ちょっと苦しんだ

内曇。
久々にちょっと苦しみました。
普通ならば使える石で、どうしてもヒケが入る。
大磨上無銘で鎌倉期の刀。
明るく冴えがあるが非常に軟らかい。
どう軟らかいかは残念ながら伝え難く研師にしか分からないところですが、過去にこんな記事を書いた事がありました。
http://kyoto-katana.at.webry.info/201109/article_11.html

今回の刀、なぜヒケが入るのか、原因が分かりました。
柾や板目が大変美しい刀です。
研ぎ上がった状態では全く確認出来ないのですが、内曇では米粒から小豆ほどの大きさの黒く澄んだ鉄が全身に散らばっています。 そういう部分は周りより軟らかい場合が多く、普通は微妙に一段下がって居るのですが、今回は周りよりほんの少し硬いため、少しだけ高くなっています。 しかし錵の塊ではなく、地景の塊が近いでしょうか。
その微妙な段差からヒケが入るようです。

過去には南紀や今日の刀と同国の刀にそれがありました。
そう言えば、ヒケの入り方や、曇りでザクザクに肌が出てしまう所などもそっくりです。 そして地艶でスーっと引いてくれる。

どうしてもヒケが入ってしまうので曇りを色々使った。
曇り
「刀に合う砥石を使う」という話は刀研ぎではよく使われますが、今回のようにヒケが入るから石を変えると言うのはちょっと次元の低い事で、「刀に合う砥石を使う」とは本来もっと高度な技術の話です。
にしても、ヒケに苦しむ時はあるもので、特に名刀の時などは研師が刀に合った石を選ぶというよりも、刀が砥石を指定して来ている様に感じる時がある。
「KATANA」の何巻かにもそんなシーンが出てきましたが、正にそんな感じです。



丁子刃の下書きを行う

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大和物の全身は気合でガツンと仕上げた。

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丁子の続きに入る。
今日は佩き裏の下書きを。



大和物を

度々ブログに書きますが、大和物が好きです。
とくに野致を求めているわけでもありません。 なんでしょかこの魅力は。
渋い味わいと言ってしまうと簡単に済んでしまっておもしろくないのですが、それが一番正しい表現かも知れません。

当麻と龍門を拝見。
なんですかこの凄さは。
勝手な想像ですが、バーッとガーッて造ってたらこんなん出来てたんでしょうか・・・。
なんだかそんな気もするんです。 それで、100年以上経って細かい天然砥を当ててみたら、おいおいなんやこのカッコいい地刃は!と言う感じかなと。
あ、計算された美だったらすみません、南北朝以前の大和鍛冶の皆さん。
大和
先日来描いていた丁子の押形も未完成ですが、時間の都合で別の全身を描きます。
そしてこれも大和物。
これでも二尺四寸あるのですが、未完成の丁子の大きさは圧巻です。