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播磨國住高見國一作之

2020年07月17日【ブログ】

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脇差、銘 播磨國住高見國一作之
     守護順真 皇紀二千六百七十七年 鶯鳴
  彫物 夫婦龍
     梵字(八大龍王真言)

39回目は新作刀、兵庫県の高見國一刀匠の作品です。(研磨は私ではありませんが、以前押形を採らせて頂きました)
身幅広め、重ね厚く、中鋒延びる造り込み。地は映り立ち、焼き頭の高低を抑え、刃中の働きが豊富な刃が焼かれています。
拭いの研磨力に頼らず本来の鉄色を生かした上品な研磨もあいまって、古作の助真や長重などを想起させる作品です。
彫物は装剣金工木下宗憲師。表に夫婦龍、裏に八大龍王真言を配し、「日本刀文化振興協会主催 第10回新作日本刀研磨外装刀職技術展覧会」の刀身彫刻部門に於いて、特賞の”公益財団法人日本刀文化振興協会会長賞”を受賞されています。

押形の採拓で特に時間がかかるのが刀身彫刻です。
彫刻の上から全体をザっと擦って写した押形も沢山ありますが、あまり雑だと美しくありません。
何より、彫師が精魂込めて彫り上げた彫物、一本でも多くの線を擦り出す事を意識して採拓を行います。
当初「八大龍王真言」は時間をかけて梵字の線だけを擦り出す採拓を行いました。
しかし彫りの力強さが押形に表れていないと感じ、彫りの外にも範囲を少し広めて擦り、また縁の線も太く仕上げました。
結果彫の力強さも伝わる押形になったのではないかと思っています。

来国光

2020年07月08日【ブログ】

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太刀、銘 来国光(公益財団法人 黒川古文化研究所蔵)

38回目です。
この太刀は享保名物の鳥飼来国次とともに黒川古文化研究所に寄贈された刀剣類の一つです。
磨上げて茎尻に来国光の三字銘。身幅広く、重ね厚く、平肉豊かに残る頑健な太刀で、押形の帽子の深さからもその様が窺えると思います。
よく詰みながらも部分的な肌立ちを見せ、各所に錵映りが立つ来派特有の地鉄です。
総体に焼き幅広めの刃となり、下半の丁子は二字国俊を思わせます。

公益財団法人 黒川古文化研究所

貞真(古一文字)

2020年07月04日【ブログ】

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太刀、銘 貞真(古一文字 / 公益財団法人 黒川古文化研究所蔵)

37回目です。
この太刀は享保名物の鳥飼来国次とともに黒川古文化研究所に寄贈された刀剣類の一つです。
福岡一文字の中でも特に古い鎌倉時代初期に活躍したこの派の鍛冶を「古一文字」と称し、則宗、助宗、尚宗、宗吉、貞真ら多くの著名工を輩出しています。
貞真はこの期の太刀としては異例に鋒が延びごころとなり、また古一文字諸工と比べ、映りが目立たない事が特徴とされています。
本作は地鉄の中から現れる映り気が若干見られるものの、元来は映りの目立たぬタイプの地鉄であり、また鋒も延びごころとなるなど、貞真の特徴が顕著な作品です。

公益財団法人 黒川古文化研究所

国宗

2020年06月25日【ブログ】

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太刀、銘 國宗(公益財団法人 黒川古文化研究所蔵)

36回目です。
この太刀は、享保名物の鳥飼来国次とともに黒川古文化研究所に寄贈された刀剣類の一つです。
銘は二字銘で国宗と切り書体は備前三郎国宗ですが、黒川古文化研究所紀要「古文化研究」第17号に、他の国宗銘よりも大銘で鏨も強いことからさらに詳しい比較検討の必要がある事が指摘されています。
鎬が高く、鋒が延びる造り込みで、地鉄は極めて精良。私見を申し上げれば仮に銘が無ければ吉岡一文字の極めが相応しい、そう思いながら研磨をさせて頂きました。

公益財団法人 黒川古文化研究所

入鹿住藤原實綱

2020年06月23日【ブログ】

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あいにくのお天気ですが、また入鹿にくることが出来ました。前回も小雨でしたねぇ。http://kyoto-katana.com/archives/7086/
刀の世界では「入鹿=紀州」ですので、今の入鹿も和歌山県だと勝手に思い込んでいましたが、今は三重県です。境界が昔とは違うんですね。
前回は滞在時間五分で、しかも紀和鉱山資料館さんは閉館しておりました。
しかし今回は鉱山資料館職員さん立ち合いの元、入鹿實綱の槍を手に取り拝見させて頂き、また画像のブログUPのお許しまで頂く事が出来ました。ありがとうございます。

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槍、銘 入鹿住藤原實綱
刃長一尺二寸七分七厘(ケラ首長6.2㎝)
この槍は「紀州の刀と鐔」所載の品ですのでその存在は知っていましたが、鉱山資料館さんに保管されていたのですね。出会えて感激です。
今回手に取らせて頂き驚いたのが、以前ブログで紹介させて頂いた實綱の槍と非常に似ている事です。

 

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槍、銘 紀州入鹿村實綱作
こちらは刃長が一尺四寸七分二厘でケラ首が7,7㎝と鉱山資料館さんの槍より少し大きいのですが、全体の造り込み、樋の形、茎の太さ茎尻の形状、地肌に刃文と、全てが非常に似ています。(茎尻は若干の違いもあり、そこがまた面白い)
「紀州の刀と鐔」によると鉱山資料館さんの實綱は文明頃の四代、押形の實綱は下って享禄天文頃と思われるとの事です。
銘を見るとタガネ使いに明らかな違いがあり同じ手による銘ではないと思いますが、技術の変化が少ない地方鍛冶の場合、実際の製作年代よりも古く見えたりまた逆に若く見える事もあり、さらに銘切師の存在など、資料の少ない刀工の代別や製作時期の特定は難しいです。
押形の槍は以前ブログで書かせて頂いた通りの名槍ですが、鉱山資料館さんの實綱も「入鹿鍛冶の特徴を遺憾なく示した名鑓である」との「紀州の刀と鐔」の解説のとおり、素晴らしい槍でした。

二字国俊短刀

2020年06月14日【ブログ】

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短刀、銘 國俊(二字国俊)

35回目です。
二字国俊の短刀は、長らく重要文化財の愛染国俊(28.79㎝)のみとされて来ましたが、近年出現した本刀(21.3㎝)が新たな一口として加わる事となり、そしてその短刀が京都にあると知り押形をとらせて頂きました。
初期来派では来国行にも唯一の在銘短刀(寸延/30.65㎝)として特別重要刀剣指定の品があますが、愛染国俊、来国行寸延短刀といずれも手に取り拝見しました。
本刀を含む三口ともに太刀に見る刃文とは異なる出来となり、全てに少し反りが付きます。
この作風を知る事は初期来派短刀の作域を理解する上で重要で、来国俊以降の鎌倉期来派短刀とは相違します。それを顕示するこの三口の存在意義は大きく、その価値は計り知れません。