断面の

応永移住系信国を鋸で切っていて、前から確認してみたかった事を少し。

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少々研ぎの処理が不十分だが、本などで度々見る刀身断面。
この手の画像は刀身構造の解説などでよく見かけるが、縦方向の断面を見たく次の加工を。

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棟側から卸して研ぎ進め、内曇りとナルメの後少し酸処理。
画像1の構造なので棟から研ぐとこうなっている。
写真にある刀身の両サイド、刀身表面(平地)付近の鉄は酸処理により少し黒い色になる。これは焼きが入っているという事。
皮鉄として別の鉄だからではなく表面なので焼きが入っているからだと思う。

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白熱灯に透かす。
うねる柾目。何層なのか数える事も可能。白い肌、グレー、黒い筋の混合。
ただこれはあくまで縦断面で、普段目にする刀の地肌はこの横の面(平地)。
うねって飛び出した部分が表面に出ると杢目や板目になる。そう単純じゃないとは思うが。。

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軽く地艶を。
先ほどの分かりやすい層は確認し難くなった。普段の研ぎ工程と同じ現象。

ここまでの肌は、研磨処理により現れた肌。
鉄の合わせ目は以下の画像。

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鋸による切断面には研磨後は見えなくなる鉄の層が見え、この状態で全身に、ほぼうねらず真っ直ぐの合わせ目となる。
この画像では白黒12層に見える。左から白で始まり右端は黒で終わる。
白、黒、それぞれがほぼ同じ幅。
研磨で現れる肌とは別の物といっていい。

 

 



古一文字の

研ぎ上げた在銘の古一文字。腰の崩れ方が表裏共山鳥毛に少し似る。
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以前撮っていた粗い携帯画像ですが。
この崩れ方、似た症状で面白い。が、同じ作者だと言いたいわけではないです。



獨逸鋼鉄

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短刀、九寸五分。
銘 於東京高輪以獨逸鋼鉄 胤勝
  明治三十六年五月

”ドイツ鋼鉄”。凄い響きです。
今まで研磨させて頂いた中の硬さ最強刀は、京都国立博物館蔵の短刀でした(銘 大阪住高橋晴雲子信秀七十五歳作 於京都帝国大学鍛之 大正六年十二月吉日 https://kyoto-katana.com/archives/6775/ )。
しかしこの胤勝短刀はそれ以上だと感じます。
硬い鉄は同時に脆さも持ってしまう事が多く、硬過ぎると研磨の時に刃こぼれで苦労する事もしばしば。
しかしこのドイツ鋼の胤勝、天然砥石を完全拒否する鉄質ながら、刃こぼれの心配は一切必要なし。
獨逸鋼鉄最強です。
この一門は近現代の刀工流派中特に鉄に詳しい人達ですし、当時様々な質の刀が生み出されているようです。



日刀保京都府支部2月入札鑑定会

一号 刀

反り少し深い。全体に反る。身幅広く重ね厚め。棒樋鎺上丸留め。切っ先フクラ強めに張る。
地鉄詰み気味で若干肌立つ。
広めの中直刃。刃中、丁子足、葉が多く入るも少し寂しく感じる。下半匂い勝ち。上小錵。帽子深め。結構深い。先丸。
ぱっと見の刃の具合は末備前か中島来。 焼き出し付近の焼き幅が若干狭まり、大磨上げにも見えなくも無いが生かほぼ生だと思う(鎺上丸留めの棒樋でも大磨上げの場合があるが、これは違うと思う)。
末備前と思いたく再見するも、上半の錵付き方がやはり末備前ではない。が、葉は完全に末備前。
大磨上げ風だが実は生という無銘中島来をなん振りか見た事があり。。地鉄は違うが、無銘の極めの範疇ではあると思う。
中島来と入札。

 

二号 刀

反り少し深い。先も反るが腰反りが勝ち、美しい姿。身幅少し細め。草倶利伽羅や樋中梵字浮彫等。低めの焼きに始まり、上半は鎬に達し華やかで皆焼風。帽子は一枚になっていると思われる。三棟。
持った瞬間は末相州。しかし信国がこう、掻き分けて出て来る。。信国典型の刃の特徴はゼロ。ただ何故か信国を彷彿。彫り物に引っ張られているのかなぁ。。いや多分、姿がそうなんだと思う。ちらっと見た2,3も山城なので、1234と山城という事か~。
信国と入札。

 

三号 脇差

少し寸のつまる鎬造りの脇差。反り浅。中鋒延びる。棒樋を鎺上で丸留め。両チリ(両チリの樋でここまで端正な物はめったにないと思う)。
地鉄最良。湾れに互の目。密度が非常に濃い匂い。よくいう”地刃ともに明るい”という出来。
何度か出ている堀川国広だと思う。やはり大変良い刀。過去拝見した時はザングリ感がゼロだと思ったが、今回はその風を少し感じ、再見が嬉しい。
堀川国広と入札。

 

四号 短刀

片切刃(表平、裏切)。平に素剣、切刃側に護摩箸、梵字
完全にザングリだが研ぎの影響もあると思う。匂い口の密度が高い刃文。湾れや互の目で。低い焼きで3号に共通。所謂志津写しの刃文。
何度か研いだが弘幸の典型で、これも再見だと思う。
堀川弘幸と入札。

 

五号 刀

反り浅い。うねる柾。小錵の中直刃。地鉄が少し白けるが研ぎの影響が強いと思う。
仙台国包と入札。

 

時代違いイヤ
イヤエン


 

一号、あらら時代違い。ちょっと分からんが、写し物が多い初代にしてみよう。武蔵大掾でたまに肥前に思えぬ匂い口を見る気がするのでそれに。
武蔵大掾忠広と入札。

二号、相州の方か。今後は妙な事を考えず、押形に描くのが大変な刃の時は、素直に末相州にしよう。個銘は全くわからんのでこれに。
相州正広と入札。

 

イヤ



 

一号 もう考える力を失った。地鉄はこれに見えなくもない。刃は全く違うけど。康継。

イヤ



 

一号  刀 備州長船住上野大掾祐定
      正徳六年二月日

二号  刀 相州住助廣

三号 脇差 国広

四号 短刀 平安城藤原弘幸

五号  刀 山城守藤原國包

 

一号、上野大掾の直刃は私は初めて見たかも知れません。全て納得です。大変勉強になりました。