信州住行宗(兼虎初期銘)
短刀、銘 信州住行宗(花押)
嘉永六年二月日
(刃長 九寸五分)
47回目は山浦兼虎初期銘、行宗の短刀です。
兼虎はブログ前掲真雄の子で父真雄及び叔父清麿に作刀を学んでいます。
兼虎の作品は少なく関西などでは拝見する機会もめったにないのですが、特に初期行宗時代の作品は極少数しか確認されていません。
刀剣美術306号「真雄・清麿揺籃期の周辺(4)」(昭和57年7月/花岡忠男)に4口の行宗が紹介されています(内3点につき押形も掲載)。
・短刀 信州住行宗
嘉永五年八月日
(五寸三分七厘)
・短刀 信州住行宗
戦場在常
(七寸三分)
・脇指 信州佐久郡茂来獄以磁石製鉄鍛
行宗 嘉永五年十月日
(一尺三寸八分)
・脇差 応土橋氏需信州佐久郡茂来嶽以磁石製鉄
行宗鍛
嘉永五年十二月
(一尺四寸八分)
以上の4口、年紀の有る3口はいずれも嘉永五年紀。翌嘉永六年には銘を兼平と改めています。
刀剣美術708号(平成28年1月)、細萱知敬氏の随筆に、上記に加え新たに茂来嶽銘発見の報があり、この時点で行宗5口。
さて今回の押形ですが京都の旧家より錆身で発見された品で嘉永六年紀です。兼平へと改銘直前の銘という事になります。
状態良好な生拵えが付帯。
もしも他に新たな発見が無いならば、6口目の行宗が加わった事になります。
※茂来山は信州百名山の一つで、磁鉄鉱が産出され鉄が作られていたそうです。
https://www8.shinmai.co.jp/yama/guide/000104.html
※長野県佐久町大日向鉄山の「天然磁石(磁鉄鉱)」(行宗についても紹介されています)
http://mineralhunters.web.fc2.com/oohinata.html