鞘師

2018年05月01日

多数の刀を所蔵する愛刀家や、多数の収蔵刀がある施設の刀を拝見する事は多いが、”見事に管理が行き届いている”という例はそれほど多くない。
管理に関する問題は様々あるが、一番は錆。これは刀を扱う上で必ず起り、数が増える程に大きな問題となる。
何故錆びるか、何故錆びた刀があるかは、予算の都合や意識の問題など様々。

刀の錆とは、少々錆びていても刀とはこういう物だと思って居る人にはそれ程気にはならないらしく、所蔵刀の大半が錆びている様な例にも度々出会う。
元々錆びた物を入手したのならまだよいが、入手後に錆びさせてしまう事も非常に多いと感じる。
入手後錆びさせたがそのままでいる理由は、「研ぐと高くつく」、「これでも十分鑑賞できる」など。 まぁ仰る通りだが。

公共施設の場合、近年の刀剣ブームのおかげで入場者数が増え、刀に掛けられる予算も増額、それにより修復が行われるケースも多いと聞く。
これは素晴らしいと思う。これに関する弊害、、ん~。 行列になりゆっくり見られなくなる事くらいか。。まぁ皆さん我慢しましょう。

管理が悪く錆が発生した場合、全身に赤錆黒錆が出る様な例は稀。
(過去ブログにあるはずだが見つからなかったが、僅か五年で初代忠吉がボロボロに錆びた例、防虫剤が原因で1年に100年分の錆が出た例などは有った)
多くの場合、部分的に白、赤、黒の錆が発生している。短期発生の場合唾錆が多いが、中長期間で発生しそして悪質なのが、鞘当たりが原因と思われる錆。
鞘当たりが原因と思われる錆は、安定せずにどんどん進行する物が多い様に感じる。

どんどん進行するとは言え、鞘が当たっている箇所が主なので、範囲は狭く限られている。
この様な錆は研師による部分修復研磨により除去する事が可能だが、同時に鞘師による白鞘の割鞘修理が必要となる。

研師によっては部分研磨を嫌がる人も居ると聞き少し驚くが、確かに部分研磨は面倒であり難しい場合もある。
色を合わせるのが難しい、そのノウハウが無い、全体研磨の方が儲かるのでそれを勧めるなど理由は様々。そして部分研磨のみでは無理で、どうしても最低限全体の仕上げ研磨が必要な場合がかなり多いのも事実で。

さてさてちょっと前置きが長くなってしまったが、刀に錆を発生させず適切に管理し、より良い状態で後世に伝えて行くためには、研師よりも刀鍛冶よりも、まずは管理者の意識向上とそして”鞘師”の力が何より重要!
研師の仕事に就き27年ほどになるが、鞘師の重要性を本当に分かっている人に出会う事は少ない。そして大変書き難い事だが、鞘師の重要性を分かっていない鞘師もまま居る事も事実。
以前書いた事もあるが、鞘師の仕事は本当に凄い(正確に言えば、刀職皆それぞれ誰にも理解されなくとも凄い事をやっている人が大変多い)。
同じく刀に関わる研師から見ても、「その様な誰にも見えない、誰にも分からない部分にそれ程の時間と手間を掛けているのか」と驚く事が大量にある。それが鞘師の仕事。
この誰にも見えない、その刀の所有者にすら全く気付かれない事も多い技術が鞘師そして刀職全般の仕事であり、刀をより良い状態で後世に伝えるために欠くとこの出来ないものだと思う。