古い太刀

代を重ねる某工の現存品中最も古い時代の太刀があった。
凄過ぎた。



再刃色々

再刃の重刀も複数あります。ざっと探すと以下の物が。
(全て「再刃」としたうえでの重刀指定です)

 第20回 太刀  銘 備前国長船住左近将監長光造 正応二年巳丑年六月日(集古拾種所載)
 第21回 短刀  銘 行光(享保名物不動行光)
 第25回 短刀  銘 国光(新藤五)(片切刃造)
 第26回 太刀  銘 近村上
 第43回 脇差 無銘 貞宗(享保名物獅子貞宗/初代康継再刃)
 第48回 短刀  銘 国光(享保名物小尻通新藤五)
 第68回 短刀  銘 正宗(享保名物八幡正宗)

重美にも2口ありました。
 重美 太刀 銘 有成(石切丸)
 重美 太刀 銘 豊後国行平作 元久二年二月

行平など古九州物は常に再刃っぽい作風なので判断が難しいとは思いますが、この元久二年の行平は茎に火肌があり確実に再刃と判断されたようです。ただ重美全集編纂時はその火肌は落とされて無くなっていたのだとか。
有成は「再刃との説もある」と書かれている書籍もありますが、全身押形を採拓させて頂いた時見たところやはり再刃と判断できるものです。

保存鑑定でも幾つか見た事がありますがちょっと失念で、確実なのはこれ。
 太刀 銘 有成(保存鑑定)(重美の太刀とは別)(有成 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
 短刀 銘 国行(来)(保存鑑定)(来国行の短刀 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区

昔の貴重刀剣等審査の記録を見ると、国吉、吉光、了戒、遠近、助近、則高、宗吉、古青江則吉、大和助光、長船盛景、村正などが「再刃」とした上で認定されていましたが、盛景や村正は今では考えられないですね。

享保名物にはどの程度?と思い、「図説享保名物帳」の索引にて見てみると、焼失の部で80口の掲載でした。多いですねぇ。

重要文化財でも幾つかあって、以下2口は全身押形を採拓させて頂きましたが、典型的再刃です。
どちらも茎に火肌が強く出ており、再刃刀に出現する事が多い大きなフクレやフクレ破れ(義元左文字)、著しい刃染み(骨喰藤四郎)があります。

 重文 太刀   義元左文字(享保名物)
 重文 薙刀直し 骨喰藤四郎(享保名物)


再刃は基本的には道具としての再生の意味が強く、焼失により鈍った鉄を鋼に蘇らせた物です。
現代の感覚(私の)では再刃刀の価値は著しく下がるという認識なのですが、かつてはそうとも限らない時代があったようで。。
春日大社の国宝、菱造打刀(拵え)の中身は再刃ですし、厳島神社の国宝、梨地桐紋螺鈿腰刀の中身は友成の再刃短刀です。
これらは再刃された刀身に誂えられた拵であり、今とは別の価値観であったとしか思えません。
2019年、佐野美術館にて「REBORN 蘇る名刀」として焼け身や再刃刀が多数出陳される展覧会が開催されました。関東大震災で被災した焼け身の享保名物児手柏包永や燭台切光忠出現後の扱いもそうですが、様々な価値観で刀を見る姿勢は大切だと感じます。(名物児手柏包永写し | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
何もかもゆるゆるで、再刃の鑑別が将来”失われた技術”となるようでは困りますが、再刃とした上での救済の道がもう少し開けても良いかも知れません。



再刃のこと

そういえば先日、南北朝期在銘寸延で再刃と思われるものの全身押形を採拓しました。
以下簡単な調書。

刃長34.3㎝
反り0.6㎝
元幅31.0(31.5)mm
元重6.0mm
茎最厚6.6mm

平造り、丸棟、身幅広く、反り付く。
目釘穴2、茎短く、先栗尻、ヤスリ目切り。茎棟、刃方とも僅かに肉。
茎あばたで味悪い。色赤味がかる。

板目、杢目肌立ち、刃寄り柾流れる。
刃区から約44mm上がった箇所より焼き出し、水影風に映り現れる。
刃文、小互の目、小湾れを焼き、整わず、ふくらより直ぐ調となり、帽子判然とせず。
金筋、地景入るも再刃特有の物となる。


最後の金筋地景の再刃特有の物とはよくいう「チリチリした地景」です。
再刃にこの現象が現れる率は高いです。
再刃とバレずに流通している物にはこれが無い事も多いでしょう。また有っても再刃認定されていない事も多いと思います。
諸条件と合わせ、再刃の要素ではありますが、チリチリした地景即再刃とも言い切れずです。

刀剣美術692号に「肥前刀雑記(四十三)水影(横山学)」があり、”焼き出し映り”と”再刃の水影”の違いなどが詳述されています。
要約すると、焼き出し映りは強く鮮明な映りで、再刃の水影は薄ぼんやりとつかみどころが無いと。
しかし私が今まで見て来た再刃の水影はこの逆も多くありました。(薄ぼんやりとした再刃の水影を再刃と認識出来なかった可能性もあります)
「それは再刃ではない」という事は絶対にないものです。なぜなら磨上げて茎尻方面に銘が有る状態にも関わらず、刃区やそのやや上部から焼き出しており、そこに鮮明な水影が立って居るからです。これは流石に100%再刃と断言できます。
こんな分かりやすい再刃ばかりなら簡単なのですが。。
上手く出来た再刃はもう気にしなくていいんでしょうか。
気になりますが。



再刃のこと

そういえばマーティンが、ヨーロッパには再刃の日本刀が非常に多いといっていました。
彼がいうには、日本国内では売り難い再刃刀をヨーロッパに出した時代があったのだそうで。
そういう事もあったのかもですねぇ。。おかげで彼の再刃を見抜く目はなかなかのものです。