平成24年3月 刀剣入札鑑定
一号 太刀(と思う)
二尺三寸程度か。 身幅尋常、重ね薄め。 肉はよく残って居る。 狭い棒樋。
全体によく反り先反りも付く。 小ぶりな切っ先。
匂い出来、低い乱れ。数多し。 肌目白多く、映る。
肌を沢山出して、照る拭いを差すタイプの仕上がりになっています。
先まで良く反るので、「先反り=末古刀」と言う教科書的な見方をするとハズレてしまうタイプの刀です。
先まで反っていますが刃線の張りが小反りです。
しかし多分、見た事が無い様な銘が入って居る予感がする・・・。
考えていたら思考停止してしまったので、お隣の方に同然表を見せて頂きました。
小反り成家と入札。
二号 刀
むむ。 これは昨年研場で拝見した御刀に間違いない。
反り浅。重ね厚。強い鉄。 あえて低く、格調高い刃。 極端なまでの三品帽子。
出羽大掾国路と入札。
三号 短刀
兼房乱れ風。 三つ棟(芯面極細)。
この雰囲気、以前拝見した事が有る兼常の乱れ刃に似る気がする。
兼常はそれほど多くを見た経験が無く、「兼常=直刃」のイメージを持っていたのですが乱れも多く有ると知った短刀でした。
これはそれそのものか?!
兼常と入札。
四号 薙刀
新刀型薙刀(巴)。
肥前。
薙刀樋の上も丸。 添える樋の留め上下もさまで崩れず。
下地に手を掛けた上手な研ぎです。
薙刀や冠落しの場合、薙刀樋のチリ部の面と上部鎬地の境界に弧を描く鎬筋が出来ますが、普通に上手に研ぐとバリが出ます。
うまい研師がそれを防ぐ意識で手間を掛けて研ぐとこの薙刀の様になります。
下地の最初の砥石の時点で安易に切らず、安易に流さず絶妙な下地をされて居るのでしょう。
そして磨きの直前まで最終段階を意識した下仕事を行なわなければこの様にソフトでシャープな針仕事は出来ません。大変勉強になりました。
棟は三つ棟。
男薙刀に三つ棟は多いのですが、その場合、芯面は広めが多い。
普通に広めの芯面で研ぐと先ほど書いた、弧を描く鎬筋より上から松葉の張る面までの間の棟の細くなる部分はほぼ平棟になる。
こう成ると、人間の目は腰付近の面よりもその上の平棟を一番広く認識してしまう。
錯視(←クリック)と言うやつです。
昔の仕事はその辺に本当に気を使っている物が多い。
先日支部の先輩からお教え頂いた、江戸期の十手の構造もその辺の微妙なバランスを考慮して造られていました。
薙刀はもともと先が張る造り込みですので棟もあえてその様にして力強さの演出をしているのかも知れない。
出来の方は、多分10年ほど前ですが拝見した肥前廣総の刀に似ています・・・。
しかし、肥前の薙刀を見た時は初代に入れると決めているので、
初代忠吉と入札。
五号 短刀
両刃。 備前出来。
んん、これまたですが、多分10年ほど前に白鞘制作をお受けした備前国銘祐定の両刃ではなかろうか。
この拭いの色は覚えがあります。
長船祐定と入札。
当
当
当
当
当
一号 太刀 備州長船吉次 永徳三年十一月日
二号 刀 出羽大掾藤原国路
三号 短刀 兼常
四号 薙刀 肥前国住武蔵大掾藤原忠廣 寛永六年八月吉日
五号 短刀 備前国住長船祐定作 天正十年八月日