文明十三年紀の両刃短刀

先日来進めている大太刀(大薙刀)の押形の前に、古備前在銘太刀、肥前忠吉刀と、両刃短刀の押形を採拓。
この両刃短刀は以前より京都府支部長の吉村滋太先生からお聞きしていた文明十三年紀の両刃短刀です。
日刀保京都府支部10月例会 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
 ↑この冒頭にも少しだけ触れています。

吉村先生から、両刃短刀の上限とされる年紀より古い物だとお聞きしていましたので、両刃短刀の上限年紀について刀美で調べましたところ、刀剣美術誌、第544号(平成14年5月)に「文明十四年紀の両刃短刀について(横田孝雄)」という文章が発表されていました。
この発表時点では文明十四年紀の両刃短刀が最古とされ、以下の3口が紹介されています。
 ・備州長船□□忠光 文明十四年二月日
 ・備州長船忠光   文明十四年八月日
 ・備前国住長船左京進宗光(花押) 文明十四年八月日 主宗国

今回押形を採択させて頂いた両刃短刀は、「備州長船忠光 文明十三年八月日」の銘で、平成14年の段階で上限とされている年紀より1年古い物。
平成14年以降既に同じ文明十三年紀の両刃短刀が、或いはさらに古い物が発見されている可能性もありますが、もしも無ければこの短刀が最古の両刃短刀という事になります。



木硯

押形展示の件で刀剣博に行った時、木硯(もっけん)の存在を教えて頂きました。
デアゴスティーニの週刊日本刀84号の特集記事「押形の美学」にも書いて頂きましたが、私が押形採拓時に毎回一番強く意識している事は、正確な押形を描く事でも美しい押形に仕上げる事でもなく、安全に作業を終える事です。
ですので道具は出来るだけ安全な物を使いたく、機能上使用する事のあるシャーペンもティッシュで包み万一の事故に備えた状態で使っています。
そんな中、刀の周辺に置く一番硬い物が硯で、これだけは仕方ないと思っていたのですが・・・。

木の硯があるなんて全く知らずでした。
出先で国宝や重文などの押形採拓を行う事も度々ですが、これだと安全度も上がります。

なるべくコンパクトな物が好きなので、特注で小さな木硯を。
細かな注文にも関わらず何度も詳しくやり取りして下さり、おかげで毎日気持ちよく使える素敵な道具を手にする事が出来ました。
感謝感謝です。



大太刀の全身押形をとる

数年前、某御宮様御所蔵の大太刀の全身押形の制作を予定していましたが、私が肩を骨折してしまい制作出来ずにおりました。
肩の調子もすっかり良くなりましたので、押形を。(HPへの掲載のお許しを頂いております)

押形用紙を裁断。当初100メートルあったロールも大分細くなりました。この紙を次また入手出来るかどうかは不明。。

全長170㎝超。もしかしたら今までで一番長いのかもです。(未確認)
登録証によると銘文の文字数は61文字。
その銘の保存状態が非常に良いため銘の摺り出しに苦労しそうです。
(保存状態が良いとタガネ枕が立っており、銘の際に石華墨が当たらず、銘文を明瞭に摺り出す事が困難です。新々刀や現代刀の多くは銘の摺り出しに苦労します。)

大太刀全身押形 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)