棟焼きの 2

昨日の記事に書いた棟に出る匂い口の無い焼きについてですが、研磨をして居ると色々な状態の物に出会います。
それが何なのかが一番良くわかるのは実作者ですので、いつも色々ご教授頂いている田中貞豊刀匠にお聞きしました。

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昨日UPした写真ですが、これについては焼きの形状などから判断して、焼き入れの時に出来た棟焼きを銅(あか)で取った物と言うよりは、反り調整のため棟に銅を咬ませた場合、その熱が焼き刃に達して匂い口が無くなってしまう事を防ぐため水を掛けますが、その時急冷し過ぎて軽く焼きが入った物の可能性が高いと言う事でした。
それによって出来る軽い焼きはこの写真の様に匂い口の無いもので、焼きの上下の端が遠浅の湖の様になだらかになる事が多いそうです。
なるほど、実際に日々作刀して居る刀匠からしかお聞きできない貴重なお話です。
大変勉強になりました。 ありがとうございました。
そして昨日の箇所はこうなりました。

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地艶工程の後、拭いをさした状態。
周りとほぼ同化して分かり難くなりました。 こうなる事は昨日の記事の最後の方に書いてありますが、通常の棟焼きならばここまで同化する事は稀です。
匂い口の有る無しで最終的には大きな違いになります。 



棟焼きの

先日、「棟の鑑賞」として書いた記事の中で、「刀工が反りの調整や不要な棟焼きを、焼いた銅で熱して消す事はよくありますが、入念に研磨された棟を鑑賞するとその痕跡を発見する事があります。匂い口は無くなっておりますが、黒く焼きの形が残り、微妙に凹凸が残った物がそれです。」と書きましたが、今研磨して居る刀にそれを発見しましたのでちょっと撮ってみました。
画像内曇時の棟焼きを鎬地側から見たところです。 内曇工程ですので鎬地はまだ鏡面状ではなく、結果棟焼きはくっきりと見えますが、銅(あかがね・あか)を咬ませ焼きは飛ばしておりますので匂い口は有りません。 この刀にはこういう状態の物が棟一面に有りました。
画像←もう少しアップで。
もっと完全に柔らかくなった場合はここまで黒く残りませんが、この程度に留めたものも多く、まま見かけます。
普通に匂い口の有る飛び焼きや棟焼きなどよりは硬度が低いため、針磨き後は見つけ難くなります。
因みに黄金は「こがね」、銀は「しろがね」、銅は「あかがね」、鉄は「くろがね」です。



昨日の

昨日書いたブログが画像や文字の配置が上手く表示されないかも知れません・・。
大分直しましたがHTMLやスタイルシートいじるの大変なのでこんなもんでご容赦下さい。



レンズを

私は全く詳しく無い事を前置きした上で書きますが、レンズ一つで全く違う写真になります(刀関係でカメラに大変詳しい方が沢山おられますので私みたいな者ががブログに書くのも恥ずかしいのですが・・・)。 
まぁ当り前なのですが、意外に知らない人も多く、私もこう言うのは苦手で全然覚えられません(泣)
古いペンタックスのフイルムカメラ(標準レンズ付き)とSIGMAの50mmマクロ(ペンタックス用)、タムロンの100-300(ペンタックス用)、ミノルタのフィルムカメラと70-210レンズ、Tokinaの超広角レンズ、以上6点とタムロンの90mmマクロを交換しました。
レンズは高くてなかなか手が出ないので、使えなくて眠って居る品と交換と言う事で誠に嬉しい!
私は本当にカメラテクはゼロなので露出とか色々触れませんし、ほぼカメラにおまかせであとはレンズの特性に頼るのみです。(ブログは携帯画像も多いですけど・・)
マクロでは何を撮りたいと具体的に無かったのですが、刀に使えるはずだとただただ思っていたのです。
で、ちょっと撮ってみましたが、んん・・・。 

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いずれも中途半端で・・・。必要無かったかなぁ。
とりあえず動画で使える事を期待します。
過去にブログで使った写真だと、↓これなんかは望遠です。望遠と言っても大したレンズではないのでこんなしょぼい月ですが、これでもかなり苦労して撮りました(泣)
画像「今夜は」
↓これらは広角。 広角じゃないとこういう感じは無理です。
画像 映りの画像2

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わずかな時間ですが

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連休で
画像障子を
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卒製

↓一番好きなのが50mmでF1.4の大変明るいレンズ。
画像「炎」
画像「砥石を」
レンズには明るさと言うのが有るんですが、私みたいに全くのカメラまかせでしか撮れない人は明るさが特に重要で、F1.4(この数値で明るさが変わる)と言う明るさが有れば、暗い場所でもパシャリと撮るだけで手振れの失敗や被写体の動きによる失敗が出難い。また、刀の地肌の写りもまったく変わります。
因みに、田中貞豊刀匠の動画もこのレンズで撮っています。



ダイヤ砥石で

刃艶スリ用にダイヤモンド砥石を購入。
新品はよくおりる。
確か以前、ダイヤモンド砥石で刃艶を作ったがもう少し荒いのが有ればいいのに・・と書いたと思いますが、単に使い古した物だったのでおりが悪かっただけかも知れません。
本日は快調快調。

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近々非常に焼きの高い刀の刃取りをしますので私の持っている刃艶の中でも最強の部類に入る艶を準備。
画像の様に板にくっつけて擦れば指状に凹む事も有りませんし、何より数倍短時間で擦れる。

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こう言う簡単な事って意外と思いつかないもので、私も大変お世話になって居る大工さんから教えて頂くまで普通に手で擦っていました。
荒い砥石で擦る時などは砥面が全く崩れないので特に有効です。
しかし刃艶は見た目で良否は分かりませんねぇ・・。
この刃艶も良い物になどとても見えません。



また研ぎの話ですが

 ホームページをやっておりますと、研磨に御興味を持たれない方が多い事はよく分かるのですが、そこをあえてまた研磨の話で・・。
昨日書いた上手な研ぎを今日も見た。
この手の研ぎを過去に見たと書きましたが、同じ研ぎかは不明ですが、何度か近い物を見た事が有る。
文殊包守(10年ほど前)、銘は失念しましたが在銘男薙刀(15年ほど前)、無名脇指で宇多の極め(7年ほど前)。
おそらくいずれも関西の研ぎ。
10~20年以上前の研磨コンクールのレベルは非常に高かったのだと感じます。
しかしそこに出してこない凄腕の研師が居た・・。
 今月初めに30代前半研師の研ぎを拝見した。
こういう仕事が出来る若手研師が生まれて居るのです。
何分も何分も粗探しをしようとしたが見つけられず・・。(あえて言えばまじめ過ぎる研ぎとでも言うのでしょうか・・・。批評出来る立場ではありませんが私の感想です。)
こういう仕事はそうそう無いですよ・・。 昨日今日と見た研ぎでも良い所を見ず粗探しをすればいくらでもありますから。 
研師が粗を見つけられない仕事。
どれだけ時間が掛かり、どれだけ気持ちが入って居るか・・・・・・・。
同業とはこういうものです。 
粗探しから入るのが研師の悪い癖です。 
それでも悪い所を見つけられないのですから若手地方研師にも凄い人が居るのです。
自分の仕事を粗探しから入る研師に見られたらどうするか・・・。
これがまた難しい(笑)
精進精進。



研ぎをみた

今日は研ぎ場で上手な研ぎを見た。
いつ頃の誰の研ぎかは分からない。
刀は新刀で大互の目。
非常に手慣れた仕事。おそらく業者仕事ではなかろうか。
刃肉と地肉のバランスが絶妙。
鎬地の平面度が凄いのですが、この様に見える研ぎは単に正確に平面だからそう見えるわけでは無い。
棟の平面や各角、肌の出し方と磨きの精度が重要なのでしょう。
刃取りの大胆さと手際の良さは才能なのか経験なのか…。
使用して居る艶類も素晴らしい。
おそらく50代始め当時のお仕事か、などと勝手に想像します。
実力の70%くらいの力でさささっと研ぎ上げたのでは。
誰かはわかりませんが、この研ぎは2、3振り見た事が有ります。
コンクールでは見ませんが、高い技術を持った研ぎ師だと思います。
こう言う仕事に憧れる。



刀鍛冶になりたい

今日は刀鍛冶志望の高校生が来ました。
今までそう言う人を色々見ましたがこの人はちょっと違う・・。
毎日毎日刀を研いで居るだけのおっさんの感じる事なのであてにならないかも知れませんが、ちょっと光る物を感じてしまった。
こう言う若者を沢山見ている面接官に聞いてみたい。 
そんな人はざらに居るよと言うのでしょうか・・?!
そもそも企業はこういう人は求めないのか。



棟の鑑賞

物打の刃先にそっと袱紗を当て、茎を耳の後ろまで上げ、棟先に目を近づけ、白熱灯の光りで透かしてみて下さい。(刃先に限らず棟や平地でもそうですが、袱紗を引っ掛けそうな小傷などに注意して下さい)
研師は棟先の鑑賞を前提に、棟先の帽子の返り部分にまでしっかりと内曇を効かせています。
硬い刀などは、棟先に内曇を当てる時には注意が必要で、強く当て過ぎると切っ先を欠く場合も有ります。
そう言う刀の時は力を掛けられませんので棟先の焼きに内曇を効かせる為に数時間を要します。
内曇工程だけでも結構な時間を掛ける訳ですから、それまでの工程も含めると棟先の研磨だけでも相当な時間を費やして居るのです。
こう言う事を知っていると鑑賞時棟先に白熱灯の光りを当てじっくりと見て、内曇が効いて居ない、棟の頂点寄りや棟角寄りに荒砥の目が残って居るなぁ・・など研師”あら”を見つけ、ほくそ笑む事もちょっとした楽しみかも・・。
姿の面でも棟先や棟区は重要です。
棟先の反りの維持や棟区の踏ん張り、こう言う部分に気を抜かないのが刀の凄いところです。
茎だけを持ってポカンと見ていたのではこう言う部分は見えてきません。
棟焼きを特長とする事でよく上げられるのが来一派です。
鑑定時どの刀工か迷う場合、棟焼きを見て”来”と入札する事も有ると思います。
本部講師も解説で、来の棟焼きは棟角では無く庵の頂点の部分に入る場合が多い事をいつも言われますが、棟焼きにもこの様に特長が出ている訳です。
また、棟焼きは単なる土落ちで、失敗の場合も有ると思われますが、意図して焼いた物も多数有ります。
色々な理由が有ると思いますが、棟焼きにより反りの調節をした物や映りを出す為に焼いた物などがそれでしょう。
研磨で棟を針で磨く時にも棟焼きには注意をはらいます。
意図しないと思われる場合は普通に磨き潰してしまいますが、意図していると判断する場合は磨き潰してしまわずに、
普通に焼き刃を鑑賞しているのと同等な光りを放ち鑑賞出来る様に、焼き部だけを潰さず全体に磨きをかけます。
これなども非常に手間が掛かるものですが、研師は皆そうしています。

画像

(画像は棟ではなく鎬地ですが上記の例)
刀工が反りの調整や不要な棟焼きを、焼いた銅で熱して消す事はよくありますが、入念に研磨された棟を鑑賞するとその痕跡を発見する事があります。
匂い口は無くなっておりますが、黒く焼きの形が残り、微妙に凹凸が残った物がそれです。 
こう言う部分を発見すると作刀の工程が思い浮かび、鑑賞にも深みが増すのではないでしょうか。
棟先の返りにもどりますが、ここにも情報があります。
例えば棟先の左右の面(表裏の面)で返りの焼きの止まり方が揃う物、揃わない物がありますが、ある講師の解説で三善長道の返りは表裏で必ず揃うと聞いた事があります。
こう言うのも鑑定のポイントですね。
返りの焼きが深い物の棟先に朽ち込みが有る場合など、荒砥で押して除去する事になりますが、棟ではなく通常の焼き刃が研ぎ減りにより、刃先から細るのではなく焼き頭部分から低くなって行くのと同じ原理で、棟の”面”の焼きが弱まり庵の頂点と棟角を残し、尖り帽子状になる事が有ります(焼き入れ当初からの場合も有りますので要注意)。 
こう言う現象も、棟のうつむき気味の刀には発見出来るかも知れません。その場合、出来た当初からのうつむきではなく、研ぎでうつむいた事が分かります。
また、研師がこう言う事を書いたらダメかも知れませんが、帽子の繕いを見破る決め手となる可能性も有ります。
帽子の焼きは返りまでぴっちりと有るのに棟先を光りに透かすと焼きが全く無い・・・。
ざっと書きましたが、棟を丁寧に鑑賞するだけでも色々見えて来ます。
それが刀。



連絡記事その後

お騒がせして申し訳ありませんでした。
その後無事連絡が取れました。
ありがとうございました。
玉置城二