研磨
平成22年7月18日 日刀保京都支部入札鑑定
本日は本部より鑑定刀をお持ち頂きました。
一号 刀
二尺三寸ほど。 中反り。 中切っ先。 大磨上。
重ね尋常。 鎬高。 鎬幅かなり広い。
差し裏平地及び鎬地に柾目立つ。 表は殆ど無し。
強い印象の地鉄。地景良く入るも地沸え見えず。
明るく大変良く働き沸え付く直刃。
物打付近や帽子にかけて大和独特の焼幅。
帽子掃き掛けず僅かに返る。
当麻の典型作だと思います。 当麻に入札。
二号 刀
二尺二寸ほどか。 腰に反り目立ち先伏す感(実際は反っていますが。棟先を研ぎ崩した感じ)。
中切っ先。
肌立つ。 腰に、三つ連なる互の目を三セット。 上は広直刃。
匂い口かなり沈む。 鎬柾。
村正か之定で迷う。 之定に入札。
三号 脇差
一尺八寸ほど。 細く踏ん張り無し。 大磨上と思う。
小切っ先。 二筋樋。
大変細かく詰む鉄。 乱れ映り極めて鮮明。
匂い出来の直刃調子で小互の目に小足。
三作風の帽子。
大変柔らかそうな備前の古い地鉄です。 長光に入札。
四号 刀
二尺五寸ほどか。 重ね尋常身幅広く反り浅。
広く深めの樋。 茎が大きいので軽い。
地詰み涛乱。 匂い口に斑を感じる。
全体に助広ですが、ちょっと入れたくない。 尾崎助隆と入札。
五号 刀
二尺四寸ほどか。 重ね尋常身幅広く反り浅め。
大切っ先。
良く詰み沸える地鉄。
刃沸えも強い。 総体に焼高く複雑な乱れ。
帽子強く沸え表裏共乱れこみ裏は一文字。
伊予掾の出来に見えるが姿が違うと感じる(後で調べると間違っていました)。しかしそうなると誰も居ない。
長船長義と入札。
当り
イヤ
当り
能
時代違いイヤ
二号 こっちですかぁ・・。 村正と入札。
四号 それでも避けて、坂倉言之進照包と入札。
五号 やはりこの出来はこれしか無い。 伊予掾宗次と入札。
当り
当り
当り
能
当り
四号 そして助直に。
当り
当り
当り
同然
当り
一号 大磨上無銘(金象嵌 恐) 当麻
二号 村正
三号 額銘 長光造
四号 津田越前守助廣 延宝九年八月日
五号 肥前国住人伊予掾宗次
以前からブログで度々書いてますが、やはり私は当麻が大好きです。
帰ってから調べてみましたら、伊予掾の帽子はこれが典型だったみたいです。この帽子を見た瞬間に伊予掾に決 めないとダメなんですね。
ふくやま美術館へ
刀職方々よりお誘いを頂き昨日は広島県のふくやま美術館に行ってまいりました。
前日にHPで展示リストを見ましたら、数は13振りと少ないのですが内容はものすごいものです。
幸いその殆どが名品刀絵圖聚成所載でしたので事前に有る程度勉強してから臨みました。
河内一平刀匠、月山貞伸刀匠、研師の関山和進さん、川瀬貞真刀匠、晴れて刀匠免許を取得された浜川刀匠、そして刀匠目指し修行中の能瀬さん、と私。(写真の並びとは別)
展示はまず、古備前正恒から。
そして一文字吉房、則房、備前三郎国宗。
三尺にせまる兼光。 盛景。
会津新藤五、朱判貞宗。
江雪左文字、聚楽(左文字)。
粟田口国清、来国光、中堂来光包。
いつも刀の展覧会拝観後に改めて思い返そうとしても展示の順番や内容などは以外に大して思い出せないものですが、今回は展示順や刀の内容などを鮮明に思い出す事が出来ます。
数が少ないと言う事もありますが、何より本当にものすごい名刀ばかりが揃っていた事が大きいと思いました。
刀匠の方々とご一緒させて頂きましたので鑑賞や研磨方面からの見方では無く、刀の実作者としての見方にほんの少しですが触れる事が出来、大変深い時間を過ごす事が出来ました。
刀とは押形と現物を比べると、押形の方が栄えて見える場合が実はかなり多いものなのですが、今回の刀の殆どは現物の方が圧倒的に良いものばかりです。
展示期間はもうほんの僅かしか有りませんが、見て損は無しです。
図録はすでに完売。すごいですねぇ。
サンプルを見ましたら、刀身の表と裏それぞれ一頁づつを割いて載せられておりました。
図録はただの思い出ではなく展示を補う物で有るべきでしょうから画期的ですね。
昨日は酷い雨の中、大変な長距離の運転本当にお疲れ様でした。
かつて無いほど大変勉強になりました。 ありがとうございました。
