「工+藝」京都2025

11月15~18日まで、渉成園にて「工+藝」京都2025が開催されます。

東京美術倶楽部は日本の伝統、風土、美意識に根差して継承され、さまざまな表現と挑戦がなされている工芸に焦点をあて、2024年より「エ+藝」KO+GEIの展覧会を発足いたしました。伝統を受け継いだ手仕事の「エ」そして、各時代の美的センスが加えられる「藝」を融合させ、それぞれの表現に昇華させている作家を厳選いたしました。この度、京都渉成園の素晴らしい空間をお借りしてこの展覧会が開催できることはまたとない機会と感じております。今回の「エ+藝」京都展は「クリエイター等支援事業」の一環として、文化庁および日本芸術文化振興会の委託事業として行われる最初のプロジェクトでもあります。この機会を通じて、日本の美術品が若い人達の力によって海外マーケットに発言、流通するきっかけになることを願っております。

株式会社 東京美術俱楽部
代表取締役社長中村純

<出展作家一覧> 

浅井康宏、伊藤秀人、伊藤航、内田鋼一、ウチダリナ、王雪陽、大室桃生、隠﨑隆一、
月山貞伸、加藤高宏、加藤亮太郎、川端健太郎、岸野寛、小曽川瑠那、五味謙二、
佐故龍平、新宮州三、スナ・フジタ、関島寿子、孫苗、高橋奈己、田中里姫、佃眞吾、
土屋順紀、出和絵理、時田早苗、戸田浩二、豊海健太、新里明士、西村圭功、橋本雅也、
福村龍太、藤川耕生、桝本佳子、前田正博、増田敏也、松永圭太、三上亮、見附正康、
宮入陽、ミヤケマイ、十三代三輪休雪、三輪太郎、山村慎哉、吉田泰一郎、和田的

刀剣作家として、月山貞伸刀匠、宮入陽刀匠の作品が展示されます。

「工+藝」2024|KO PLUS GEI 2024
(↑2024年開催のHPです。2025とは会場が違いますのでご注意下さい)



大和物全身押形を採拓する

時代は鎌倉末期頃でしょうか、古い大和物の全身はちょっと久々。この時代の大和物の押形採拓は楽しいです。

この刀、両チリの棒樋に添樋がありますがこの場合、刃、添え樋の角2本、鎬筋、棒樋の角2本、棟角、庵と、僅か3cm幅の外形を描くのに8本の平行な曲線を引く事になります。押形が好きな理由の一つがこの線かもです。線を見るだけでも綺麗で好き。
研磨の場合、面を整えた結果美しい線が現れるという考えです。
平地と鎬地の面を整えると自然に鎬筋が立つ。横手下と鋒の肉を整えると自然に美しい横手が形成される。
押形では意識して線を作る必要が。茎の刃方や棟方、茎尻も、面の端という意識では不十分で、ちゃんと線にしないと綺麗にならなくて。



新作長剣

3尺6分の新作の剣の内曇り。
下地後かなり期間が空き、その苦労はほぼ記憶になく。。覚えていないのは時間のせいではなく、苦労は記憶に残らずただ経験として身体に刻まれるだけという研師としては大変都合の良い体質のおかげです。
この剣は春日大社の三鈷柄籐巻剣(重文)の刀身形状を写した物で、刃長は先述の通り。元幅は45mmで重量1300グラム弱。
姿形はそのまま制作されているが作風を写している物ではなく、この場合”写し”とはまた違うかもですね。
さて、刀の写し物についてどう捉えるか、どう評価すべきかが自分の中で曖昧なままでしたが、エルメス財団の「Savoir&Faire 金属」に寄稿されている内藤直子先生の文中の『「本歌」と「写し」』から大きな学びを得ることができました。自分の考えをもう少し整理できそうです。

新作写しもの | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
写し物 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
伝統美と創造性 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区



スキャナを買い替え

押形のスキャンに使っていたA3スキャナーの具合が悪く。
取り込んだ画像の両サイドの色が暗くなり、分割画像が繋がらず色調整に掛かる時間が酷い。
フォトショスキルが高ければこんな作業は簡単なのでしょうが。。
本能寺宝物館に展示中の全身押形パネルも1枚仕上げるのに何時間かかったか分からんほどで。無駄すぎ。
という事で久々にA3スキャナを買いました。とはいえA3はお高いものなのでヤフオクです。
昔はスキャナで刀身画像を作成していたのでそれに適したカメラ機能が必要で、かなり旧型のスキャナしか無理でした。
しかしもう刀身のスキャン画像は作らないのでし新しいタイプでもOK。

とりあえず届くもリサーチ不足でLANケーブル接続の物を買ってしまいそれに気づくまで数時間かかり。。
とにかくもう無理と諦めかけましたがチャッピーが難解な設定も根気強く付き合ってくれ無事認識。ちょっと泣きそうになる。

今までは1枚スキャンするだけでも数分かかっていましたが、数秒で完了。
までも結局その後の技術不足でそれなりに時間はかかります。



全身押形の採拓

最近採拓した全身押形、山城物生ぶ在銘鎌倉中期太刀、山城物鎌倉末期在銘短刀、越中物無銘刀(金象嵌)、越中物在銘短刀、古備前折返銘太刀、無銘青江、年紀入倫光、末手掻在銘短刀、新刀焼け身の研ぎ身、吉岡一文字刀。(重文3,重美1,特重1,重刀2)
焼けっ放しの刀の全身押形をこんなに真剣に採拓した人は過去もしかしたら居ないのではなかろうか。。
丁子が苦手な私ですが、今回の吉岡はやけに早く描けました。やっと体に記憶出来てきたのでしょうか。人より山盛りやらないと体得出来ない。



昔の研ぎ

しばらく前に古研ぎで錆が各所に発生している刀を2口、太刀1口を研がせて頂きました。(室町末期、室町中期、鎌倉末期)
その研ぎが私の大師匠で永山研修所出身の内山一夫先生の研ぎであった事が判明。
内山先生は奈良県の無形文化財保持者で、重文の太刀や直刀(研磨後に指定)など、多くの古名刀の研磨を手掛けています。
先日の3口は誰の研ぎか知らずに見たわけですが、肌目を強調せずしっとり落ち着かせ、刃取りは白さ高さとも抑えた仕上げで、”真面目な研ぎ”という表現がまさに相応しい仕事でした。
内山先生の研ぎを意識した事は今まで全く無かったのですが、おそらく何度も見ているのでしょうねぇ・・・。
刀身の鎺下に研師銘を入れる気持ちも少しだけ理解できます。(内山先生は入れていません)



硬い刀

互の目の現代刀と中河内を差し込み研ぎで仕上げました。どちらもかなり硬い刀。
現代刀の方は刃に内曇りが効きづらい。中河内の方はまたちょっと違う質ですが硬さは同等。
私の場合こういう硬い刀の方が差し込みは上手く仕上がります。



砥石を試す(内曇りと細名倉)

その後さらに30丁、さらに50丁ほど試しを。
結局目当ての研ぎ味の石は見つからず終わりました。

せっかくなのでもう何十年も気になっている細名倉についても。
20代の頃は中名倉と細名倉は天然を使用していましたが、いつ頃からか人造に切り替え、今も人造です。同じく人造細名倉を使っている人は多いと思います。しかし「細名倉は天然じゃないとダメ」という方も結構居られて。
人造細名倉と天然細名倉、比較すると人造の方が砥粒が細かいのは確かだと思いますが、何故に天然が良いというのか・・・。
天然細と人造細を表裏で研ぎ分けてみた事は何度かありますが、明らかに人造の方が仕事が速いです。
改正・中名倉から細名倉を効かせる時間、細名倉から内曇りが効くまでの時間は人造細名倉を使用した方が速い。
「天然じゃないとダメ」と言っている人は人造細名倉をしっかり長期間使用した事がないのでは?と思いつつも、もしかしたら何か別の作用があるのかもとも。
今回はしっかり確かめたく、砥棚にある天然細名倉の内、良いと思う物12本を使い検証。
結果、”細名倉は天然”派を理解出来ました。天然細名倉は面白い。



銘鑑

私の場合ですが刀関連書籍で一番よく使うのは、重刀・特重図譜、刀剣美術、そして日本刀銘鑑です。
重刀図譜や刀美は何かの調べ物でひたすら探してザーッと見るだけの事が多いですが、銘鑑は開くと時間を忘れちゃいますね。
日本刀銘鑑 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
↑この当時とはまた使い方も大分変りましたが今夜も楽しくてずっと開いていました。
こんな凄いもんをWindowsもまだ無い時代にどうやって作るんでしょか。凄い仕事だ。



砥石を試す

倉庫から持って来たそれらしい石は全部だめでした。
今回は棚のも含め60丁ほど試しましたが全部違う。

そりゃそうなんです。見た目も引き味も、ずっと避けて来た石を探しているわけなので。
元々なんでも使ってみるタイプでしたが、阿部先生に砥石の弾力その他色々な事を教わって以来、更に何でも使ってみる研師だったのですが・・・。
今回もあらためて思いましたが、そろそろ「刀剣研磨には内曇り、鳴滝しか使えない」と思わせる様な教科書というか風潮的なものは改めた方がいいですね。
 天然砥石界隈 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区

にしても、避けて来たにしても、↓こんなに色々あっても1本も無いなんて。。
天然砥石比較 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
明日倉庫の下の方を探す事にします。
しかし大門君はよくこれに気付いたもんだ。。センスの塊り。
あと勝手な想像ですが、多分彼の身近には包丁研師さんが居た事が大きいのでは。
私も含め、刀研師は砥石を知らなさ過ぎる。