「悠久の美・日本刀展ー近畿で活躍する刀匠たちー」「美術日本刀展 ー紀州刀工を中心としてー」

和歌山県の九度山・真田ミュージアムにて下記の二つの展覧会が開催されます。

全日本刀匠会近畿地方支部展 「悠久の美・日本刀展ー近畿で活躍する刀匠たちー」
日本美術刀剣保存協会和歌山県支部展 「美術日本刀展 ー紀州刀工を中心としてー」

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「悠久の美・日本刀展ー近畿で活躍する刀匠たちー」 令和2年7月29~8月30日
「美術日本刀展 ー紀州刀工を中心としてー」     令和2年9月2日~10月4日

新聞報道
九度山・真田ミュージアム
日本美術刀剣保存協会和歌山県支部



播磨國住高見國一作之

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脇差、銘 播磨國住高見國一作之
守護順真 皇紀二千六百七十七年 鶯鳴
彫物 夫婦龍
梵字(八大龍王真言)

39回目は新作刀、兵庫県の高見國一刀匠の作品です。(研磨は私ではありませんが、以前押形を採らせて頂きました)
身幅広め、重ね厚く、中鋒延びる造り込み。地は映り立ち、焼き頭の高低を抑え、刃中の働きが豊富な刃が焼かれています。
拭いの研磨力に頼らず本来の鉄色を生かした上品な研磨もあいまって、古作の助真や長重などを想起させる作品です。
彫物は装剣金工木下宗憲師。表に夫婦龍、裏に八大龍王真言を配し、「日本刀文化振興協会主催 第10回新作日本刀研磨外装刀職技術展覧会」の刀身彫刻部門に於いて、特賞の”公益財団法人日本刀文化振興協会会長賞”を受賞されています。

押形の採拓で特に時間がかかるのが刀身彫刻です。
彫刻の上から全体をザっと擦って写した押形も沢山ありますが、あまり雑だと美しくありません。
何より、彫師が精魂込めて彫り上げた彫物、一本でも多くの線を擦り出す事を意識して採拓を行います。
当初「八大龍王真言」は時間をかけて梵字の線だけを擦り出す採拓を行いました。
しかし彫りの力強さが押形に表れていないと感じ、彫りの外にも範囲を少し広めて擦り、また縁の線も太く仕上げました。
結果彫の力強さも伝わる押形になったのではないかと思っています。



来国光

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太刀、銘 来国光(公益財団法人 黒川古文化研究所蔵)

38回目です。
この太刀は享保名物の鳥飼来国次とともに黒川古文化研究所に寄贈された刀剣類の一つです。
磨上げて茎尻に来国光の三字銘。身幅広く、重ね厚く、平肉豊かに残る頑健な太刀で、押形の帽子の深さからもその様が窺えると思います。
よく詰みながらも部分的な肌立ちを見せ、各所に錵映りが立つ来派特有の地鉄です。
総体に焼き幅広めの刃となり、下半の丁子は二字国俊を思わせます。

公益財団法人 黒川古文化研究所



貞真(古一文字)

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太刀、銘 貞真(古一文字 / 公益財団法人 黒川古文化研究所蔵)

37回目です。
この太刀は享保名物の鳥飼来国次とともに黒川古文化研究所に寄贈された刀剣類の一つです。
福岡一文字の中でも特に古い鎌倉時代初期に活躍したこの派の鍛冶を「古一文字」と称し、則宗、助宗、尚宗、宗吉、貞真ら多くの著名工を輩出しています。
貞真はこの期の太刀としては異例に鋒が延びごころとなり、また古一文字諸工と比べ、映りが目立たない事が特徴とされています。
本作は地鉄の中から現れる映り気が若干見られるものの、元来は映りの目立たぬタイプの地鉄であり、また鋒も延びごころとなるなど、貞真の特徴が顕著な作品です。

公益財団法人 黒川古文化研究所