手引きの

現代の天然砥石は下の画像に写る様な機械の丸鋸で切断しますので、砥石側面にはその形状の痕跡が残ります。

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砥石屋さんに居座り古い天然砥の山に乗り足元をひっくり返したり掘り返したりしていると極稀に手引き鋸の跡が残る砥石を発見する事があります。
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それはこの画像の様に柾目状の切断痕です。(確か手引きの石を持っていたはずですが見つからないので板の柾目画像を)

戦前までは手引きだったと言う話は度々聞きますが、実際の”手引き鋸”は最近初めて見ました。
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これ、大きく重い。
こいつの両端を二人でそれぞれ持ち、交互に引いて砥石を切断するのです。
相手が砥石なので鋸もすぐに切れ止みます。鋸の刃を研ぎながらの作業だったでしょう。
一本の砥石を切り出すだけでも大変な労力。
砥石に限らず石垣の石も木の柱も板もみんな手で切り出していた。。
いちいち凄いです。



MYOCHIN ~伝統の継承と新たな飛躍~

公益財団法人 五字ヶ丘文華財団 圓山記念日本工藝美術館に於いて平成28年度特別展「MYOCHIN 伝統の継承と新たな飛躍」が開催されます。
明珍宗裕刀匠の作品が16振り展示されます。

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以下、全日本刀匠会HPより

 『姫路明珍家』はすでに『明珍火箸』の名も高く、酒井・姫路藩甲冑師の家柄として、その存在が広く知られています。
このたび更めて『明珍』とは「一体何者なのか」という視座に立ち、いまや世界的にも各界の高い評価を得ている、日本独特の「明珍美學」展開の全貌を紹介する企画展覧会を開催いたします。
開催日時: 平成28年10月29日(土)~12月4日(日)
会場: 圓山記念 日本工藝美術館  〒670-0061 兵庫県姫路市西今宿1丁目1-8
TEL:079-292-3433 FAX:079-297-8643
開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日
入場料: 一般 600円(500円) 大高生 500円(450円) 小中生 300円
( )は20名以上の団体料金
関連行事: 【講演会】 明珍 宗理氏 「明珍鍛冶を次代へ」
開催日:11月5日(土)13時30分~  定 員:80名(当日先着順)【講演・コンサートと「音」のワークショップ】
講演:井尻 益郎(館長・美学者)「明珍の音」
コンサート:平野一郎 作曲 夏の歌 ~“明珍の音”を伴う特別編~ 女声(ソプラノ)吉川真澄
ワークショップ:<明珍の音>と<日本の音>を楽しく体験する
開催日:11月19日(土)13時30分~  定 員:80名(当日先着順)
【ワークショップ】 銘切体験
開催日:11月12日(土)11時~、13時~、15時~(約1時間)  参加費:無料(各回先着5名)【ワークショップ】 明珍鍛冶入門
開催日:11月20日(日)11~12時、13~14時  参加費:無料(各回先着10名)※小学5年生以上(保護者同伴)

【実演 刀 土置き】 明珍鍛冶入門
開催日:11月26日(土)11時~、14時~(約1時間)



菖蒲を

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ちょっと久々に菖蒲を試す。
16,7年前でしょうか、水木原をあちこち探し回っていたとき出合った菖蒲の100型を十二本買った事があるが、それに比べると立派で大きい。
(一番右が通常サイズの内曇。内曇は通常の規格と少しズレていて30型に近い。)
菖蒲独特の砥質。なるほどねぇ~。



天然砥石館のオープン

京都府亀岡市に天然砥石館がオープンするという事でそのイベントがあり、刀剣研磨の実演をさせて頂きました。

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立派な天然砥石が多数並びます。

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こちらは各地の天然砥石見本。

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イベントは二日間行われましたが、大変多くの来場者でかなりの賑わいでした。
削ろう会の方がたの実演。
テレビの映像などで度々見ますが生で見たのは初めてです。いや本当に見事!凄い!
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削った面。
手で触り、「わぁ、ツルツル!」と言うシーンも度々テレビで見ますが、私も「おぉぉぉっ」っと唸ってしまいました。
想像を超えます。

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こちらはなんと浄教寺砥(じょうけんじと・常見寺砥)。
一生見る事は出来無いと思っていましたがあるんですねぇ。驚きました。

天然砥石館、正式オープンはまだ先のようです。
今後が楽しみです。



よい石華墨を

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在銘の末保昌。珍しい品です。
時代を超えて続く流派は多くはありません。保昌も末になると殆ど見ずです。
理由を考えると幾つか上がります。 一時は色々大変だった事でしょう。物事とはそういうものですね。

支部会の時、白金師上野さんから石華墨を頂戴しました。
以前から話には聞いて居た物ですが初めて使います。(上の末保昌は別の石華墨)
説明書きに「二十年以上前まで販売されていた最高品質の石華墨を可能な限り再現しております」とありますが、その言葉通りの品です。
ありがとうございました。



日刀保京都府支部10月例会

府立文化芸術会館にて例会。

午前、有志によるミニ鑑賞会。
忠綱、盛光等メジャーどころから、普段はあまり聞き慣れない刀工銘だが大切に受け継がれた刀、自作の拵えを掛け楽しみながら愛でる刀など、多彩な内容。
支部長からは両刃短刀の上限年紀について度々きかれる説に一石を投じる内容を実刀を以って解説していただく。

午後、入札鑑定会。

 

一号 刀

反り非常に浅い。二尺五寸弱ほどあるか。切っ先延びず。新刀。総体に焼き高く華やか。刃中大変よく錵える。
親国の匂い口。

親国貞と入札。

 

二号 脇差

鎬造り。寸詰まる。ハバキ上で丸留め棒樋。切っ先延びる。反り浅く寸詰まるも美しい姿。
焼き低く、湾れに互の目。帽子尖り特長的。匂い出来で深い。地詰み気味で板目混じり。
良い研ぎ。刃中の艶やかさが凄い。効く刃引きを弱力で丹念に引いているのか。保管に油を塗っていないためか全体にその態の曇りがあり惜しいが元は絶妙の内曇によるナルメの明るさも栄えていたと思う。

国広と入札。

三号 刀(太刀?)

反り少し深め。棒樋。互の目と丁子。房しっかりと。少し白い肌。全体によく映る。部分明瞭に乱れ映る。肉落ち総体に刃少し潤む。腰少し硬め。横手下広直調、帽子古調。
角度により足がよく見える。

石堂是一と入札。

 

四号 脇差(片切刃)

短め。反り少し強め。表切刃、裏平。詰み気味。匂い口絶妙に小錵。地刃明るい。

一号と同質の刃。親国貞と入札。

 

五号 刀

短め。鎬高。だが優しい印象。美濃系の雰囲気の刃文。よく詰む地で明るさを持つ。物打付近は絞まるが総体に小錵。(基本的に焼き頭方向が錵え谷付近が匂い出来)。

難しく迷う。小ぶりで美濃風。金道の美濃風とは地鉄と姿が全く違うが他の選択肢が出ず。
初代金道と入札。

 



イヤ

三号 福岡一文字と入札
五号 出羽大掾と入札





同然

 

一号 刀  銘 和泉守国貞(真改国貞)  重要刀剣
二号 脇差 銘 国広(堀川)
三号 太刀 銘 一(福岡一文字)重要刀剣
四号 脇差 銘 於大阪和泉守国貞作之
五号 刀  銘 和泉守藤原国貞

 

一号、後で気付いたが、十年少々前研磨させて頂いた真改國貞に大変近い。研磨記録
おそらくかなり近い時期の作刀と思われる。地刃の質が大変似るが、ヒョコッと飛び出る小さい刃も全く同じ。これを刃取りで切るべきか切らざるべきかと悩んだ末、切らずに刃取った記憶があるが今ならどの選択にするだろうか。
以前研磨コンクールで見た「肥前国住武蔵大掾藤原忠廣」や現代刀「岸昭吉作」の研磨。私の目指す刃取りの完成形がそこにあったが、互の目をあの様に大胆に切ってしまう刃取りはあまりに衝撃的過ぎた。私には未だあの様な刃取りが出来る兆候はない。
五号親国、後で思えば四号の差し裏と同質な地の明るさ。一尺三、四寸と短寸な鎬作りで反り深の脇差や、本刀の様に短寸で優しい姿の刀が親國には度々見られるが、それと素直に結び付けられれば当てられるかも知れない。これも後で気付いたが、五号の小錵部は1、4と同質。

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ひらたい

このブログは面白くないそうです。
そりゃまぁそうですよ、言いたい事をガンガン言って戦う人間力なんて持ちあわせてないです。。
日々ある事の100分の一も書いてないです。
刀関連の皆にウケる事を書こうとも思っていませんし、あえて外そうとも思ってないですし。
あぁ、、いらん事を書いてしまってますねぇ。。 まいっかぁたまには。



山鳥毛

国宝 無銘 一文字(号 山鳥毛)と山鳥毛拵。(”山てうまう”なのでサンチョウモウですよね?!)
数ある名刀の中でも、最も華やかな刃文としてあげられる一振り。そしてその拵えは助真拵等とならび、最も格調高い拵えにあげられる。
もう何年前になるのか、大分以前ですが貞豊刀匠と岡山県博に山鳥毛をみに行きましたが、あの厳ついインパクトは絶大です。
拵えも大変人気があり、写しと称する品を何点も見ましたが、あの姿を出せる刀身もそうそうありません。ヘタをすれば”今は鐔を外してるだけだよね?”という拵えになってしまいます。。
少し前、その山鳥毛を新潟県上越市が購入するというニュースが流れ、評価額は3億2千万円。
以前からよくきかれた値段より大分低いですし、あの山鳥毛が3億2千万!安い!などと勝手に思っていましたが、ここへ来て少々ややこしい事になっているという記事が。。 記事によると、上越市在住者の半数近くが購入に反対なのだとか。
そうですかぁ。難しいものなのですね。
純粋に里帰り的に望む人、単に刀剣ブームに乗じようとする人、様々交錯しているのでしょうか。
上越タウンジャーナル
(リンク先、右上検索欄より「山鳥毛」で検索できます)



「丹波の漆かき」

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研磨工程や砥石の撮影をしてくださったカメラマンさんが製作されたDVD「丹波の漆かき」をみさせて頂きました。
漆は様々な日本の伝統工芸に使われていますが、刀の世界にも欠かせない存在です。
私も普段から馴染み深いつもりで漆に接していましたが、実は何にも知らかったんですねぇ。。
国産漆、こんなに大変な作業工程を経て完成されているのですかぁ。
今まで度々、本漆販売のHPを見て来ましたが中国産と比べ明らかに高い理由がはっきりと分かりました。
何百年もかけて蓄積されてきた知恵と技術は凄いです。
それだけに、一度完全に途絶えてしまうと復活は難しいわけですね。
伝統産業には途絶えそうな技術が沢山あると思います。
現代技術によりレベルアップした事で古い技術が無くなるならまだしも、安くて中途半端なものが喜ばれる事で、最高の物が生き残れないというのはよくないです。