「”超絶技巧”の源流 刀装具」

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素敵な本が出ています。
「”超絶技巧”の源流 刀装具」内藤直子 著
近年、専門書ではない刀剣関連書籍が沢山出ました。初心者さん向けというか、今までの刀剣書籍とは違った視点で書かれた同じような本が多数。
それはそれで良かったのでしょうが、妙な事を書いてしまっている本も結構あったと思います。刀の専門家ではなく、分野違いの人が過去に書かれた物をダーッと集めて本にしてしまった感が否めない。。

「”超絶技巧”の源流 刀装具」、”専門家が書いているのに楽しい本”です。
前書きに「作品の鑑賞に心ときめかす初心者にとって、最初に必要なのは知識や情報ではなく、主観を導く「見方の指南」です」と書かれてありますが、正にこれですよね。刀装具を楽しむための見方の指南満載です。
刀身の鑑賞にもこれが必要だと思います。初心者でなくても正にこれが必要です。
何時代の何系列の何代目で誰のお抱えで・・・もいいですが、作品の良さの見方が分からないから凄い現代刀を凄いと気づけない人も多い。
この本は刀装具ですが、刀でもこんな本が出たら素晴らしいのに。
しかし!内藤先生にお聞きしましたところ、どなたかが出されるかも知れないそうで。出て欲しいなぁ。



押形の講習を

日曜に(平成29年11月26日)、 広島県の「ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)」で押形講習を行います。
当日受付も可能だそうです。お近くの方で押形にご興味がある方はいかがですか?
詳細は刀匠会HPをご覧ください。
全日本刀匠会



確認する

研磨を始めてしばらくの頃(10年とか15年程度)に捨てた考えや技術は沢山あるが、本当にそれでよかったのか、一つ一つ改めて検証した方がよい。
例えば内曇りなどもそうだが、久しぶりに昔使っていた石を使うと驚くほど良かったりする。
他にも以前の自分のやり方に驚く事はよくある。 だからといって今の方が技術が落ちているわけではないので気付いて良かったと受けとめる事にしている。



大太刀の全身押形を描く

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全長約四尺七寸五分の大太刀の全身押形を描き始める。
今回ばかりは描こうと思ってしまった事を後悔している。

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先日良い研ぎを見て通常より粒度を上げた拭いを作りたい思ったので新しい乳鉢と特大の乳棒を買った。
普通サイズの乳棒より楽に粒度を上げられる。
とりあえずあまり考えずに作ってみる。



古い差し込み研ぎを拝見

差し込み研ぎで有名な研師が研いだ刀を拝見した。古い研ぎ。多少のヒケや曇りは有るが状態は良好。
味わい深い色になった白鞘が大変上手で、このおかげでこの良好な状態を保てているのだと思う。

直刃。総体に流れる地鉄。鎬寄りに白け映りが強く美しく現れる。
過度に匂い口を立たせたり、刃を白く上げようという意識は感じない差し込み。
直刃だからではなく、おそらく乱れ刃でもこのスタイルの研ぎをされるのだと想像する。上品な研ぎ。

刀も普通に良いのだが、何より地鉄に対する研ぎの良さで美しい仕上がりになっている。
日々色々な研ぎを見るが、ここまで自然に刀の持っている地肌を表現した研ぎは久々に見た。
表面仕上げは大変細かく、上げ艶で刀身表面を全く荒らす事なく拭いを差している。艶の質が良いのは当然だと思うが、硬さ、細かさ、厚さのコントロールが絶妙でなければこの様な質感には仕上がらない。

拭い粒子も相当細かい。最近はこんなに細かい拭いは作って居なかったが、久々に究極に細かい拭いを作りたくなってしまった。
というか、この研ぎはそもそも差し込み拭いを使っているのだろうか。鉄肌と併用なのか。段階的に。
差し込み拭いだとして何を材料にしているのか。これほど強く白けの出た地鉄を磁鉄鉱だけで斑無く絶妙な黒さに仕上げられるのか。

鎬地は薄白けた色に磨き上げる。長年の打ち粉による手入れの影響ももちろんあるが、元々これに近い色に磨き上げている。少し肌を出し気味にしているのでこの色に上げてもとっつく事は無いと思う。美しい色上がり。
この研師の備前物の研ぎも見たい。
それにしても良い白鞘。
趣味で鞘や拵えを作って居る人で、まだ本職の仕事風景を生で見た事が無い人は、必ず機会を探し本職の仕事を生で見た方がよい。
特に誰かに上手いと褒められた事がある人は、本職の鞘師の技と手際、柄巻の奥深さに驚く事になる。
例えば研ぎで言えば、趣味研ぎ歴10年を超える人が内曇りを10日間引いても、本職が2日で効かす仕事を超える事は無いのと同じ。

 



拭いを

前回拭いを作ったのがいつだったかとブログを見ると8月だった。
もっと最近だと思って居たがあっという間に時は過ぎ・・。
その後、複数の刀鍛冶さんの鉄肌を頂戴する機会をいただき、8月とは温度を変えて焼成。

良い研磨とは?との問いには”晴れた研ぎ”という答えが正しいと思うが、どんな刀にもその研ぎが良いとは限らない。
例えば薄く小さい下地艶で上げた地鉄にそのまま拭いを差してしまいたい刀も実は多い。
しかしそれでは地鉄が晴れていないため拭いが効かないし色斑も出て汚い地鉄になってしまう。
拭を差し、良い結果を得るには良質な上げ地艶を適正な大きさと厚さで使用し、丹念に晴らす事が肝要。拭いの結果は上げ艶次第、と。
ではなぜ色々な拭いを作るのか。。
薄く小さい下地艶で上げた地鉄にそのまま差してしまえる拭いに辿り着きたいから。(これは上げ艶を省く手抜きではなく、あえて地鉄を伏せた上品な仕上がりを求めるという意味)
今回は出来たかも。まだ一振りでしか試せてないけれど。