7月入札鑑定

1号 刀
少し短めの刀。反り頃合いに重ね薄めで手持ち軽い。地鉄は詰むも少々肌立ちあり。棒映り状の箇所があるも白けが強く、腰元平地に土落ち風で不規則な飛び焼きと映り気。刃文は焼き頭が揃い気味の互の目。形状は不規則で吉井ほど整然とせず。少々荒錵付く。

一瞬小反が浮かぶも、この様な不規則な地の様、不規則な刃文は美濃だと思う。
この姿体と刃は協会の無銘極めの美濃千手院に見る気がする。が、美濃千手院の個名が浮かばず。。
しかしおそらく今回は兼某と入れれば全部当たり同然になるのではなかろうか。という事でパッと浮かんだ兼貞と入札。

2号 脇指
尺8寸程度か。鎬造。よく詰み綺麗な地鉄。大小の互の目がリズムよく焼かれ、刃取ると涛乱風になる刃文。匂い深く、錵粒細かく、とにかく明るい。
京焼き出し風だが僅かに先に広まる。

全然わからん。江戸ではない気がする。京ではない(はず)。大阪か・・・。
無理やり肥前と見れば見れなくもない。播磨大掾忠国と入札。

3号 脇指
2号より細身で反りは少し浅い。杢目は無いが応永地鉄。淡く映り。
出入りの少ない互の目で腰開き気味。丸味が目立つ互の目、頭が平らな互の目などを焼く。
帽子は互の目を焼き込み先丸く返る。棒樋を鎺上で丸く止める。

先日の誌上鑑定の物に似る。長船則光と入札。(則光にはまだ応永地鉄が残る物がある)

4号 脇指
尺5寸程と短寸で反り少し強め。元先開かず横手幅力強い。
詰む地鉄。湾れを互の目でつなぐ刃文。互の目を焼き込み虎徹風の帽子。少々返る。
一見匂い口が寂しく感じるが、2号が深く明るすぎるだけで、この脇差も悪くない。

帽子もだし、とりあえずこれにしてみる。大和守安定と入札。

5号 平造り寸延び。
反り気味で先鋭く美しい姿。重ね厚い。強く見応えのある地鉄。
二個で一つになる互の目(ライオンが寝転んだ様な)を小湾れでつなぐ。匂い口は締まり気味で少々錵が荒い。

安定でこの荒錵と締まり加減というのがどうもしっくりこないが、4号の件とニコイチで、大和安定と入札。

当扱
イヤ
国入
イヤ
通り

まいった。
2号は助直だわ。
3号、この地鉄は応永は外せず。こんな刃文だが、小反系じゃなく正系だと感じる。そして盛光ではない。
康光と入札。
4号、短寸脇差で反る物は結局これだ。親国貞と入札。
5号は分からず。江戸で通りだから・・・直江助政と入札。

当扱



通り

5号、これだった。そう思えば絶対これしか無く、当たりだと思う。茎の形まで見えて来た。
飛騨守氏房と入札。

当扱



1号  刀 銘 濃州赤坂住兼元 明応八年二月日
2号 脇差 銘 近江守高木住助直 延宝九年二月日
3号 脇差 銘 備州長船康光 応永十八年八月日
4号 脇差 銘 和泉守藤原国貞 
5号 脇差 銘 飛騨守藤原氏房



後祭

”後の祭り”じゃなく”祇園後祭”の事です。
ずっと忙しくバタバタで、今年は宵山や山鉾巡行などのニュースやネット映像すら見ていなくて。気が付けば、もう後祭の巡行間際。
様々役割も増え忙しくなる年齢で、ここ数年は研磨に使える時間も限られています。研げる時間は幸せで貴重な時間。
幸い後継者がいる先輩研師の方々も、変わらずずっと研いでいるというお話を聞くことがありますが、そうですよね。研ぐのが好きなんだから仕方ない。だって楽しいんだから。



寸尺変換

先ほどUPした寸尺変換ページ。
計算機だと例えば2尺3寸5分を㎝に直す場合10回タップですが、変換ページだと5タップで済みます。
アプリも案外面倒だし、沢山変換する方はブックマークして使って下さい。



刀剣専用寸尺変換ページ

寸(合計)→ センチ

センチ → 寸尺



練習終わり(ほんとに)

古い差し込み研ぎの刀が出て来ました。各条件から幕末、明治・大正・昭和初期頃の差し込みと思われますが保存が良く、打ち粉等のヒケも少なく状態良好。片面を残したまま反対面で様々実験を。
考えられる事はやり尽くしましたが再現出来ず。ご近所さんの大門研師に託し私より大分近付くも完全ではなく。
酸を多用した差し込みではもちろんなく以前から目指している古い差し込み研ぎなのですが、いったいどんな技法なのか。。
鋒仕事などをみても特に上手いわけでなく、おそらく気張った研ぎではない普段仕事なのでしょう。
分かって見れば簡単な事なのかも知れませんが、今の所辿り着けずです。
「差し込み完成」的な事を何度か書いた様に思いますが、この理想の差し込みが再現出来ないという事は、全然完成していませんな。

こちらも過去に何度か完成と言ったかもですが、こちらは今回こそ本当に完成。

下筆春蚕食叶声の使い方がやっと分かりました。
長かった…分かるまで長過ぎ。
今までの全押形を、全部やり直したい気分です。。
”おんちょく”先生は若い頃から採拓していた膨大な押形を江戸の大火(文政十二年)により47歳で失っています。
その悲劇から再起し採拓した押形を元にして現在発行されている「刀剣銘字大鑑 原拓土屋押形」がつくられました。
すごすぎ。




入札鑑定

今回は本部から。

1号 太刀 長寸、板目で肌目目立つ。働く綺麗な直ぐ調刃、腰元の刃に潤み。
古いところに入札。

2号 短刀 僅かに反り。特徴的な映り、錵る刃。
鎌倉時代末期某工に入札。

3号 太刀 中鋒、全身映り、直ぐ調に特徴的刃形。
南北朝某工に入札。

4号 刀 綺麗な地鉄。綺麗な帽子。特徴的匂い口の乱れ刃。
新刀某工に入札。

5号 刀 少々肌立つ。広い直刃で飛び焼き。帽子深い。
姿は珍しいと思うがそれ以外はいつもの通り。

当同然


当同然

3号 刃文形状の可能性から若干時代を上げてみる。

当同然


当同然

能は三振の始まり・・・。何とかしたい。
3号 これで大丈夫だと思う。

当同然

当同然
当同然

後で思うと3号は視野が狭い見方でした。
答えが分かってから見ると、それにしか見えず。焦点を絞ってみる事は大事ですが、全体で見るべき場合もある。



8口まで完了

予定の10枚の内、8口分まで完了しました(1枚は現在本能寺宝物館にて展示中)。
あと2口はどんな御刀かまだ分かっていませんが、とりあえずこれが終わって寂しいので次を楽しみに待ちます。

ところで、紙が無い。
現在使用中の紙は、もう大分以前に装剣金工片山さんのお力により皆で買う事が出来た、1本につき100メートル(幅80㎝)のロール紙でした。(確か皆で30本程度買ったはず)
私が買わせて頂いた1本(100メートル)がもう無くなるので新たに購入しようと思いましたが、製造元廃業につき購入出来ずです。
また紙問題。以前もかなり苦労した末だったのに。
今時誰も図なんぞ引かんので図引き紙は不要なのでしょう。困った困った。



その後も

その後も夜中にせっせこせっせこ押形を描いています。
刃の働きも猪首風鋒も帽子もカッコいい。



久々に

昨日の刀の全身押形は完成。別で数日間進めていた全身は久々に失敗し、ゼロからやり直しです。
数年に一度、どうにもならなくなってやり直す事が。
10枚全部濃い画風で揃えようと思っていたのですが、やはり心配していた通りダメでした。
薄めで濃淡の少ないものにします。何日か頑張ったので痛い。





重りを減らす

押形の事ばかりですが・・・。
先日のブログに書いた10枚とは別ですが、全身押形を重りを減らして採拓。
近年、下の画像の様に多数の重りを使って採拓していましたが、それが良いと思っていたわけではなく、あくまで”流れ”でやっていただけで、むしろよろしくないと思いつつ。(長大な長刀で重りを沢山作ったので、ついつい流れで使っていたのでした)

ということで、鎌倉時代最末期乃至南北朝時代前期の無銘刀(在銘無しの刀工)を重りを減らし採拓。

無銘で反り浅なので問題なく採拓。今後は減らせる場合深反りや在銘でも減らすと思います。

押形は研磨後の作業です。研師が本業です。