再刃のこと

そういえば先日、南北朝期在銘寸延で再刃と思われるものの全身押形を採拓しました。
以下簡単な調書。

刃長34.3㎝
反り0.6㎝
元幅31.0(31.5)mm
元重6.0mm
茎最厚6.6mm

平造り、丸棟、身幅広く、反り付く。
目釘穴2、茎短く、先栗尻、ヤスリ目切り。茎棟、刃方とも僅かに肉。
茎あばたで味悪い。色赤味がかる。

板目、杢目肌立ち、刃寄り柾流れる。
刃区から約44mm上がった箇所より焼き出し、水影風に映り現れる。
刃文、小互の目、小湾れを焼き、整わず、ふくらより直ぐ調となり、帽子判然とせず。
金筋、地景入るも再刃特有の物となる。


最後の金筋地景の再刃特有の物とはよくいう「チリチリした地景」です。
再刃にこの現象が現れる率は高いです。
再刃とバレずに流通している物にはこれが無い事も多いでしょう。また有っても再刃認定されていない事も多いと思います。
諸条件と合わせ、再刃の要素ではありますが、チリチリした地景即再刃とも言い切れずです。

刀剣美術692号に「肥前刀雑記(四十三)水影(横山学)」があり、”焼き出し映り”と”再刃の水影”の違いなどが詳述されています。
要約すると、焼き出し映りは強く鮮明な映りで、再刃の水影は薄ぼんやりとつかみどころが無いと。
しかし私が今まで見て来た再刃の水影はこの逆も多くありました。(薄ぼんやりとした再刃の水影を再刃と認識出来なかった可能性もあります)
「それは再刃ではない」という事は絶対にないものです。なぜなら磨上げて茎尻方面に銘が有る状態にも関わらず、刃区やそのやや上部から焼き出しており、そこに鮮明な水影が立って居るからです。これは流石に100%再刃と断言できます。
こんな分かりやすい再刃ばかりなら簡単なのですが。。
上手く出来た再刃はもう気にしなくていいんでしょうか。
気になりますが。



再刃のこと

そういえばマーティンが、ヨーロッパには再刃の日本刀が非常に多いといっていました。
彼がいうには、日本国内では売り難い再刃刀をヨーロッパに出した時代があったのだそうで。
そういう事もあったのかもですねぇ。。おかげで彼の再刃を見抜く目はなかなかのものです。



再刃のこと

今まで何本の再刃に出会って来たでしょうか。20本や30本ではない事は確かですが、何本かは不明です。そして再刃と認識せずに出会った再刃刀もかなりの数にのぼるでしょう。もしかしたらそちらの方が多いのかも知れません。。

昨日の再刃短刀、差し表の腰から三分のニをざっくり窓開けしてみました。
地鉄はまだ分かりませんが、再刃で出る事がある嫌らしい錵映りは無く、詰んだ地鉄のようです。
焼き出し部に少々強くて太い地景風の働きが僅かに確認出来ますが、これは再刃で出現する事がある「チリチリした地景」に近い状態です。
刃は直ぐ調の湾れで、匂い口は沈み気味。柾気の働きが強く、古風な焼きです。水影は無し。
この窓開け部分だけを見て”再刃”と判断する人は少ないでしょう。私ももちろん再刃とは気づけないです。(切っ先付近は焼きが入らずです。おそらく差し裏は全体に崩れています)
では茎はというと、黒味が強く乾いており、この茎を見れば再刃と判断できます。やはり茎情報は大事なんです。
さてこの茎、よい鉄味に変える事は出来るのでしょうか。
鑑定書が付いて流通している刀でも、在銘無銘問わず、茎を加工している物は大量にあります。国指定の文化財にも茎を触っているなと思う物に出会う事はしばしば。
茎を触る理由は様々で、悪意の無い物ももちろん。
世の中色々あるわけです。



枯らし

多分15年以上前、拵入り短刀を再刃してもらった事がありました。
結果は切っ先付近の鉄が悪く、その部分は焼きが入らず。
そして反りが変わったため、刀身の三分の二程度までしか鞘に入らなくなりました。
再刃したらどんな地刃になるかを見てみたくお願いしたのですが、研ぐ時間もないのでそのまま忘れ去り・・・。
昨日久々に思い出し探すと研ぎ舟の下の箱から、拵の柄・鞘・刀身が出て来ました。
で拵えに入れてみると、柄も鞘もピッタリ入る状態に。
残留応力を自然に除去する「枯らし」を意図せず15年以上やっていたという事でしょうか。。