樋を先に掻く

3尺2寸の大太刀研磨。
棒樋が掻かれていますが、平地の樋角(鎬際)に長く焼きが入っています。(断続的ではあるが多数)。
この状態を見ると、焼き入れは樋先(ひせん)じゃなかろうかと想像します。
現代の作刀では焼き入れ後に樋を掻く事が普通かと思いますが、昔は樋先もよくあった事なのか、それとも3尺超えの大太刀だから特別か。
昔はセンで掻くだけでなく、赤めた刀身に鉄の丸棒を当て、打ち叩いて樋を作ったと何かの本で読んだ事がありますが、ちょっと想像つかんレベルの仕事です。槍も金型に打ち込んで造ったとか。同じ刀職でも全然想像つかない世界で。
そういえば、量産しているところでは樋もセンではなく回転する円盤砥石にフリーハンドで刀を当てて樋を掻くといいますが、それはそれでとんでもなく凄い技術です。熟練技というやつですね。
しかし時に熟練技は安売りされるといいますか、安売りのためにその技が生まれるというか。
研磨もそうですが、練度が低く下手で遅いだけなのに、日数が掛かる仕事だからと高額な料金になっている事も多く、その辺の見極めは難しいですね。
熟練の職人が最高の仕事を最速で行っても大変な日数を要する、それが刀剣の研磨だと思っていますが、そんな時代も過去の物になる気がしています。



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