わかやま歴史館「南紀重国とその時代」
昨日研ぎ場にて、南紀重国の脇差を拝見しました。初代は久方振りかもです。
重ねが厚く、鎬がやや高く、鎬地幅がかなり広い造り込みです。
地錵がよく付き、全身に細かな地景が著しく現れ立体感が凄い地鉄。
直刃調で南紀の大和伝と分類されるタイプですが、柾気は無く、刃中の錵は大和五派中でいえば手掻よりも当麻に匹敵するレベル。(むしろ凌ぐと思いますが)
「新刀鍛冶で最も技量が高いのは誰ですか?」と問われると、いつも即答で「南紀です」と答えて来ましたが、今後もそれは変わらないですね。やはり凄い刀を造る人です。
駿府の包国刀も拝見。こちらは完全な手掻伝。反りはかなり浅く寛文新刀風ですが、特に物打下から中央付近の真っ直ぐ感が強い姿。包国は乱れ刃しか見た事が無く、完全な大和伝は初めての経験で大変勉強になりました。
現在、「わかやま歴史館」にて「南紀重国とその時代」が開催中です。
重国はじめ、包国や安廣等多数の展示があります。南紀重国の現存数は決して多くなく、鑑定刀等に出て来る事は稀です。
新刀の最高峰といえる南紀の作品をこの機会に是非ご覧ください。
肥前刀、内曇を引く

これの内曇を引く。
先日、細名倉までの工程は大変良い砥当たりだと書いたが、内曇も引きやすいとは限らない。
という事で、やはり内曇工程は少々苦労をする事になった。
近年メインとして使用してきた内曇砥は軒並み効かず、久々にHP「天然砥石比較」の砥石№61を砥台に。
天然砥石比較 60,61 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
この砥石、比較的柔らかい砥石という認識で使用していた時期もあったのだが、「砥質が硬く研磨力も弱い」との認識へと変化し使わなくなっていた。
久々の使用の結果、砥石№20,22,23,24,25,26と同質、或いは非常に近い砥質と判明。
天然砥石比較 20 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
天然砥石比較22〜26 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
これらより多少硬い気もするが、研磨力は非常に高い。
砥石比較ブログを書いた当時、砥石№61の研磨力を「4」としていたが「6~7」に訂正したい。
結局この肥前刀はかなり硬い鉄という事になるのだが、硬さと研ぎ難さは必ずしも比例するものではない。
今回の様に硬い鉄であっても細名倉までの下地研ぎでは非常に良い砥当たりと感じる事もある。
そして今は内曇に苦労している訳だがこの後仕上げでも苦労するかといえば、それもまた単純ではない。
この刀は「差し込み研ぎ」で研ぎ上げる予定だが、おそらく非常に研ぎやすいと感じながら仕上げ研磨を進める事になるだろう。