再刃のこと

今まで何本の再刃に出会って来たでしょうか。20本や30本ではない事は確かですが、何本かは不明です。そして再刃と認識せずに出会った再刃刀もかなりの数にのぼるでしょう。もしかしたらそちらの方が多いのかも知れません。。

昨日の再刃短刀、差し表の腰から三分のニをざっくり窓開けしてみました。
地鉄はまだ分かりませんが、再刃で出る事がある嫌らしい錵映りは無く、詰んだ地鉄のようです。
焼き出し部に少々強くて太い地景風の働きが僅かに確認出来ますが、これは再刃で出現する事がある「チリチリした地景」に近い状態です。
刃は直ぐ調の湾れで、匂い口は沈み気味。柾気の働きが強く、古風な焼きです。水影は無し。
この窓開け部分だけを見て”再刃”と判断する人は少ないでしょう。私ももちろん再刃とは気づけないです。(切っ先付近は焼きが入らずです。おそらく差し裏は全体に崩れています)
では茎はというと、黒味が強く乾いており、この茎を見れば再刃と判断できます。やはり茎情報は大事なんです。
さてこの茎、よい鉄味に変える事は出来るのでしょうか。
鑑定書が付いて流通している刀でも、在銘無銘問わず、茎を加工している物は大量にあります。国指定の文化財にも茎を触っているなと思う物に出会う事はしばしば。
茎を触る理由は様々で、悪意の無い物ももちろん。
世の中色々あるわけです。



枯らし

多分15年以上前、拵入り短刀を再刃してもらった事がありました。
結果は切っ先付近の鉄が悪く、その部分は焼きが入らず。
そして反りが変わったため、刀身の三分の二程度までしか鞘に入らなくなりました。
再刃したらどんな地刃になるかを見てみたくお願いしたのですが、研ぐ時間もないのでそのまま忘れ去り・・・。
昨日久々に思い出し探すと研ぎ舟の下の箱から、拵の柄・鞘・刀身が出て来ました。
で拵えに入れてみると、柄も鞘もピッタリ入る状態に。
残留応力を自然に除去する「枯らし」を意図せず15年以上やっていたという事でしょうか。。





無銘南北朝期寸延

無銘の平造り脇差の全身押形を採拓。

刃長33.95㎝
反り0.5㎝
元幅31.8(32.8)㎜
元重4.8㎜
茎最厚5.4㎜
248g
平造、三つ棟。
重ね薄く、身幅広く、寸が延び、少し反り、ふくら先枯れて鋭い。
生ぶ茎、茎極短く、元来の無銘。
茎尻栗尻、目釘穴2、鑢目切り、棟・刃は角(鑢不明)。
地鉄、板目詰んで杢目混じり。細かく錵付き、地斑映りごごろあり。
刃文、互の目連れて中直ぐ調、フクラ先から深くなる。小錵付き明るく、砂流しかかり金筋入る。
帽子先深く丸く返る。

初見はいつもの癖で少し若く見る。互の目は室町に見てしまう癖が。。互の目といっても谷が広いものではなく、連れて焼いていて、谷部には小錵が詰まっています。
しかし極端に短い茎や薄い重ね、地鉄の位から考えて南北を下る事は絶対にないでしょう。
この様な明確に南北と分かる造り込みにこの互の目調を焼いてくれていると自分の癖を修正出来てありがたい。
応永の丸い互の目もどうしてももう少し下げて見る癖があるんです。悪い癖。

茎最厚が5.4で元重が4.8。数値で見るとそれなりに減っている印象を持つかも知れませんが、この程度の数値差の現物をみると、全く減っていない刀身と感じるものです。で、帽子が大変深いわけですが、時代が若いから深いのではなく、南北だが減っていないから深い。
これも注意しなければ、古くてこんなに深い物はないでしょと誤認します。

さてこの刀はなんでしょうか。
単純に考えると・・・互の目感が強過ぎるが、中島来か。地鉄の位はそういうランクです。
無銘は面白いですね。




再刃

再刃と判定される刀は減っていると感じます。昔の判定は厳しかった。。
昔は良かったとか苦労自慢とかその類の事を言うつもりはないですが、昔は厳しかった。

以前某所で昭和に再刃と判定された在銘の太刀を見ました。
が、私には再刃に見えず。
なんでも再刃だという私でも、昭和の判定に比べるとかなり緩いわけです。
再刃判定は慎重に行わなければならない事は心得ています。「なんでも再刃だという」がどのような物を指すか、説明は難しいですが、おそらく想像される物とは違う事が多いでしょう。
今後再刃判定が出来る若者って出て来るのでしょうか・・。
入札鑑定すら敬遠される世界になっているそうなので、もうダメかも知れません。