林原美術館へ

少し前に「今、林原の展示は凄い!」っとお教え頂きまして凄く凄く、凄く凄く興味が有りました。
そしてこの度、いつも大変お世話になっている方よりお誘いを頂き、連れて行って頂きました!
本当に遠い道のりをありがとうございました。
林原美術館にて、「平成22年10月3日(日)~11月23日(火)」まで、「林原美術館の国宝と重要文化財」を開催しております。
展示は国宝と重文です。
展示数は17振りと多くは無いのですが、一日で見る様なレベルではないと思います。
一週間毎日通っても足りないんでしょうね。
備前物が中心なのですが、好みは大きく分かれると思います。
古備前。一文字。長船。古青江。古三原。正宗と言う感じで。
あと何日か見ないとわかりませんが、今日の時点では重文の古備前正恒の小太刀と、重文の古青江正恒の太刀が好きでした。
茎に関しては備前国長船住左近将監長光造の国宝じゃない方、正応年紀で重文太刀の鮮明な銘が好きです。
そしてまたあらためて相州の極め物に興味を惹かれ、「九鬼正宗」をもうあと35cm近づいてゆっくり見てみたいと思いました。
 多分続きはまた。



平成22年10月17日 刀剣入札鑑定会

 一号 短刀
七寸五分ほどか。 重ね薄めで三つ棟。
腰で少し反り、一番先でうつむく。
刃寄りを残しほぼ全面に映る(光りは弱い)。
匂い出来の中直刃。 フクラで半分以下に細くなり、帽子で戻る。 結果姿は枯れる
軽く尖りかげんの帽子。 二重刃風に沸え付く。
 左か来か迷う。  映りを沸え映りと言う事にして、来国光と入札。
 
 二号 短刀
八寸ほどか。 重ね薄めで三つ棟。
僅かに反る。
地沸えが付いて地景も見える。 杢有り。
小沸え出来の細直刃。 腰辺りからフクラまで淡く二重刃。
帽子丸く、返りは固く止まる。
表裏に護摩箸。
白鞘の柄振る。
 粟田口国吉と入札。
 三号 太刀
踏ん張り無く細身。  磨上げて茎尻に銘か。
全身に異様なほど鮮明な乱れ映り。 鎬地にまでもはっきりと現れる。
直刃調で、刃中丁子など大変良く働くも、かなり沈む刃。 ハバキ元と横手付近は細くなり、元は若干潤む。
直ぐに少したるみ加減に浅く返る帽子。
 出来から古一文字と思う。 諸所の特徴から、3年前の佐野美術館での一文字展で見たあの太刀ではなかろうか・・。    古一文字宗吉と入札。
 四号 刀(太刀かも。ハバキは太刀ハバキ)
少し長め。 二尺四寸ほどか。 
腰より僅か上辺りは強めで先は浅い反り。いささか整わないのではと感じる。
板目。 
細目の直刃で足がよく入る。
帽子少し一文字風に大丸。
樋、草の倶利伽羅、梵字、蓮台などの彫り。
中ほどより先に目立たぬ棟焼き多数。 
綺麗な細直刃でこれほど棟を焼くと言う事は、反りも完全に操作しきって居るでしょうからこの反りを整わないと思うのはこの刀工に対して失礼な見方なのかも知れません・・・。
 全く深く考えるまでも無く、応永信国と入札。
 五号 刀
少し短く感じ、二尺三寸弱か。 反り浅。
中鋒延びる。 
良く詰む地鉄。
湾れ調で大変良く働き、匂い口深く明るい。
帽子こだわらず。
ハバキ上で丸く止める樋。 
 肥前忠吉初代と入札。
 おお・・今回は100点満点の予感。。
 
  イヤ
  イヤ
  当
  イヤ
  当
んん・・。 そうですかそうですか・・と言う感じです。
一号はわかりますが二号がイヤとはダメージが大きいです。
名品刀絵圖聚成20・21頁。 粟田口国吉の短刀押形を多数並べて解説している場面と今回の二号短刀が完全にリンクして、即決だったのですが。
 一号  最初の別候補、左と入札。
 二号  そうかそうか。このフクラ、この帽子、この地鉄、振った白鞘(振袖茎)。 延寿国泰と入札。
 四号  一の札は安易な自信で行ってしまいましたが、ちゃんと考えると末相州なのかその他なのかで分からなく      なりました。  匂い出来ですが良い刃なので宇多国宗と入札。
  当
  イヤ
  当
  イヤ
  当
 一の札でこう行かないとダメなのでしょうか・・・。 二号 新藤五国光。 四号 相州綱廣と入札。
  
  当
  当
  当
  当
  当
 一号 短刀  左
 
 二号 短刀  国光(新藤五)
 
 三号 太刀  宗吉(古一文字)
 四号 太刀  相州住綱廣
 五号 刀    肥前国忠吉
一号短刀は、腰で反り、先でうつむいています。
二号短刀は、全体に僅かに反っています。
昨年の佐野美術館、短刀の美 鉄の煌きを思い出しました。(見に行きませんでしたが図録を買いました)
  
  曲線の妙 「(前略)~短刀の名手三人の作品を正確に物差しにあててみる。最も肝要なのは棟の曲線で、区より中ほどにかけてわずかに反り、鋒に近いところで内反りとなる。この微妙な逆S字曲線が短刀の品位を保っている。~(後略)」
 下地研磨の時、全ての部位に対し意識を高めて行なうのですが、とりわけ短刀の棟に関しては注意を必要とします。
とは言え結局、線と面をどうするかと言うだけなのですが、目的意識(完成予想図)の違いで全く違う結果になります。
今回の一号短刀は、過去の研磨で棟角の線を重視された経緯が有り、今はこの様な状態に納まって居るのだと思います。
二号短刀は、庵の頂点を重視して来た結果(三つ棟ですが)、現在の反りを維持して居るのではないかと思います。
低い意識で短刀の下地を行なってしまうと、腰付近に反りを付けやすく(区をけったりも)、そして鋒付近を伏しごころにしてしまいます。
反りの見方一つとっても色々ありますね。

画像


川崎晶平刀匠

川崎晶平刀匠のブログ、「テノウチ、ムネノウチ」と、「晶平鍛刀道場」をリンクさせて頂きました。
長野県坂城町の刀職研修で川崎刀匠が刀匠講師実演をされていました。
私は研師ですが斜め後ろから、とある技を盗もうと見ておりました・・。
技とは修練が形となったもの。 
あの技を見て、真似しようと思うにはもっと若くて怖いもの知らずじゃないと無理です。
私はすでに別ルートを探そうとする人になってしまっている事がわかりました。



長光を

本日は研ぎ場にて在銘長光を拝見致しました。
大変良い御刀です。
鞘を掃った第一印象は「枯れた研ぎ」です。
地艶は少し柔らかめで薄く小さい物で上げています。
拭いはおそらく鉄肌のみ、弱く短時間で差しています。
刃取りは極薄の刃艶でかなり短時間で終えています。
研磨について色々と考えさせられる長光です。
念のためですが「枯れた」と言うのは良い意味です。
例えばニューヨークの初めて行った場末のジャズクラブで突如始まる老ジャズプレイヤーのギグの様な。
(私は近所の居酒屋くらいしか行きませんけど・・。)
こういう研ぎはかなり好きです。
しかし今やって良いものか(今の私が)、また目指すべき所なのか、考えていたらわからなくなります。
この刀だからOKなのか、この人の研ぎだからOKなのか等も(どなたの研磨か知りません。古研ぎです)。
30代で枯れた研ぎをしたいなどは間違っているか。
もしやって行くとしたらキャラの確立にかなり力を注ぎそして相当ストイックに生きないと無理でしょう。