日刀保京都府支部 入札鑑定会

2月例会、今回は私が担当ということで、鑑定刀は新刀と新々刀、鑑賞刀に関の兼宜をお借りし並べさせていただきました。

鑑定刀

一号  刀 銘 肥前国住陸奥守忠吉

     刃長 二尺三寸一分 反り 七分
     元幅31.2 (32.1) 先幅22.4 元重6.5(6.9)

二号  刀 銘 長曽祢興里 真鍛作

     刃長 二尺三寸六分 反り 五分三厘
     元幅29.5(30.3) 先幅20.1 元重7.5(7.7)

三号  刀 銘 井上真改
       (菊紋)延宝四年八月日

     刃長 二尺三寸五分 反り 五分
     元幅30.3(31.5) 先幅19.1 元重6.7(6.7)

四号  刀 銘 越後守包貞(二代)

     刃長 二尺四寸二分 反り 四分五厘
     元幅29.8(31.6) 先幅21.7 元重6.6(6.8)

五号  刀 銘 粟田口近江守忠綱 彫同作(二代)
        宝永五年八月日

     刃長 二尺四分   反り 九分
     (彫物 表:倶利伽羅 裏:梵字・梅)

六号 脇差 銘 荘司美濃介藤直胤(花押)(刻印 宮)
        嘉永二年二月吉日

     刃長 一尺三寸二分 反り 二分
     (彫物 表:樋中に草の倶利伽羅 裏:梵字・護摩箸・蓮台)

鑑賞刀

七号  刀 銘 兼宣作(徳永)

     刃長 二尺一寸六分 反り 八分二厘
 
 
 
1~4号は寛文頃の刀です。
同じ寛文でも肥前刀は一般的な寛文新刀スタイルとは少々違う姿の刀が多くあります。

肥前刀の反りが気になり調べてみました。

初代忠吉の反り、平均五分三厘(サンプル数88口) 二代の平均五分七厘(サンプル数63口) 三代の平均五分七厘(サンプル数50口)

平均値を調べる事がどれ程の意味があるかは少々疑問ではありますが、典型的な寛文新刀の反りを五分程度とすると、やはり少々深い反りです。
(初代忠吉は慶長新刀スタイルの刀があるため反りの平均値は下がります)
数値で表すと僅か数ミリの違いですが、この数値が姿に反映されると違いははっきりと表れます。姿とは微妙な物です。

鑑賞刀としてお借りした兼宣は、鎬の高い造り込み。
「差し込み研ぎ」の名人といわれた山田英研師による差し込み研ぎの御刀です。
長期にわたり打ち粉で丁寧に手入れされて来ており、一見肌立って見えますが子細にみると非常に繊細な流れ肌で、美濃映りが鮮明に現れています。

この度も大変貴重な品々を支部例会のためにご提供くださいました皆様には心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

陸奥守忠吉
一号刀 陸奥守忠吉

虎徹
二号刀 長曽祢虎徹

井上真改
三号刀 井上真改

越後守包貞
四号刀 越後守包貞

一竿子
五号刀 一竿子忠綱

大慶
六号刀 大慶直胤

兼宣刀
鑑賞刀 兼宣
 

 



新刀の全身押形を

IMG_1677
新刀を続けて4振り採拓。
一番右は小さく見えますが脇差ではなく刀です。
IMG_1679
彫り物が有る刀は押形の採拓に大変手間が掛かります。そのためどうしても敬遠してしまい、長い物の全身では骨喰藤四郎くらいしか採拓した記憶がありません。
今回思い切ってやってみましたが、やはり大変で。
慣れた研ぎ場でも苦労するのに骨喰藤四郎は出先での作業で、自分ながらよくやったなと思いつつ今回の採拓を行いました。



「清明の美・春日大社の名刀」同時開催「鐵の煌めき宮入小左衛門行平一門展」

奈良、春日大社国宝殿に於きまして下記展覧会が開催中です。

春日大社国宝殿特別展
「清明の美・春日大社の名刀」
同時開催「鐵の煌めき宮入小左衛門行平一門展」

春日大社_清明の美_表春日大社_清明の美_裏
会場:春日大社 国宝殿 〒630-8212 奈良市春日野町160
電話:0742-22-7788 FAX:0742-27-2114
期間:平成30年12月22日~平成31年3月24日
※平成31年2月13日展示替えのため休館
時間:10時〜17時(入館時間は16時30分まで)

詳細はこちら春日大社HPをご覧ください
展示品目録
春日大社国宝殿



新刀押形

IMG_1616
新刀の少し磨上げと生の大互の目。
大互の目や涛乱の全身は殆ど描いた事がなく、慣れないので勝手がわからず難しい。
ブログは入札鑑定か押形の事ばかりになってしまっていますが、毎日研いでます。



匠ビレッジ 天然砥石館

天然砥石館
亀岡市にあります、「森のステーションかめおか  匠ビレッジ 天然砥石館」に於きまして、
来月2月23日(土曜日)、天然砥石と研ぎ文化普及のためのPRイベントが行われます。

IMG_7565
天然砥石館には日本刀研磨はもちろん、あらゆる刃物の研磨に欠かす事の出来ない京都産天然砥石の資料が満載です。
また、日本各地の天然砥石コレクションや世界の天然砥石など、大変貴重な品々であふれています。
私が刀剣研磨に於ける幻の砥石といわれる”常見寺砥”を初めて見たのもこの天然砥石館でした。

今回のイベントでは、以前採拓させて頂いた「山鳥毛(国宝)」「義元左文字(宗三左文字)(重要文化財)」「骨喰藤四郎(重要文化財)」「石切丸有成(重要美術品)」の全身押形も展示して頂く事になりました。

IMG_9234
(名物 骨喰藤四郎)

刃物研磨に天然砥石が使われる機会は激減し、天然砥石産業は正に風前の灯です。
天然砥石が無くなれば刀剣研磨も終わりです。