輪ゴム危険
短時間なら影響はないでしょうが、2~3週間と少し長い期間でしたので何重もの布や油膜でも硫黄の影響が防げなかったようです。
あの輪ゴムで白鞘に登録証を巻き付けている物を頻繁に見ますが、輪ゴムが劣化して溶けてベタベタになり白鞘を傷めている物もよくみます。
それを防ぐために私は髪留め用のゴムを使っていますがそのゴムには硫黄などの成分が含まれていないのか、少々心配になってきました。
刀は、ある程度長い物、身幅の広い物、反りが頃合いに強い物、焼き刃の高い物、重い物、の方が手に取った時のインパクトがあり、そういう刀に魅力を感じる事が多いと思います。 私も同じでそんな刀の方が鞘を払った直後の第一印象はよいものです。
しかし稀に、二尺一寸、二寸台の小さな刀でも手に取り鑑賞している間、その小ささを完全に忘れる刀に出会う事があります。
短寸で身幅も狭く、反りも浅い。そういう刀でも今見ているそのポイントに完全に引き込まれてしまい、全体の小ささを忘れてしまいます。
過去に拝見した品で思い浮かぶのは大磨上げ無銘粟田口、大磨上げ無銘古一文字。この二振りは凄すぎました。
先日UPさせて頂いた国綱は在銘で美しいく力強い姿で、上記内容とは少しズレるかも知れませんが、決して身幅が広いわけではなく、長くもない。しかしやはり今焦点が合っているそのポイントの出来の良さに完全に引き込まれる、そういう刀です。
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入札鑑定会
一号 脇差
鎬造り、身幅重ね少し大人しい。板目少し流れぎみ。小沸え出来の互の目で三本杉調子。焼き出し無し。
これは難しい。尖って居ないので違う可能性が高いと思うがとりあえず陀羅尼勝国と入札。
二号 脇差
頭に出入りがある丁子。足が長く刃先に迫る。彫り無し。
一竿子忠綱と入札。
三号 脇差
広直刃調で湾れ。地沸え付き所々荒い。沸え崩れる箇所があり物打付近は地に大きく散る。
鎬が低い。
大胆な出来だがこの雰囲気は興正や真改に度々見るように思う。真改国貞と入札。
四号 刀
先幅広めに感じる。刃三つ角が張り気味で切っ先長詰まる。
大坂の丁子。若干拳気味。
肥後守国康か国助だと思うが。。 二代国助と入札。
五号 刀
慶長体配。刃寄り柾。良い板目。湾れに互の目。焼きは低い。沸え散らず整い明るい。帽子倒れ。
一見直江志津。だが国広にも見えて来る。しかし国広の地鉄じゃない。良い刀。初代金道と入札。
イヤ
当
当
国入り
イヤ
一号 この雰囲気で三本杉調だと仙台か会津か。会津兼定と入札。
四号 国助か国康だと思っていたが、国助でイヤで国康も無くなった。分からないので親国貞と入札。
五号 そう言えば度々見る脇差の輝廣と同じ出来だった。播磨守輝廣と入札。
イヤ
当
当
国入り
当
一号 会津でイヤならもうお手上げ。あまり見ない工に入れて終わろう。鈴木貞則と入札。
四号 これももう分からない。一竿子忠綱と入札。
イヤ
当
当
国入り
当
一号 脇差 銘 奥州仙台住国包(二代)
二号 脇差 銘 粟田口近江守忠綱(二代)
三号 脇差 銘 井上真改 (菊紋)延宝八年八月日(二代)
四号 刀 銘 大和守吉道(二代)
五号 刀 銘 芸州広島住播磨守藤原輝廣 二ッ胴切断可為子孫之重器者也(二代)
一号は研ぎ方によってはもっと柾になる様に見えました。
四号、大和守吉道が出ないのが情けない。切っ先形状など含め造り込みもいつもの吉道なのに。。
五号は直江に入れたくなる様な良い刀です。
研磨記録、備前古刀の部に左近将監恒次を追加しました。
左近将監恒次(鎌倉時代末期)は現存希な品ですが何度か手に取らせて頂く機会があり、2016年7月の鑑定刀(銘、備前国住左近将監恒次)に出させて頂いた品、2013年五月の鑑定刀(銘、恒次)、また2014年5月に名物の鄙田青江恒次を拝見しました。
2013年の二字銘恒次は若干違う出来でしたが、鄙田青江、2016年鑑定刀、そして今回UPさせて頂いた左近将監恒次は大変よく似たものでした。
匂い口は少し沈み心ですが、大変よく錬れた地鉄に地斑映りが立ち、古雅で味わい深い作風です。(地斑映りに関しては鄙田青江が顕著です)
恒次は同銘が古青江にあり、備前の左近将監恒次と混同されて伝わった品も多く、名物数珠丸恒次(重要文化財)、名物鄙田青江恒次(重要美術品)も古青江恒次として伝わって居ましたが、近年の研究により備前の左近将監恒次の作である事が判明しています。
現在薬師寺にて「噂の刀展Ⅲ」が開催中です。(開催期間:平成30年2月8日(木)~4月8日(日))
同展にて先日二日間限定で名物 大倶利伽羅廣光(重要美術品)が展示されましたが、あわせて数年前に描かせて頂いた大倶利伽羅廣光の全身押形を大塚巧藝社さんのご協力のもと、同じく二日間限定で展示して頂きました。
観覧して頂いた皆さんからは、「刀身と押形の同時展示は難しい刃文鑑賞の助けになる」と好評だったようです。
全身押形の制作には大変手間が掛かり、各展覧会で全ての展示刀に全身押形を添える事は難しいと思います。しかしたとえ数点でも押形があれば、刀身と押形を見比べる事で、初心者には難しい刃文鑑賞も要領がつかめ容易になり、刀の鑑賞に慣れている方も手に取るより遥かに見辛い展示刀鑑賞の助けになるはずです。
ただ、押形には鑑賞の補助的役割以上の意味があるとも思っています。書籍等で本のサイズに縮小された全身押形は単なる記録資料という認識で見る人が多いと思いますが、刀身の実物そのままを写し取った現物の全身押形には、刀身の持つ魅力とはまた別の魅力を感じます。