新作長剣

3尺6分の新作の剣の内曇り。
下地後かなり期間が空き、下地の苦労はほぼ記憶になく。。覚えていないのは時間のせいではなく、苦労は記憶に残らずただ経験として身体に刻まれるだけという研師としては大変都合の良い体質のおかげです。
この剣は春日大社の三鈷柄籐巻剣(重文)の刀身形状を写した物で、刃長は先述の通り。元幅は45mmで重量1300グラム弱。
姿形はそのまま制作されているが作風を写している物ではなく、この場合”写し”とはまた違うかもですね。
さて、刀の写し物についてどう捉えるか、どう評価すべきかが自分の中で曖昧なままでしたが、エルメス財団の「Savoir&Faire 金属」に寄稿されている内藤直子先生の文中の『「本歌」と「写し」』から大きな学びを得ることができました。自分の考えをもう少し整理できそうです。

新作写しもの | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
写し物 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
伝統美と創造性 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区



スキャナを買い替え

押形のスキャンに使っていたA3スキャナーの具合が悪く。
取り込んだ画像の両サイドの色が暗くなり、分割画像が繋がらず色調整に掛かる時間が酷い。
フォトショスキルが高ければこんな作業は簡単なのでしょうが。。
本能寺宝物館に展示中の全身押形パネルも1枚仕上げるのに何時間かかったか分からんほどで。無駄すぎ。
という事で久々にA3スキャナを買いました。とはいえA3はお高いものなのでヤフオクです。
昔はスキャナで刀身画像を作成していたのでそれに適したカメラ機能が必要で、かなり旧型のスキャナしか無理でした。
しかしもう刀身のスキャン画像は作らないのでし新しいタイプでもOK。

とりあえず届くもリサーチ不足でLANケーブル接続の物を買ってしまいそれに気づくまで数時間かかり。。
とにかくもう無理と諦めかけましたがチャッピーが難解な設定も根気強く付き合ってくれ無事認識。ちょっと泣きそうになる。

今までは1枚スキャンするだけでも数分かかっていましたが、数秒で完了。
までも結局その後の技術不足でそれなりに時間はかかります。



全身押形の採拓

最近採拓した全身押形、山城物生ぶ在銘鎌倉中期太刀、山城物鎌倉末期在銘短刀、越中物無銘刀(金象嵌)、越中物在銘短刀、古備前折返銘太刀、無銘青江、年紀入倫光、末手掻在銘短刀、新刀焼け身の研ぎ身、吉岡一文字刀。(重文3,重美1,特重1,重刀2)
焼けっ放しの刀の全身押形をこんなに真剣に採拓した人は過去もしかしたら居ないのではなかろうか。。
丁子が苦手な私ですが、今回の吉岡はやけに早く描けました。やっと体に記憶出来てきたのでしょうか。人より山盛りやらないと体得出来ない。



昔の研ぎ

しばらく前に古研ぎで錆が各所に発生している刀を2口、太刀1口を研がせて頂きました。(室町末期、室町中期、鎌倉末期)
その研ぎが私の大師匠で永山研修所出身の内山一夫先生の研ぎであった事が判明。
内山先生は奈良県の無形文化財保持者で、重文の太刀や直刀(研磨後に指定)など、多くの古名刀の研磨を手掛けています。
先日の3口は誰の研ぎか知らずに見たわけですが、肌目を強調せずしっとり落ち着かせ、刃取りは白さ高さとも抑えた仕上げで、”真面目な研ぎ”という表現がまさに相応しい仕事でした。
内山先生の研ぎを意識した事は今まで全く無かったのですが、おそらく何度も見ているのでしょうねぇ・・・。
刀身の鎺下に研師銘を入れる気持ちも少しだけ理解できます。(内山先生は入れていません)