山浦系の

先日の真雄の小刀に続き兼乕短刀。親子です。

短刀 銘 升龍軒兼乕
     枩代臣
升龍軒銘は非常に珍しく現存品はほぼ確認されていない貴重銘だそうです。
関西に居るからか私の環境がそうなのか、山浦系の作品に出会うことは滅多にないのですが、色々御縁を頂き最近だと清麿×2,行宗、升龍軒銘以外の兼乕×2等の研磨や押形採拓をさせて頂きました。また準備が出来ましたらUPさせて頂きたいと思います。
京都支部鑑定に山浦系が出た事はほぼありませんのでやはり関西には少ないのかもしれません。

刃文にパステルは一切使わないと決めてしばらくたちます。どの押形が最後だったか・・・。
完全に墨だけで描き切るほうが断然時間が掛かりますが、やはり墨だけの方が好きです。
(写真に撮ると刃文がかなり濃く写りましたが実際はもう少し薄い色に仕上げています)



小刀の押形採拓2

これで諦めたらダメでしょという事で2枚目を採拓。
久々にカーボンを使い再チャレンジしました。

石華墨
カーボン

色むらを抑えるのが難しいのと長期保管で変色する事もあり、長らくカーボン紙での採拓はしていませんでした。
右のカーボンの方が銘が断然よく見えます。(鎬を越えている箇所は銘の一部が鎬を越えているからです)



小刀の押形採拓

小刀の押形を採拓する事に。考えてみれば小刀は初めてです。
重ねが無いので通常の楔形の台では輪郭の採拓は無理と思われ、シリコンで刀身に完全に隠れる台を作り刀身を浮かせます。

研ぎ崩れて鎬が無く銘も薄いです。石華墨での採拓ではおそらく銘は出ないでしょう。
インクなら出るでしょうか?!インク採拓の経験が無くちょっと分かりません。
小刀は茎の棟区部分が二段構造になっているのでここをどう摺り出すか・・・。
小刀の押形を書籍で確認してもやはり茎棟区部が摺れないので空白になっています。なんとか摺り出したいですが。。

銘が有る事はなんとか確認出来ますが、かなり厳しいですねぇ。。
茎の鎬が高いので重りを外し紙を平面にすると茎幅が実際より広くなってしまいます。
普通の鎬造りや菖蒲造り等は茎から上身へ鎬が通っており、実際の身幅より押形の方が広くなったとしても刀身全体にその現象が起こるので見た目の違和感はありません。しかし小刀は茎だけに鎬があり、押形の棟角の線にずれが生じてしまいます。
二段になった区を摺り出したうえに幅が広くなってしまう現象を解決する事は無理そうで、この辺は曖昧に処理するしかないですね。



雲林院短刀

少し前ですが雲林院(うじい)の両刃短刀を拝見しました。
2012年の支部鑑定に雲林院包長の両刃短刀が出た事がありそれと同一かと思いましたが、事前に刃長をお聞きすると7寸程と小振りとの事。
確か鑑定に出た包長は大振りだったイメージで。。
結局それは私の完全な記憶違い。まぎれもなく当時支部鑑定で拝見した雲林院包長の両刃短刀でした。

銘はよく切れた細鏨で勢州雲林院住包長。裏年紀は文亀三年八月日。
長年のお手入れが行き届き鉄味抜群の茎。在銘品の良さを改めて感じさせてくれます。
平成24年 京都支部新年恒例一本入札 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
当時の入札鑑定記にも書いていますが、杢目と柾目が美しく、室町期の最上質の鉄です。
所謂本国物ではありませんが、皆に大切にされて来た事がよくわかる清々しい名品でした。