偽鞘書

以前拝見したり研磨した刀でその後重刀指定を受けた数口。
流れ流れて偶然再会すると、当時は無かった鞘書がある事に気付きました。
初見時既に故人の著名な人物の鞘書きが重刀指定後に書かれており、100%偽鞘書という事になります。
こういう事はやめた方がいいです。ただでさえ混沌としているというのに。
ヤフオクの品じゃあるまいし。

新聞報道  | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区




野尻にて

帰郷につき、上平主税の墓所を探してきました。

この集落の上方の山中にあるはず。(マウスをドラッグすると360度見られます)
畑仕事をされていた方にたずねると親切に色々教えて下さり。「中井庄五郎さんのお墓はあるが・・・」と、地元でも上平主税の事を知る人は減っている様でした。

しばらく上って行くと、既に墓じまいをした場所や荒れたお墓が沢山。

そして姿は見えないのですが、山中のかなり近い距離に確実に何かが居て、かなりの恐怖。
少し前に”ぼぎわん”の小説を読んだばかりだったので、だいぶまずい状況です。
あ、近くに居る何かは”ぼぎわん”の類ではなくて、大型動物ですが。
近年紀伊山地の南部でも熊の出没が非常に多いそうです。

中井庄五郎(正五郎)さんのお墓がありました。
おそらく地元の人ではないと思いますが、どなたかが坂本龍馬の盃を置いてくれていました。

さらに少し上った場所に上平主税の墓石。
「玉置神社□□上平主税霊」
玉置神社”祠官”でしょうか。読みたかったのですが、触るわけにも行かず。



最近の

最近のお仕事で記録していた物を幾つか。(押形採拓だけの物も一点)

鎌倉末期刀、重ねが大変厚く鉄味のよい茎。


良刀。魅力的な地鉄は働き豊富になる。



鎌倉前期太刀。小錵。


鎌倉末期生ぶ茎太刀。


焼きの高い丁子太刀。


少々複雑な働きの刀。


激しい帽子。



色々拝見

生ぶ茎在銘の来国俊。古い研ぎのまま新たに発見されたもの。二尺六寸。茎の反りもそのままで大変貴重。
国行太刀。来。茎の保存状態が最良で銘字鮮明。この期の太刀は重厚感が凄い。
備前国長船住左近将監長光□、正安年紀の小太刀。二代長光でしょう。非常に詰んだ地鉄。
大磨上げの左文字。帽子はそのもの。地鉄強く良質。一見すると新刀の様に見えますが、左文字系など南北朝の良質な作品は新刀の様に見える物があります。以前光徳象嵌の名物の左文字を研磨しましたが、新刀かと思う様な出来でした。あの出来が正しいのだと思います。
某国鎌倉末期生ぶ茎二字在銘太刀。よく詰み美しい地鉄。直調に小互の目小丁子。淡く焼き出し映り。純然たる直刃のイメージの人ですが、たまにこういうのがある。以前この派の重美で同様の物を見て出来の良さに驚いた事があって。しかし入札鑑定だと当たる気がしないです。
鎌倉初期生ぶ茎在銘太刀。完璧。よく眠っていたものだ。
振袖茎の短刀。先つまむ。ほぼ無反り(若干S字)。凄い出来だが誰なのか悩む。
大磨上げ無銘4口。了戒、南北朝法華、延寿、古金剛兵衛、この辺りが当てはまるでしょうか。古い直刃は面白いです。



「信長が愛した刀とその時代の刀剣展」

本能寺大寶殿宝物館で開催中の「信長が愛した刀とその時代の刀剣展」の展示品を幾つかご紹介します。

刀 銘 薬王寺(重要刀剣)
永享頃、三河の薬王寺一派の作品です。薬王寺派の作品は現存数が少なく私も研磨した事はありません。同派中一番著名なのは助次でしょうか。
展示の刀は末備前や末相州の傑作に見紛う作品で、薬王寺派唯一の重要刀剣指定品です。


太刀 銘 光忠(重要美術品)
重美の在銘光忠です。もこもこと沸き立つ様な大房の丁子が見事。精良な地鉄も魅力的です。在銘光忠にこの様な大房な丁子は普通は無いのです。頗る貴重な作品です。


刀 無銘 光忠(重要刀剣)
光忠の地鉄は、映りを除けば京物を思わせる精良さを誇るといわれますが、この作品が正にそれです。
その美しい地鉄に映りが鮮明に現れる。凄い刀です。


短刀 銘 吉光
藤四郎。「吉」の字に目釘穴が掛かっていますが、それもまた味わいという事で。暢達な銘振りの勝ちです。

脇差 銘 備前国住長船忠光 彦兵衛尉於作州和介庄作之     
     延徳四年霜月吉日
彦兵衛尉忠光の作州和介庄打ちです。末備前の出先での作品には度々出会いますが、「作州和介庄」は大変珍しい。
この作品はたまたま全身押形を採拓していましたので全身押形パネルも。

この他出陳多数です。

現在京都国立博物館で開催中の「特集展示 新時代の山城鍛冶―三品派と堀川派―」に出陳の陸奥守大道の全身押形。

朱銘貞宗(特別重要刀剣)の全身押形。


晴明神社蔵の祐定の全身押形。重ね厚く、大変健全な祐定です。


二郎左衛門尉勝光と左京進宗光合作の全身押形です。こちらも頗る健全で(元重ね8.5mm)、彫物も全く減っていませんでした。

清光刀は2口。その他長光や同田貫等全10口の全身押形。

お近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。



京都支部入札鑑定会

今回は本部から。

1号 太刀 日本海側で古い所だと思う。いつものイメージよりスマート。

2号 太刀 多分15年ほど前に本部から来た太刀だと思う。

3号 刀 反り強めの末古刀。刃縁が働く中直刃。大変良い地鉄だが肌を荒く研いでいる。

4号 脇差 幅広く力強い姿。綺麗だが見応えのある地鉄で明るい直刃。

5号 反り浅で重い刀。見慣れぬ刃の錵。暴れる帽子。

当たり扱い

イヤ
当たり扱い
同然

3号 現状を見てではなく普通に研ぐとどうなるかを予想して入札しなければならなかった。

当たり扱い


当たり扱い
同然

今回から会場後方でホワイトボードを使い、初心者さん向けのレクチャーをしながらの鑑定会です。
ホワイトボードは図での説明と筆談用です。



上野の博物館

先日上野の博物館で小竜景光を見て感動してしまったので、その後景光を調べてみたりゴソゴソと。
景光太刀は重文他手持ちがズシリと重い名品を幾つか研磨したり拝見してきましたが、この名品刀絵図聚成の小竜景光の解説の通りだと思います。
「恐らく彼の生涯に於ける最高傑作と言ってよく、現存する同作にこの右に出るものを見ない」

そういえば故上野修路氏が小竜景光の彫り物を写していた事を思い出しHPを。
拵えも抜群です。
小龍景光写し– 第一室刀剣 | 上野の博物館
黒漆太刀拵 第3作 – 第一室刀剣 | 上野の博物館

作っていただいた大和古印も久々に出してみました。




刀袋(刀バッグ)

諸々の用事で移動。

久々に国宝小龍景光を見ました。今までで断然、今回が一番よかった。
こんなにもパワーがありましたか。凄い景光は幾口か拝見したり研磨をさせて頂く機会も度々でしたが、これは別次元の存在です。
各書でどのような解説なのかはまた確認しますが、私にはたっぷりぽってりとした姿が印象的でした。

GINZA SIXにて河内國平先生はじめ御一門の作品など。
私には銀座に刀は馴染んでいてしっくり来ましたが、刀に関心が無い方は驚くのでしょうか。
少し見ている間にも若い方が何人も訪れていました。

今回1000キロ移動して、研磨に関する25年間謎だった事が判明しました。
そしてまた同じかそれ以上に分からない事に。。追々考えます。
長距離移動には以前から使っていた革のバッグは重過ぎて苦痛極まりなく。バッグだけで一キロ越えてます。

ということで三浦研師に教えてもらい、しばらく前からTOBE流さんの刀袋を使わせて頂いています。
軽くて丈夫でカッコいい、今までの苦痛が全部解消。おすすめです。

戸部流【tobe-ryu】 – BOOTH



京都支部新年入札鑑定

新年の入札鑑定会は新年会も兼ねており時間の都合もあって、1本入札で行います。
ただ初心者さんには通常の1本入札ではハードルが高過ぎるため、1~5号刀それぞれに3工づつ記入し、提出は一度のみという手法で。
普段とは違う思考とテクニックが必要で、簡単な様で案外難しい。実際やってみると1口の刀に対し、3通りの見解を探るのは結構楽しいものです。

1号 脇差
応永杢、元先の幅差はそれほどない。匂い出来の互の目に丁子ごころ。帽子尖らず。映りさまで目立たず。
盛光か康光だと思う。こういう選択の場合今まで康光を選択して外すパターン。
刃の調子が則光にも見え、則光にも応永杢に迫る良い地鉄がある。

盛光・康光・則光と入札。


2号 短刀
大きめ。越前鉄。バサける湾れ。彫り物無し。
初二代の康継だと思う。

初代康継・二代康継・肥後大掾貞次(貞国と書いたつもりが誤記入)と入札。


3号 寸延び
結構延びて尺三寸に達するか。反り強い。良い板目だと思うがちょうど蛍光灯の無い場所にあり、地鉄見えず。
小錵出来で中粒の互の目が少々揃う。帽子激しい。返りが働く。棒樋あり。
古刀か新刀か分からずかなり悩む。
表の刃に明るさの斑があり、地も経年の影響が見られる。古刀だろうか。
毎回後で思う親国の短寸反り深に似る姿。

宇多国宗・親国貞・下原照重と入札。


4号 刀
長寸、反り浅い。
地鉄良く明るい刃。焼きは大模様で不規則ながら、如何にも肥前という錵付き。

肥前行広・肥前正広・近江大掾忠広と入札。


5号 脇差
少々荒い鉄。元と先が締まる互の目。中程は錵付く大互の目。
腰の互の目が加州。物打に箱。

加州兼若・水田国重と入札。


1号 脇差 備州長船盛光
      応永廿九年八月日(重要刀剣)
2号 脇差 於武州江戸越前康継(初代差し裏銘)(重要刀剣)
3号 脇差 藤原国貞(親国初期銘)
4号  刀 一 肥前国出羽守行広以阿蘭陀鍛作
5号 脇差 賀州住兼若(三代)



新時代の山城鍛冶―三品派と堀川派―

京都国立博物館では現在「特集展示 新時代の山城鍛冶―三品派と堀川派―」が開催中です。
堀川物と三品派作品が主な展示となっています。

研磨をさせて頂いたものも多数出陳されていますが、寺社御所蔵のものを除き手元に押形記録がある作品を幾つか。

短刀 銘 日州住信濃守国廣作
     天正十九年二月吉日
    (2022年度、京都国立博物館修理事業時、記録として全身押形採拓)
この天正打国廣は京都府支部顧問の加藤静允先生御寄贈の御品で、今回の展示では加藤静允コレクションとしてこの他に、国昌、国徳、国時、平安城弘幸、石見守国助が展示されています。


刀 銘 信濃守国廣


脇差 銘 出羽大掾藤原国路 
     元和五年十二月日 主大橋松節入重政 


 短刀 銘 陸奥守大道
     (京都国立博物館蔵 下間基子氏寄贈 2024年度、京都国立博物館修理事業時、記録として全身押形採拓)


太刀 銘(菊紋)和泉守来金道
        遥奉 鈞命享保庚戌年於京師二柄ヲ打一柄ハ献シ一柄ハ則是也
       (京都国立博物館蔵/研磨時記録として全身押形採拓)

 
10月の支部鑑定講師当番では三品派の再評価についてお話をさせて頂いたところでした。
私、以前から三品派初代四兄弟の評価が今一つだと感じていて。(もちろん評価はされていますが、まだ足りぬ!と)
初代金道、初代吉道、初代正俊、初代来金道(初代来金道の作品はほぼ無い)、この人達はもっと評価されるべきと思うのです。
では何故そういう状況なのか。それは後代の一般的な作品が非常に多く、その数が初代作を大きく上回るため、初代の凄さが埋もれているのではないでしょうか。その一派の評価は数で決まるという考え方もありますが、堀川物を語る時に後代は無く、肥前は後代作も初代に譲らない良作多数。三品派とは違う構成です。後代の三品作品も良作揃いではありますが、慶長新刀の魅力とはかなり違う所に行ってしまっていて。。
その三品派初代の魅力が詰まった作品が、今回展示されている重要美術品の初代丹波守吉道の刀です。慶長新刀の貫禄と覇気満々、初代丹波の刀に是非注目して下さい。
幡枝国廣も展示されています!
幡枝国廣については以下の過去ブログにて。
古い刀剣美術 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
1)幡枝八幡宮 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
2)今日も幡枝八幡に。 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
3)幡枝八幡宮に行きました | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区

特集展示 新時代の山城鍛冶―三品派と堀川派― – 京都国立博物館