模写する

手持ちの短刀の全身押形を奈良の関山研師に描いて頂きました。
もう10年近く前から、関山研師の描く刃文が一番好きなんです。
雰囲気を真似ようとするのですが同じにはならず、必ず自分の雰囲気になってしまいます。。
真似るならやはり手元に無ければという事で描いて頂いたわけです。
で、4日かけて模写しましたが、やはり自分の雰囲気にしかならず・・・。

墨を使う押形の一番難しいところは筆の使い方だと思いますが、押形の雰囲気を決定づけるのは刃文情報の取捨選択かも知れません。
これはもうセンスとか才能という事になってしまうので、真似は無理ですね。
幸い昭和の刀装具研究家、勝矢俊一先生が「比較優劣論は限度を守りたい」という言葉を残してくださっているので(大阪歴史博物館 図録「特別展 勝矢コレクション刀装具受贈記念 決定版 刀装具鑑賞入門」より)、比べて落ち込むのはこれくらいにして、自分らしい押形に専念します。

 

 



無題

無銘古一文字、在銘古一文字、無銘福岡一文字などを拝見。
古一文字の奥ゆかしさが好きで、拝見する度に備前刀の凄さを感じる。
この福岡一文字は二回目。一度目よりも遥かによい太刀だと感じた。古備前や古一文字の方が私は好みなので、前回拝見した時はこの太刀の良さに目が追いついて居なかったようだ。
鑑定会では何度か出ている刀は手に取らずとも当たりが分かってしまうので、パッと見てすぐに置いてしまう方も多いと思うがそれではもったいない。
良い刀は何度見てもよいものだし、本当に良い刀は何度も見るほどに良さが増す。

写し物の新作刀全身押形を描く。まだ途中。。直刃だが働き豊富で時間がかかる。

25年振りか、貼り艶を本気で試してみた。
私の周りでは貼り艶を良く言わない人が多かったため、本気試しはしないまま今に至り。。
研ぎの事を分かって来ると、そのネガティブ情報は間違っていると感じるわけだが、それでも若い頃のすりこみからは抜け出せにくく。
貼り艶を使わないなりに、貼り艶の良さは色々想像していた。
貼り艶の最大のメリットが”散らない逃げない”程度に考えてしまうと、こんなに凄い物を使わない失敗をしてしまう。

重美の新刀と重文の古い備前物を拝見。
以前から感じていたが、手持ちがズドンと来るほどの重量を残す古い備前物の映りは、普段目にする映りとは状態が違う事がある。
減っていない映りには、映りの輪郭にも匂い口状の白い筋があり、刃文と刃文(映り)が暗帯部を境に背を向け合っている様に見える。



古青江の押形を

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ちょっと久々に押形を描く。
古青江生茎在銘太刀。
反りが深い。映りが凄い。重ねが非常に厚い。



刃艶をつくる

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寒くなる前に刃艶を。
前回はいつ頃作ったかと思い、ブログで確認すると約1年前。
前回も同程度の量を作ったので大体一年でこれくらいの消費で、刃艶の消費量は多いタイプの研師だと思います。
見た目は悪いがこの石は確実に良いと確認済みの物ばかりで、私の中では最上クラスの一種。
使えるか使えないか分からない物に、切って磨って貼ってと手間を掛けるのは嫌なものですが、良いと分かっていると気持ちの苦労は大分軽減されます。

研師暦が長くなるほど、同じ刀を研いでも砥石の減りは少なくなります。
経験が浅い人に下地をさせたり内曇りを引かせてみると、あまりの砥石の減りに驚かされます。
内曇りなどはそれが分かりやすく、刀一振りに内曇りを効かせるだけで、自分が引く時の2倍どころか3倍か或いはもっと減っているのではないかと思うほどに減ってしまいます。
経験は大事です。
刃艶はそれとはちょっと別の話。

 



柾目に丁子

そういえば、先日の鑑定刀5号、完全な柾目に派手な丁子刃。
普通なら柾肌に刃文が引っ張られ、匂い口が柾目で切られ食い違いの働きが現れたり、砂流し状になるなどの現象が起こるところですが、その様な箇所は一切なく、刃中に柾状の匂いの筋が見て取れる箇所が僅かにあるだけでした。
研ぎの影響もありますがかなり強く現れる柾肌に、破綻の無い丁子刃。現代の目線での好みや良否は別にして、当時はかなり斬新なものだったと思います。



「光抱いて〜刀工 宮入小左衛門行平展」

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宮入小左衛門行平刀匠の個展、「光抱いて」が開催されます。
一門の川﨑晶平刀匠、河内一平刀匠、根津秀平刀匠、上山輝平刀匠の作品も賛助出品。

会期:2019年11月20日(水)〜26(火)
会場:日本橋髙島屋S.C.本館6階美術画廊
東京都中央区日本橋2-4-1 Tel03-3211-4111
時間:10:00~19:30(最終日は16:00閉場)

《ギャラリートーク》
11/23(土・祝)15:00から

全日本刀匠会HP



日刀保京都府支部 入札鑑定会

今回は本部より日野原大先生を講師にお迎えし入札鑑定会が開催されました。

一号 刀

重ね厚め、若干細身で鎬が高い。反りが浅いが鎌倉時代の刀。
直刃調子。よく働く。明るい。物打から横手下の冴えが好き。片落ち風になる部分の谷など、少し逆がかる働きがある。大体丸い帽子。返りが5㎝ほどある。少し棟を焼く。
板目よく詰む。全面に強めの錵映りで、ここまで良い刀でなければ再刃だと思ってしまうほどの強さ。

映りの錵がもう少し弱くて乱れていれば雲類に入れたくなる。
刀身中程の少し焼きが下がる部分が来国光に見える。 来国光と入札。

 

二号 太刀

反り深い。踏ん張りが強く、応永備前の太刀。 腰を開く丁子や互の目。 研ぎが古く、強い切り込みもある。差し込み風だが弱い刃取りを行っていたものか。
乱れ映りが鮮明。
私は康光と盛光の太刀の違いを判別できないので、以前見た品のイメージで。 長船康光と入札。
 
 
 
三号 寸延

少しフクラ枯れ、応永姿。刃の高低は少ない。二号とはタイプの違う映り。刃錵が付き、錵の部分は明るいが匂いは沈む。
南北朝の品だと話す声が何度も耳に入ってしまう。。
二号が康光で、三号が盛光、応永備前代表工が並んでいるのかなぁと思いつつも答えは南北朝だとの声に引っ張られてしまう。。
ちょっと一旦離れる。
 
 
 
四号 刀

少し反る。中央から横手下に掛けてぽってりした姿。刃の調子が虎徹。
地刃明るい。多分かなり硬い地鉄。少し前に研磨した虎徹の苦労が思い出される・・・。
虎徹帽子。 興里と入札。
 
 
 
五号 刀

総柾目が強く現れる。焼き高めの丁子刃。足等、刃中の働きは少ないが、刃文の形や調子が非常に上手く、福岡一文字をよく再現出来ていると思う。
この刃は初代是一だと思うが、今まで研磨させて頂いた是一でこの肌は無く、入れられず。。
焼き刃の質は全く違うが、ちょっと分からないので大慶直胤と入札。
 
 
 
三号、この刃は小反だと思う。南北朝で家助だと何度も聞こえて来るが、ちょっと入れたくない。。
家久って居た気がするので、小反家久と入札。
 
 
 
同然
同然



 
 
 
三号、ん?ちょっと惑わされ過ぎか。康光に。
五号、こりゃやっぱり是一。
 
 
 
同然
同然
同然


 
 
 
一号  刀 無銘 伝了戒   (重要美術品)
二号 太刀  銘 備州長船盛光(特別重要刀剣)
         応永十二年八月日
三号 脇差  銘 備州長船家助
         応永廿三年二月日
四号  刀  銘 住東叡山忍岡邊長曽祢興里作(藤沢乙安コレクション)
         延宝二年六月吉祥日
五号  刀  銘 武蔵大掾藤原是一

初代是一、私はたまたまあまり見る事なく来たのですが、柾目がスタンダードという解説。今まで研磨させて頂いた詰んだタイプの方が少数のようです。勉強になりました。
先ほど銘鑑を見たら小反に「家久」は居ませんでした。



現代刀の入札鑑定会

第一回現代刀目利き認定大会に参加させて頂きました。

鑑定刀は30振り。
制限時間2時間の一本入札。
当然ですが出題刀工の事前発表は無しです。

1~24号が太刀・刀、25~30号が短刀と剣。
中に一振り、人間国宝の故宮入行平刀匠の作品が含まれており、当てると宮入賞。
開催前、一応どんな作品が出そうかある程度想像し、見慣れた作品も多いのではないかと予想していたのですが、直前の刀匠さん方の話では非常に難しいとの事。。

鑑定開始。
入札用紙下部に、30名の出題刀工銘と番号が書かれています。
上部の出題番号枠1~30にその刀工番号を記入します。

普段の入札鑑定は5振りを1時間半程度で行うわけですが、今回は一本入札とはいえ30振りを2時間。結構ハードです。

まずざーっと拝見。
刀工名に対し、予想する作風の刀が足りない、或いは多い・・・。
涛乱が二つある・・・清麿が一つしかない・・・備前伝の太刀の識別が・・・などなど。これは難しい。
30刀工中、過去手に取り拝見した経験は11刀工。 現代刀に対する経験不足を実感です。

 入札結果

   ~答え~     ~入札~

1  上山輝平    上山輝平
2  木村兼光    木村兼光
3  河内一平    河内一平
4  久保善博    久保善博
5  明珍宗裕    石田國壽
6  藤原宗永    加藤慎平
7  三上貞直    三上貞直
8  根津秀平    根津秀平
9  宮入小左衛門行平 宮入小左衛門行平
10 月山貞利    月山貞利
11 月山貞伸    月山貞伸
12 坪内裕忠    藤原兼房
13 尾川兼國    藤原宗永
14 松葉國正    松葉國正
15 川崎晶平    川崎晶平
16 藤原兼房    宗昌親
17 横井彰光    藤田國宗
18 宗昌親     尾川兼國
19 川島一城    明珍宗裕
20 小宮國天    小宮國天
21 曽根正法    吉原國家
22 石田國壽    川島一城
23 松川清直    松川清直
24 宮入行平    宮入行平
25 藤田國宗    横井彰光
26 赤松伸咲    曽根正法
27 満足弘次    坪内祐忠
28 瀬戸吉廣    赤松伸咲
29 加藤慎平    満足弘次
30 吉原國家    瀬戸吉廣

mekiki
頑張った結果、現代刀目利きに認定して頂く事が出来ました~
研師が一般の参加者さん達に混じり目利き認定なんて・・・と思われてしまうかも知れませんが、一現代刀ファンとして本当に嬉しかったので載せてしまいます。。

上記入札結果を見て、私の混乱っぷりが伝わると思います。
それと何より、この入札鑑定の楽しさが伝わるでしょうか。
過去の全入札鑑定会の中で、一二を争う楽しさでした。
また是非開催されて欲しい鑑定会です。

もっと鑑定精度を上げたいのですが、現代刀を拝見出来る機会もそれ程多くはありません。
何故機会が少ないか、それは普段の入札鑑定に現代刀が出ないから。
私が鑑定刀の当番の時、現代刀を使わせて頂いた事が何度かありますが、残念ながら、古く見える現代刀に留まっています。
新刀らしい新刀、新々刀らしい新々刀は沢山並ぶわけですし、鑑定会に現代刀らしい現代刀が出題される機会がもう少しあってもよいのではないかと感じます。



『第1回「現代刀目利き認定大会」in岡山』

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現代刀目利き認定大会の日が近づいてまいりました!
「日本刀の日」制定記念『第1回「現代刀目利き認定大会」in岡山』10/5(土)

出題刀はなんと30振り。
30振りの現代刀を手に持って鑑賞できるわけです。
そしてその刀で入札鑑定。

研師である私にとっても、様々なタイプの新作刀の作風やその研磨方法を勉強出来るまたとない機会です。
まだ定員には空きがあるそうです。
ご興味のある方は是非。

詳細はこちら→ 『第1回「現代刀目利き認定大会」in岡山』



9月例会入札鑑定

一号 刀、だと思う。

少し反り気味。直調子でなだらかに湾れ。全体に小足が入り頭の締まる小互の目調の刃。中鋒。映り。

ぱっと見は末古刀に見える。元来は詰み気味の地鉄。各所に澄肌風に黒い鉄が一段盛り上がって存在。
迷うので一旦置く。 古刀ではないと思う。
 
 
 
二号 脇差

反りが浅い。大小の互の目と丁子を詰めて焼く。地刃ともに明るい。京風焼き出し。

これもちょっと迷うので置く。
 
 
 
三号 寸延

反り気味。締まる湾れ刃。かなり良質な地鉄。棟寄りに細目の棒樋。

造り込みが典型的な関物だが誰か・・・。
締まる湾れがこの人のイメージにピッタリなので、大道と入札。

 

四号 短刀

細身で重ねが厚め。内ぞりで寸が延びる(28,2㎝)。
板目が流れ、入鹿實可の小互の目をもっと小詰ませ錵を付けた様な刃。

土佐吉光と入札。
 
 
 
五号 脇差

先両刃風に冠落とし。重ね厚い。全体にたっぷり肉が付く。刀の長さに近い気がするが、造り込みの影響で寸がわかり難い。
錵付きほつれ気味の中直刃で腰刃を。

一見して新々刀だが、こういう作風の人は沢山あり過ぎて私には選択不能。
最近宮本包則を研磨させて頂く事が多く押形も沢山とらせて頂いたが、作風の幅広さに驚く。
包則にしては造り込みが重過ぎ、間違っているのは分かっているが、おそらく新々刀に入れれば同然にしてくれるのではなかろうか。
宮本包則と入札。

 
 
一号
そういえば度々研がせて頂く越前新刀に同じ調子の刃が有る事に気が付いた。
最近では継平の脇差が全くと言ってよいほど同じ刃文。一番よく見る肌立ち気味の分かりやすい越前肌とは全然違うが、刃を取る事に。
近江守継平と入札。
 
二号
何度も見ているうちに、久道の匂い口に見えて来た。調子もよい。
近江守久道と入札。

 


通り
ヨク


 
 
二号、大阪だったかぁ。差し裏に僅かに砂流しごころがあるので忠綱と入れる。
三号、地鉄が綺麗なので兼常と入札。

 


ヨク


 

二号、
一流刀工の初期作とのヒントを頂く。この刃は通常ではない作風で、普通に考えると当たらないそうで。初代は備前伝で有名と。
ん~。同条件が二人居て迷う。一流とは普通の一流か、それとも超一流なのか。
決めきれず、情けない事だが「超一流ですか?」とお聞きしてしまった。 超一流だと思いますとのお答え。
津田助広と入札。
 
 





 

一号 刀  銘(葵紋)康継於越前作之(後代)
二号 脇差 銘 越前守助廣
三号 脇差 銘 兼升
四号 短刀 銘 吉光(土佐)
五号 脇差 銘 於人吉安井正寧

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