 井上真改
(菊紋)延宝四年八月日

41回目。大阪新刀、井上真改です。
詰みながらも強い地鉄、刃文は匂い深く錵厚く付き、金筋、砂流し等しきりに働きます。
真改は作域にある程度の幅がありこの刀は直刃調ながら激しい部類に入るもので、覇気に満ちた作品です。



吉野山人國平之

脇差、銘 吉野山人國平之
     平成聖代結ふ

40回目。河内國平先生の作品です。
2018年、本能寺大賓殿宝物館で開催の展覧会。一番奥の展示ケース右端で、ひときわ目を引く寸延がありました。
展覧会後もずっと気になっておりましたが御持ち主様よりお借りする機会があり、その時採拓させて頂いた押形です。
幅広の造り込みに放胆な刃文。一見無造作ですが、押形を描く事でその繊細さに気付く事が出来ました。