硬い刀
互の目の現代刀と中河内を差し込み研ぎで仕上げました。どちらもかなり硬い刀。
現代刀の方は刃に内曇りが効きづらい。中河内の方はまたちょっと違う質ですが硬さは同等。
私の場合こういう硬い刀の方が差し込みは上手く仕上がります。
互の目の現代刀と中河内を差し込み研ぎで仕上げました。どちらもかなり硬い刀。
現代刀の方は刃に内曇りが効きづらい。中河内の方はまたちょっと違う質ですが硬さは同等。
私の場合こういう硬い刀の方が差し込みは上手く仕上がります。
その後さらに30丁、さらに50丁ほど試しを。
結局目当ての研ぎ味の石は見つからず終わりました。
せっかくなのでもう何十年も気になっている細名倉についても。
20代の頃は中名倉と細名倉は天然を使用していましたが、いつ頃からか人造に切り替え、今も人造です。同じく人造細名倉を使っている人は多いと思います。しかし「細名倉は天然じゃないとダメ」という方も結構居られて。
人造細名倉と天然細名倉、比較すると人造の方が砥粒が細かいのは確かだと思いますが、何故に天然が良いというのか・・・。
天然細と人造細を表裏で研ぎ分けてみた事は何度かありますが、明らかに人造の方が仕事が速いです。
改正・中名倉から細名倉を効かせる時間、細名倉から内曇りが効くまでの時間は人造細名倉を使用した方が速い。
「天然じゃないとダメ」と言っている人は人造細名倉をしっかり長期間使用した事がないのでは?と思いつつも、もしかしたら何か別の作用があるのかもとも。
今回はしっかり確かめたく、砥棚にある天然細名倉の内、良いと思う物12本を使い検証。
結果、”細名倉は天然”派を理解出来ました。天然細名倉は面白い。
私の場合ですが刀関連書籍で一番よく使うのは、重刀・特重図譜、刀剣美術、そして日本刀銘鑑です。
重刀図譜や刀美は何かの調べ物でひたすら探してザーッと見るだけの事が多いですが、銘鑑は開くと時間を忘れちゃいますね。
日本刀銘鑑 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
↑この当時とはまた使い方も大分変りましたが今夜も楽しくてずっと開いていました。
こんな凄いもんをWindowsもまだ無い時代にどうやって作るんでしょか。凄い仕事だ。
倉庫から持って来たそれらしい石は全部だめでした。
今回は棚のも含め60丁ほど試しましたが全部違う。
そりゃそうなんです。見た目も引き味も、ずっと避けて来た石を探しているわけなので。
元々なんでも使ってみるタイプでしたが、阿部先生に砥石の弾力その他色々な事を教わって以来、更に何でも使ってみる研師だったのですが・・・。
今回もあらためて思いましたが、そろそろ「刀剣研磨には内曇り、鳴滝しか使えない」と思わせる様な教科書というか風潮的なものは改めた方がいいですね。
天然砥石界隈 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
にしても、避けて来たにしても、↓こんなに色々あっても1本も無いなんて。。
天然砥石比較 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区
明日倉庫の下の方を探す事にします。
しかし大門君はよくこれに気付いたもんだ。。センスの塊り。
あと勝手な想像ですが、多分彼の身近には包丁研師さんが居た事が大きいのでは。
私も含め、刀研師は砥石を知らなさ過ぎる。
ちょっと久々に倉庫をガサガサ。
ご近所さんの大門研師に教えてもらった砥石が無いか探します。
9割以上が昔買った物ですが近年の石も3、40キロ程度ありました。
それっぽい砥石を試します。
この様に試すのは久々。こんな刺激をもらえる人が近くに居るのは有難いです。
本部から。
1号 太刀(刀?)
少し細身。少し反る。棟先2寸ほぼ直線、先1寸棟角僅かに内。大大板目。錵が強い直ぐ調の刃で大板目が刃に入り刃肌となり、錵筋等複雑に働く。
腰をかなり長めに焼き落とすも熱による後天的な物に見える。
2号 寸延か短刀
幅広で少し反り、フクラ枯れ整う姿。板目。区より上に向かい次第に華やかに乱れ、団子交じりで飛び焼き頻りに掛かる。三ッ棟中広。
地刃澄んで素晴らしい出来。
3号 刀
少し長く幅もある。反り浅。大互の目交じりだが完全な涛乱部が多い。地刃少し濁る。
4号 短刀
8寸程度。重ね頃合いに少々強めの内反り。研磨の下地が抜群によく、平地棟角寄りが美しい。
よく詰む箇所と若干肌立ち気味の板目が混在。直ぐ刃だが錵付き大変よく働く刃で、帽子に錵筋が複数。鎺下で少々焼き込んでいると思う。
三ッ棟中頃合い。
5号 刀
中鋒延びごころで豪壮な造り込み。詰む肌。頭揃い気味で低めの互の目丁子。横手で焼き込んで上に互の目一つ、湾れて倒れ大きく返る。先深い。
当
当
イヤ
当
当
3号、街道を変え、最上より一格落として入札。
当
当
同然
当
当
2号は抜群の出来で、今まで手に取った同工の中で一番好きでした。
4号、最近重文の同工短刀の全身押形採拓をしましたが、作風が近似してます。帽子に線状に錵がこぼれる箇所がありますがそれも同様。手癖ですね。
在銘の末手掻短刀と備前貞治年紀寸延の全身押形を採拓。
以下末手掻の簡単な調書。
刃長27.1㎝
内反り
元幅20.9(22.4)mm
元重6.3mm
茎最厚7.0mm
平造り、三ツ棟(中筋細い)。寸の割に身幅狭く、重ね厚く、全体に強めに内に反る。
(区、極僅かに送るか)
茎鑢檜垣。棟強めに肉が付き、刃方は角。棟、刃方鑢不明。茎刃方の重ね薄く研磨時痛い。
茎尻栗尻、目釘穴3、鎺下に銘。
地鉄、板目に杢交じり、刃寄り少し流れる。地景入り良質。
刃文、直刃。表ふくら下に湾れを見せ、小錵付き、砂流し入り、湯走り現れる。
帽子丸く、少し焼き下げ。
末手掻は8寸9分4厘で元幅20.9mmと身幅が少し細く見え、庵高が三ッ棟なのに1,5と高く、重ねが厚い。元から先まで全体に強めに内反っており、室町中期~後期の姿。
南北備前は生ぶで、刃長1尺4分。少し反ってフクラ張らず。茎は短めで反りが付き、栗尻張って茎尻の棟先に力がある。
茎尻の棟先に力があるのは鎌倉末期長船やその周辺工の太刀にも見る物ですが、完全な生ぶ茎でなければこの形状は残されず、実は貴重な状態と言えます。茎を伏せた太刀には残念ながらこの力強さはありませんし、短刀でも茎棟を擦った物は多い。
石華墨で茎を擦りだす時、茎尻の棟先に力があるとそこに石華墨が引っ掛かり、心地いいんです。だからか、この姿の力強さと貴重さには敏感で。
先日採拓した享保名物の短刀はこの工の数種ある姿の一つである事がよくわかりましたし、先日途中で終わっている相伝享保名物の姿は、しばらく前に採拓した同工のもう一つの享保名物と同種である事を強く感じました。
鑑賞と研磨では得られない物が押形で補えているかも知れません。
刀姿は時代ごとに流行があるとされます。鎌倉期の腰反りや室町期の先反り、慶長新刀や寛文新刀の姿など。
それとは別に、流派や各刀工それぞれの得意な造り込みや好んで造ったのかも知れない物、また手癖が現れた物も多くあります。
押形一つとっても採り手の個性が強く出るもので、見れば誰の押形かは分かりますし、刀も多く造るほど個性も固まってくるでしょう。
鎌倉末期の備前の力ある茎尻形状もですが、大和物の鎬高の造り込みなどは代表的なところ。これは上げればきりがなく、先日ブログに書いた藤島特有の造り込み、入札鑑定時よく感じる親国の脇差姿(鎬造平造問わず)、越後守包貞の切っ先形状、清麿の棟先、虎徹の独特な造り込み、尻懸・当麻短刀の造り込み等々。
時代の反りもそうですが、これらは事前の知識なく見ても気付く事は難しいものです。自らの感覚で気付くためにはかなりの数を見る必要がありますし、とにかく自分の感覚の感度を上げなければならず。感度を上げるにはやはり沢山見なければで、長い年月を要します。
本日は出先にて相伝某享保名物の全身押形を採拓しました。
出先での採拓は失敗が許されずですが、万一に備え紙は何枚か準備して行きます。
今回は全長等数値データがあり位置決めも事前に出来ますので現場での作業もスムーズに。
先日来複雑な刃文の則重を数日かけてじっくり描いていたので、そこそこ複雑な相伝刃文でも問題なく対応できました。
とはいえ長物の相伝採拓は一日では厳しく続きは次回。作業を安全に終える事が何より大切。
また押形ですが・・・。
私は昔お教え頂いたやり方で、庵の頂点の線は棟角でとります。その線を区から横手付近までとって一旦紙を外し、上下逆にしてまた棟角に当て先端に結ぶ、そのやり方です。これを短刀でも同じ様に行ってきましたが、時によろしくないのでは?と思う事も。しかしまぁ流れでその様に。
今さらですが、最近とった内ぞり短刀を、返さずそのままずらして棟先に結ぶ様にとってみましたら、大変具合よく仕上がりました。
教わった事しか出来ない人にならない様に心掛けていますが、まだまだ色々ありますねぇ。。