天然砥石界隈

天然砥石を買いに行き、或いは天然砥石を使う人と会い日本刀の研師と名のった時、歓迎された記憶よりもむしろ敬遠されるか酷い場合は馬鹿にされた、そんな記憶の方が強く残っています。 
敬遠された時、理由を聞いた事がありました。
刀の研師を名のる者の中には、「刀剣研磨は研磨の最高峰だ!」と豪語するくせに、”大平”や”中山”すら知らない。ただただ「内曇!内曇!柔らかい内曇りはないか!鳴滝はないのか!」の一点張り。もしもなければ毒づき、仮に購入しても後から「砥石が悪い!」と苦情を言って来る。そんな事らしいです。。 
ちょっと極端に聞こえるかも知れませんが、この状況は容易に想像できます。おそらく、たまたま発生した一人の刀研師のせいでこうなった訳ではなく、複数の自称刀研師が繰り返しこんな事を行って来たせいでしょう。
敬遠されて当然ですな。




天然砥石比較 70

表面
側面
研汁

砥石硬度  7/10
研磨力 8/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

八木ノ嶋です。(断定した言い方ですが、私は見分ける目は持っていません。八木ノ嶋だという事で購入した砥石です)

この様な原石状態で購入しましたが、飾りではなく使う石を探しているため、カット。
しかし…ヤケはありますが綺麗な石だったので、今は切ったことを少しだけ後悔です。。

研磨力の強い砥石です。地を引く事もありません。もちろん目も細かい。
刀の備前物の良さ凄さは分かっていますが、でも大和物が好きという人間だからですかねぇ、こういう砥石に魅力を感じてしまうのは。



天然砥石比較 69

表面
裏面(「玉」入り)
側面

砥石硬度  4/10
研磨力 3/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

研磨力若干弱めの刃引きです。今思えば、わざわざ採掘業者さんの所にこの程度の石を持って再度探しに行くかね?と思ってしまうのですが…。(名前入り砥石はこういう理由です→「天然砥石比較20」)
この石は20年ほど前の購入だと思いますが、そういえば当時は刃引きに危機感を感じまくっていた頃でした。
こういう使いやすい砥石は有難い存在なのは確かです。よく使いましたので、半分以下の薄さになっています。



天然砥石比較 62〜68

No.62
No.63
No.64
No.65
No.66
No.67
No.68
No.65の研汁

砥石硬度  7~9/10
研磨力 8/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

見慣れないと名倉に見えてしまうかも知れない砥石ですが、京都産仕上砥です。
基本硬い石が多いのですが強い研磨力と弾力の無さが特徴でしょうか。(この画像中ではNo.65が一番柔らかく、No.67が硬い。No.67は硬度10にしたい程に硬い石です)
内曇りの引き方は各研師の経験や考え方の違いにより様々ですが、この石は手首が柔らかい引き方の研師が扱いやすい石だと思います。

弾力が無い石の方が肌がよく出ると思っていますが(以前そう教わり腑に落ちた次第です)、「天然砥石比較30~33」の様な弾力有り系で品よく引き切るだけでは済まない刀は沢山あります。
そんな時は、砥当たりはかなり強いのですが、弾力無し系で出し切った後、艶で収めるやり方が好きです。



天然砥石比較 60,61

No.60
No.61
No.60裏面
No.60側面(「玉」入り)

砥石硬度  4/10
研磨力 4/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

正統的刃引きです。この石には単に黒い研汁が出る事を求めているわけではありません。そこそこの研磨力があり、粒度が安定して細かく、どんな刀でも引きやすい、そういう石が良い刃引きでしょうか。No.60,61は大変よい刃引きです。
というかこの砥石硬度で真っ黒の研汁というのは稀で、もしもそんな石に出会えたならば、それは非常に幸運な事です。
因みに、良い刃引きが必ずしも良い刃艶になるとは限らず、難しいものです。。



天然砥石比較 50〜59

No.50
No.51
No.52
No.53
No.54
No.55
No.56
No.57
No.58

No.59
No51の研汁

砥石硬度  7~8/10
研磨力 7~9/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

天然砥石比較5」「天然砥石比較12」と同じ山の石です。
この山だからか、この層はという事か分かりませんが、いずれも非常に重い石です。重い石は締まっていて硬い。
これらより若干軽いこの山産の石をあと20本程度持っていましたが、全てカットし刃艶として消費しました。
No.50も刃艶用です。



天然砥石比較 48,49

No.48
No.49 表面
裏面
側面
No.48

砥石硬度  7/10
研磨力 7/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

写真で見ると前回の天砥石比較「34〜47」に似ていますが、今回はかなり大判な砥石です。
どの山の石かは不明ですが、色やその他の見た目も前回に似ていますし、おそらく層は近いと思われます。
しかし前回の砥石それぞれの引き味の違いとはまた別の引き味で。微妙ではありますが、この違いは重大な違いです。
No.48の「〇」部分、ここに小さな茶色の粒があります(以下二枚は拡大写真)。極小さい物ですがこれが当たり、出てくると針で除去。
しかしこうして目視出来るのはよい事で、除去さえすれば問題なく使用できます。
この砥石が無ければ仕事にならない、最重要砥石の一つです。



天然砥石比較 34〜47

No.34
No.35
No.36
No.37
No.38(「玉置」入り)
No.39
No.40
No.41
No.42
No.43

No.44(「玉置」入り)
No.45
No.46
No.47

砥石硬度  4~7/10
研磨力 5~7/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

最近まとめてUPが増えていますが、飽きて来たわけではありません。
これらの石はどれもよく似た性質で、同じ山、ほぼ同じ層の砥石です。

硬さは様々ですが研磨力は安定しています。
刀身に与える影響はどの石も似ていますがそれぞれ微妙な違いがあり、よく言われる”刀によって使い分ける”が実践出来、主力となっている砥石です。




天然砥石比較 30〜33

No.30 表面
裏面

側面
No.31
No.32
No.33

砥石硬度  8/10
研磨力 7/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

いずれの石も、「地引き」或いは「地砥」と呼ばれるタイプのものです。
砥質、研磨力、引き心地、そして刀身への影響といずれも大変よく似ています。
昔はよく使った石ですが、もう長らく使っていません。(No.32は古名刀の地鉄を晴らすために使用する事があります)



天然砥石比較27~29

No.27
No.28
No.29

砥石硬度  2/10
研磨力 2/10
刀身は末相州。刀身硬度6/10

研磨力数値はこの刀身に対しての物です。
全ての砥石を試しまとめた物を書いているのではなく都度の感覚での数値です。

天然砥石比較1」と同種です。この石が採掘された当時、各小売店さんでよく見かけました。
内曇りとは、刀身を白く曇らせるための砥石だとの認識が一般的かと思いますが、単に白く曇らせるだけならこの内曇でも十分白く曇ります。
単に白く曇らせるのが目的ならば、高価な内曇りを沢山買う必要はないのですが。。