相伝2口

以前研磨した有名な相州伝大磨上げが慶長に見え、いまいち整理が付かず。。
しかし帽子がそれ以外には無く、やはり極め通りと考えるべきなのか。
そんな中、相州伝の本国物ではない刀。初見は「やはり多いよなぁ若い物が・・・」
しかしこの極めのいつもの作風よりも少し出入りが大きく、茎から腰の反りが美しく、何か惹かれるものがあり全身押形の準備を。
照明を整えて再見すると、映りが凄過ぎた。
非常に上手いナチュラルな差し込み古研ぎ。刃や映りを極度に際立たせる臭い差し込み研ぎがもてはやされるのはやはり間違っている。
備前の乱れた映りと同状に全身に沸え映り。しかし相伝備前ではないと思う。この極めをした人は凄いと感心する。
そう言えば図譜には大徳川家伝来とあったので古い鞘書か折紙があるのかもしれない。

別の相州伝の本国以外の刀。全身の経験が無かったので残しておきたく。
久々にこんなにも上手く描けない刀。それ程苦手ではない柾気の働きが多い出来なのに何故に。。
何度も途中廃棄を考えるもとりあえず数日継続中。この工の最近の図譜を見て真似をし余計酷くなるし。
廃棄を避けたいのは輪郭や茎に3時間掛かっている、ただそれだけ。
刀鍛冶さんが焼き入れで失敗した時の喪失感は計り知れないと思う。
新たに描き直したとしても同じ事になる気がしてならず。
とりあえず続ける。



手引きの動画をみた

ネットで手引きの動画を見ました!ちょっと感激です。

この大きく重い砥石切断用鋸の両端を二人で持ち、交互に引いて切ります。
10月14日は”砥石の日”なんです(語呂合わせ)。京都の「みやこめっせ」で毎年イベントが行われていますが、その時の動画でしょうか。
それを見て初めて知ったのですが、この鋸の真ん中に有る刃、これはかなり研ぎ減って短くなった状態なんですね。
動画の鋸の刃はこの2~3倍の長さがありました。
砥石を一本切り出すのに4辺切らなければなりません。その間この刃を一体何回研ぐんだろうか・・・、そんな事を思っていましたが、長い刃を見てより実感が湧きました。本当に手間の掛かる作業です。
過去ブログ↓
鋸の引き跡 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)



10月例会入札鑑定

一昨日は京都府支部の入札鑑定会でした。
一ヵ月過ぎるのが早過ぎてブログが入札鑑定の事ばかりですが。。

1号 太刀だと思う。
輪反りで少し反り強め。踏ん張りがあり、鎺付近に焼き出し映りが見え、生ぶだと思う。
板目が流れ潤う良い肌だが、白い筋が多め。平肉を良く残したタイプの研ぎが行われて来ている。照る強めの拭い。
腰付近には鎌倉には行かない互の目。全体に小模様。
典型的小反だと思うも個銘は全く分からず。。多分、1度や2度でなくもっと何度も出ている太刀ですよねぇこれ。
なんでしょか。。分からない時は代表工で。
小反秀光と入札。

2号 短刀
8寸台で無反り(腰に極僅かに反り)、非常に良い姿。三ッ棟。表に小さく腰樋。裏同じく腰樋に添え樋。
大板目が流れ、ほぼ柾目。焼き出しに綺麗な互の目をニつ、一つ湾れてもう一つ互の目、上は直ぐ刃。
帽子は綺麗な小丸だが微妙に独特な揺れがあり、それが味わい深く感じる。匂い口は良く締まるも適度な深さがあり、密度が濃く明るい。
直ぐ刃部が柾目に絡み上品に働く。
室町期の大変良い短刀。この雰囲気が私の中の正真の基準です。
千子正真と入札。

3号 短刀
2号と同じくらいの大きさで、先少し内反る。刃線も準ずる雰囲気。身幅は若干狭い。
板目が肌立ち気味。身幅に対し高めの互の目。二個セットもある。焼き頭に沸え凝る部分あり。返りが深い。
この短刀は何度も出ていて毎回間違えるか迷うやつですな、多分。
ぱっと見は美濃だが実は末備前、確かそのはず・・・。
長船勝光と入札。

4号 脇差
平造り。反りが深い。重ね厚め。全体に詰み気味な地鉄。焼き頭に黒く荒い砂流し。
大乱れで極僅かに簾風の箇所あり。
丹波だと思うが何代でしょか。詰んでいて荒い沸えで、代が下がる気もするが、こんなに控えめな簾は初代しか知らないし。。
代別は書かずに出しちゃいます。
丹波守吉道と入札。

5号 刀
身幅広く重ね厚い。反り尋常。鋒フクラかなり張る。鎺上で丸留めの棒樋。
地肌は詰み気味だが肌立つ。
広目の直刃で働く。刃中に葉が多数あり、清光風。帽子が深い。
一見古刀。でも新刀にも見え。。重い刀だが、清光にはもっと重い物に出会う事が度々あり、若干迷う。
しかしやはり匂い口の沸えの発散具合が古刀には見えない。
そう言えば・・・、若い備前物で普段は乱れ刃ばかりだが珍しく直刃、以前そんな刀が出たような。。なんだったか。
新々刀横山にこの地鉄があるとも思えず・・・。新刀祐定ならありですな。でも誰か分からん。。
新刀祐定と入札。

準同然

イヤ

3号、そうそう、末備前風もあり実は素直に美濃、そのパターン。銘を思い出した。
兼常と入札。

準同



 1号 太刀 銘 備州長船吉次 
         永徳三年十一月日
 2号 短刀 銘 正真(千子)
 3号 短刀 銘 兼常
 4号 脇差 銘 丹波守吉道
 5号  刀 銘 備州長船住上野大掾祐定
         正徳六年二月日

2号正真、イメージでは茎も真っ直ぐでしたが、柄を抜くと茎に反りがあり、全体の姿が素晴らしい。銘の付近を刃側から二本指でつまみ、しばらく眺めたい。



平安後期の

平安後期、古京物。焼き頭に沿う湯走りが二重刃・三重刃風に働きます。
三日月宗近は三重刃になっていて(四重にもなっていませんでしたっけ?記憶違いか・・・)、それが研ぎ減りにより途切れ途切れとなっていましたが、丹波の簾刃の発想の元がそこにある気がします。