丁子刃に対応出来ず
複雑な丁子刃に対応出来る刃艶が無くなってしまったため、急遽刃艶を作る。
内曇砥のこっぱをタガネで割って行きます。
内曇は層に成った砥石なので、砥石の目に添ってタガネを入れれば有る程度の薄さまで割ることが出来ます。
しかし私は無層の内曇で作った刃艶が好きで、そのコッパが有ればそれを使います。
無層と言うか何なんでしょう、筋だらけで普通は使わない所です。
筋が縦横無尽に走っていて、層が複雑で、薄く割る事は不可能な石です。
それでも何とか割りますが、やはり薄くは割れませんので、時には数センチの厚さの物をゴシゴシと2ミリ程度まで砥石で摩り下ろします。
画像手前はとても綺麗な層を成し、割り易く大変目の詰んだ内曇で、ナルメ用です。
奥は厄介な無層の石で、全く綺麗に割れてくれません。
一時間半磨ってこれだけしか出来ませんでした。
泣けます。
厚い状態にしか割れませんし、硬い筋が多くてなかなか下りてくれません。
普通の砥質ならばこんな筋だらけの刃艶など価値無しと見做され捨てられますが、私にとっては全く違う価値で、10キロの普通のコッパよりも、この筋だらけの刃艶10枚を選びます。
(黄色や焦げ茶色の筋は硬くてヒケだらけになりますので避けて使います。黒や白の筋はOKです)
HP中の「仕上げ工程」に有る濤乱刃風の刃取りはこの手の刃艶を使用しており、刀身両面全ての刃取りに刃艶3枚程度しか使用していません。(割って張ったままの大きな刃艶三枚ではなく、使用の為丸く切った刃艶三枚程度です)
この刃艶はそれほど絶大な力の有る艶です。
同じ手であった場合、質の劣る刃艶を使い一週間かけて頑張って刃取りをした物と、質の良い艶で3日で仕上がった刃取りを比べると、後者の方が良い仕上がりである、と言うのが刃取りです。
それほど刃艶の質が重要なのですが、残念ながら良質な刃艶を確保する事は困難な状況に有ります。
困難ながらもなんとか確保すべく努力しています。