京のかたな 展示№59

定利短刀
京のかたな展、展示№59 短刀 銘 定利

国宝 太刀 銘 定利の隣に展示されている短刀の定利です。
定利在銘の太刀は例えば重刀指定なら十数振り程度で、普段頻繁に拝見出来るほどの数ではありません。
定吉となると更に少なく東博の品など極わずかです。
(重文に左文字一派として指定された定吉があり銘の書体が定利風で綾小路説もあったようですが、造り込みや鑢目その他諸条件から左文字一派でよいようです)
重刀指定品の中に在銘末行が一つあり、これも綾小路一派と見られる品です。
この末行とは少し書体が異なりますが、厳島神社にも綾小路とされる在銘の末行が残されており、昔展示で拝見し二尺七寸を超えるその大きさに驚いた事を思い出します。また特保鑑定で在銘・無銘の綾小路末行を拝見する事が度々ありますが、いずれも定利と通ずる出来を見せています。

さて短刀定利、光山押形所載の品です。
この時期の短刀の現存品は粟田口派以外殆どありませんが、当時も短刀は多く造られたと考えられています。
しかしその現存率は非常に低く、今に伝わるこの短刀定利の資料性は頗る高いといえます。



京のかたな展 内覧会

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本日は29日から京都国立博物館で始まる特別展「京のかたな-匠のわざと雅のこころ ―」の関係者内覧会でした。
開会式は数百人程度の参加でしたが、内覧自体はどんどん人が増え、最終的にかなりの人数になっていたと思います。
全館”刀”というこの大規模な展覧会は京博始まって以来初めてとの事で、本当に凄い内容となっています。
私も研師として研磨や押形採拓その他諸々と、微力ながら関わらせて頂いてきましたので明日からの開催が本当に楽しみです。

展示中の品、展示No.100 長谷部国信の槍が、槍の性質上刃文が見え辛かったので押形をUPさせて頂きます(京博さんのお許しを頂いております)。
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槍や剣など鎬の高い造り込みを押形にすると展開図の様になり、実際の身幅とは全く違い、印象もまるで変ってしまいます。
それを避けるため、実際の見た目通りの輪郭で押形の採拓をしています。

展示リストでご覧頂く通り、凄まじい内容です。
是非京都国立博物館に足をお運びください!
出品作品リスト
京のかたな(みやこのかたな)



日刀保京都府支部9月例会

入札鑑定

一号 刀

反り浅長寸幅広重ね厚。めったに無いレベルの豪刀。浅い樋。
少し流れる板目で肌目がよく出る。丁子や互の目で錵る。特に谷に凝り気味で刃中は大人しい。

一見して末の物と判断できるタイプだが、この大きさが全てを迷わせる。
今まで見た同田貫はどれも尋常な造り込みで「同田貫=豪壮」のイメージは無いのだが、錵の位置と刃の調子がどうもそれに見える。

同田貫上野介と入札。

 

二号 刀

反り浅。中鋒。互の目丁子。刃は低め。足が刃先に到達するタイプ。よく詰む肌。

この中鋒は多分以前出た事がある品だと思う。

固山宗次と入札。

 

三号 刀

反り浅め。重ね厚。先まで厚い。鎬高めで鎬幅広い。大変締まる匂い口の直刃。了戒程度の刃幅。刃中小足。
詰む肌だが白い大杢板肌が平から鎬地にまたがる。フクラの大きくつく鋒。

全く分からず。新々刀か現代か。
刃は靖国。姿は全く違う。が他が浮かばず。

靖廣と入札。

 

四号 刀

少し長め。大阪風焼き出しに複数まとまる互の目を規則的に繰り返す刃。

新刀祐定の典型作だと思う。

上野大掾祐定と入札。

 

五号 脇差

少し幅広で反りはそれほど深くない菖蒲。整う肌。小錵出来の互の目で若干角ばる互の目を1,2交える。

親国、播磨輝、兼若、国儔、どれにも見えてしまうが決めきれない。

六号との関係で播磨守輝廣と入札してみる。

 

六号鑑賞刀 肥後守藤原輝廣の薙刀。
肥後輝の正真実物は以前古研ぎで出て来た槍一口しか見た事がなかった気がするが・・・。もしかしたら平脇も見たか。
いずれにしても大変珍しい初代輝廣の作で拝見出来て頗る嬉しい。

 

 一号 イヤ
 二号 当
 三号 イヤ
 四号 当
 五号 イヤ

 

一号 迷っていたもう一方の人に入れてみる。 陸奥守大道と入札。
三号 こんなにずんぐりした姿は見た事が無いが思い浮かばずこれにする。横山祐包と入札。
五号 加州兼若と入札。

 
 
 一号 イヤ
 二号 当
 三号 イヤ
 四号 当
 五号 イヤ

 
一号 どうやら時代はOKだそう。
造り込みがあまりに違うので当たりにはならないと思うが、国広の日州打ちの長い物に共通するものを感じる。国廣天正打と入札。
三号分からず。堀井胤吉と入札。
五号越後守国儔と入札。
 

 一号 イヤ
 二号 当
 三号 イヤ
 四号 当
 五号 イヤ

 
鑑定刀

 一号 刀  若州住冬廣作
 二号 刀  備前介藤原宗次 固山見龍子宗次 元治元年八月日
 三号 刀  濱部美濃守藤原朝臣寿格 神茂知令鋭之 寛政三年辛亥秋八月日
 四号 刀  備前国住長船七兵衛尉祐定作 寛文二年二月吉日
 五号 脇差 和泉守藤原国貞

鑑賞刀

 六号 薙刀 肥後守藤原輝廣作
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「日本美術刀剣と押形展」開催

長崎歴史文化博物館にて「信長が愛した名刀~日本美術刀剣と押形展」が開催されます。

押形展1押形展2
会期 2018年9月13日〜9月24日
会場 長崎歴史文化博物館 3F
入場料無料
詳しくは上掲のチラシをご覧ください。

長崎歴史文化博物館



全身押形刃文つながる

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鎌倉末期在銘太刀、佩裏の刃文がつながる。
表に合わせ色を濃くして行く。濃いなら濃いで良くなってきた気がする。
この決めきれない感じは研ぎの刃取りを浅く取るか深く取るか迷う時の心情に少し似ている。
研ぎの場合大体は深くが正解となるが、墨の濃さは濃くして不正解となる事も多い。
微妙というか絶妙な色と働きの省き具合が難しい。必ずやり過ぎる。
この感覚を根こそぎ捨てないといかん。



無題

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鎌倉末期太刀、佩表はほぼ完成。佩裏は元と先から描き始め中程がまだつながらず。
佩裏は全体に薄めで描いているが、この薄い状態の方が濃い表より断然よい。
墨は一旦濃く描いてしまうともう戻せない。戻そうと頑張って紙の繊維をボロボロにしてしまった事もあるが、何か方法はありますか・・・?



太刀全身押形完成 新たに全身押形を

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古備前、古一文字と全身押形が完成したので新たに鎌倉末期在銘太刀の輪郭と茎をとる。
ずっと備前物を描くのは苦手だったがさすがに少しスピードが出るようになってきた。
ただ、墨での刃文描写の場合しっかりと時間をかけた方が断然美しい線を描ける。
以前一文字の全身をやった時は刃文描写に60時間ほど掛かり、長かった~と思って居たが、先日上手い人に聞くと半年かけているとのお話で。
そりゃどう頑張っても同じ線にはならないはずだ。
これは墨でやっている人にしか見分ける事が出来ないのかも知れないのだが、どう頑張ってもその人の線と同じ線はただの一本も引けない。
しかしそんなに時間を掛ける事も出来ないし。。もう別物だと割り切ってやるしかないなぁ。