No.132

天然砥石比較No.132を刃引きに使用する。

この石は頂き物ですが、あく水(洗ソーダ水)で死んでいたので使用は困難と思い使わずにいました。
地砥などの硬い砥石は殆ど水を吸わないので大丈夫ですが、刃引き等柔らかめの砥石は洗ソーダを沢山吸い込みます。
ソーダ水は乾燥すると結晶化し、吸収乾燥を繰り返すと、山で雨ざらしの砥石が凍結と融解を繰り返し風化するのと同じく巣になってダメになります。そうなると普通の刀を引くとヒケが入り研磨力も落ち・・・。
今回の刀はかなり硬い刀。硬い刀は内曇りに苦労する訳ですが、一つ良い点をあげるなら、ヒケが入り難い事。という事でしっかり試したかったNo.132を引く。
結果大変良い石。研磨力は天然砥石比較で実証済みでしたが今回の感想はそれ以上で。
硬い刀にはヒケ無しで使え、今後頻繁に手にする事になりそうです。




ガチャガチャした場所で

先日ちょっとガチャガチャした場所で薄錆身の無銘短刀を拝見。
幅広内反り振袖茎。

以前拝見した短刀、入鹿實可。茎棟ラインや振り方や上身形状が独特で忘れる事の無い姿で。それと同じ。
先日の短刀も實可じゃなかろうか。
入鹿實可拝見。馬手差しのこと | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)



入札鑑定記

コロナの影響で中止になっていた山鉾巡行が3年振りに開催されました。(写真は宵々山の長刀鉾)
観に行きたい気持ちを抑え、今日は入札鑑定会へ。

1号 刀
反り7分弱か。総柾。研ぎの具合でちょっと分かり難いが多分鎬地も柾目。柾が少し大きい。
匂いベースの直刃調で荒錵が付く箇所が全身に多数。荒錵による湯走りも。錵乾く。
帽子は丸で掃掛けというか火焔風。

国包の刃とは全く違う。末保昌と見える出来だが、末保昌の在銘は普通は無く、1号に置かない気がするし・・・。
ちょっと分からないので、仙台安倫と入札。


2号 刀
反り浅。重い。よく詰む。新々刀丁子。全体に映り気はあるも暗帯部を伴う明瞭な物ではない。
固山か宗寛だが鑑別法が分からず。

映りが明瞭じゃないので宗寛と入札。


3号 刀
少し反り気味。鎬が高く棟重ねが薄い。丸棟。腰に梵字と蓮台を表裏に。
大変良く詰み美しい地鉄。映りも全身に渡り美しく現れる。
刃文が少し異風で、腰開く互の目もあるが、角の丸い箱風やらなんやらかんやらと複雑に。帽子一枚。返りが太く、丸い互の目を間を詰めて長く連ねる。変わった刃だが地鉄由来の匂い口の密度で、きめ細かく良い刃。

造り込みは完全に藤島で、この刃文も藤島であってもおかしくは無いが、流石にここまでの地鉄は無いと思う。
長船祐光と入札。


4号 短刀
寸延びか。幅広。反りあり。棟寄り目立って柾。研ぎでパリッと仕立てた越前鉄。
刃文大湾れ。匂い口肌に絡む。

初代康継と書こうと思うも、2,3代でも有るよなぁこの地刃・・・となり、康継と入札。


5号 短刀
ザングる。フクラ枯れ気味。表裏2個づつ逆風の互の目。後は穏やか。

見た瞬間、堀川鉄と美平が混在。どちらを取るべきか。。
出羽大掾国路と入札。


時代違いイヤ



国入り

1号 末保昌と入札。
5号 美平に。





1号  刀 無銘 (保昌)
2号  刀  銘 應金田昌言需 備前介宗次作之 
         嘉永七年二月日 
3号  刀  銘 備前國住長船宗光
         明應六年八月吉日
4号 短刀  銘 於武州江戸越前康継(初代)
5号 短刀  銘 山城國埋忠慶隆(東山美平)





「関大と刀匠國平」

関西大学博物館にて河内國平先生の企画展が開催されます。
以下、関西大学博物館HPより

2022年度関西大学博物館夏季企画展 「関大と刀匠國平」の開催について

2022年度関西大学博物館夏季企画展 「関大と刀匠國平」

刀匠·河内國平が1966年(昭和41年)に関西大学を卒業してから本年で56年となります。在学中に末永雅雄博士から指導を受け、卒業と同時に宮入昭平刀匠に入門し、第一作を制作してから古刀ヘ近づくために80歳を超えた今でも日々作刀に没頭しています。そしてこの度、母校である関西大学において、夏季企画展「関大と刀匠國平」を開催する運びとなりました。「映り」の発見による「古刀再現」に向け、より充実した作刀を続ける河内國平の軌跡をご覧ください。

期間 :2022年7月18日(月)~10月10日(月)
時間 :10時~16時(入館は15:30まで)
休館日:日曜日、8/11-21、8/27、9/3、9/19(8/7、10/9は特別開館)
場所 :関西大学博物館特別展示室(関西大学千里山キャンパス 簡文館内)
入館料:無料

新型コロナウイルスの感染拡大の状況によってはやむを得ず臨時休館させていただくことがあります。


イベント
講談・対談
神田伯山/河内國平『刀剣と講談』

日時  :2022年9月10日(土)14:00~16:00(開場13:30)
会場  :関西大学千里ホール(第1学舎)
出演  :神田伯山(講談師)・河内國平(刀匠)
参加費 :無料
定員  :400名(先着申込順)
申込受付:7月18日より開始

関西大学博物館HP



大太刀

少し前ですが、爺さんに会いに行こうと思い立ち、初めて靖国に行きました。(祖父は昭和20年7月、父が2歳の頃大阪湾にて戦死)
私が30代の頃亡くなった祖母は、祖父の墓参りを毎日欠かす事はありませんでした。私が知る限り毎日です。
近所では毎日墓参りに行く婆さんとして有名だったそうで・・・。
確か祖母も一度だけ靖国にお参りに行けたはず。
私の初めての靖国神社参拝は祖父を感じる事は出来ず、お墓で毎日泣いていた祖母を思い出しました。

特重指定品発表で靖國神社遊就館蔵の大太刀、古三原「正家」が載っていて興味を持っていたのですが、刀美最新号の名刀鑑賞にこの正家が掲載されました。やはり素晴らしい太刀でした。
大太刀を研磨させて頂く事は度々あり現在も3口の大太刀をお預かりしていますが、以前見た古研ぎの大太刀が特に記憶に残っています。
当時確かブログに書いたような・・・と思い、HPの検索欄に「大太刀」と入力してみると2009年にその記事がありました。
古研ぎ薄錆身 | 玉置美術刀剣研磨処|京都・左京区 (kyoto-katana.com)
ブログ文中、「そして磨り上げ刀の場合は切断して廃棄(再利用か)されてしまう部分も、荒れや傷など製作時の失敗も無く完璧なものなのだと分りました」と書いていますが、ちょっと意味がわかり難いですね。
大太刀の腰付近に先天的な不具合があったから磨上げたとか、そういう事じゃないと言いたかった訳です。
今回の靖國神社様の大太刀も、名刀鑑賞解説で「これほどの長寸にもかかわらず元先にかけて緩みなく均一な肌模様となり、鍛錬技量の高さが窺え」と書かれている通り、大太刀だからといって雑な造りではないという事です。
因みに、現在二尺台で大磨上げの茎になっている刀の全てが大太刀だったという訳ではなく、その何割か程度と考えるべきかと思います。



刃艶を貼る

少し前に久々に刃艶を貼りました。いつ以来でしょうか。ちょっと不明で。
前回カットしていた中から必要な砥質3種を50枚程。前回のカットではどうやら6種程度をカットしていた模様。
それにしても、今回の貼り具合が過去30年間中最も悪い仕上がりに。
そういえばこの数年どんどん悪くなっていて、今回がその終着地かという悪さに。
私は屋外で貼る事が多く、悪さの原因は風や気温やと色々考えられます。ただ刃艶は砥質が最も重要であり、研磨初心者ならいざ知らず、それなりに経験があればその後の対応いかんで貼り具合は研ぎの仕上がりに影響を及ぼす事は無いのです。
”何を馬鹿な事を”とお思いの方、その通り。刃艶の貼り具合は使い易さに大きく影響しそして研磨の仕上がりにもある程度影響があるのです。
吉野紙の質や国産漆にとまでこだわった刃艶を頂戴し使わせて頂いた事が何度かあります。
その刃艶、漆の濃度(粘度)や厚さが絶妙で、しっかり貼れているのに吉野紙の繊維が程よく出て、刃取時の指との摩擦が強く、手の力を刀身へと全て伝えてくれます。結果その砥石の質をフルに発揮し、刃取り時間の短縮はもちろん、仕上がりの最終到達点にも影響がある勢いで。
この様な”こだわり”は職人には大切ですね。 
”こだわり”は経験でカバー出来る事も多く自分の中でどうしても粛清対象になりがちなのですが、こだわりを持ち続ける事の大切さを最低な刃艶を使いながら再認識した次第です。





第12回「新作日本刀 研磨 外装 刀職技術展覧会」

刀文協は令和4年度の公益目的事業として、長野県の坂城町並びに坂城町鉄の展示館と共催により、第12回「新作日本刀 研磨 外装 刀職技術展覧会」を開催します。今回も各賞に輝く秀作を展示し広く刀剣ファンの皆さまにご覧頂けるように企画いたしました。
また、作刀・刀身彫刻/研磨/刀装の3部門の他に、特別公開部門として、“Sword Oshigata Art”部門も公開致します。。

1.名称 第12回新作日本刀 研磨 外装 刀職技術展覧会
2.会場 「坂城町 鉄の展示館」
       〒389-0601 長野県埴科郡坂城町坂城6313-2
3.会期 令和4年6月11日(土)~8月28日(日)
4.部門 作刀・刀身彫刻/研磨/刀装の3部門
5.分野 作刀・刀身彫刻・研磨・鐔(その他刀装具)・白銀(鎺その他金具)・白鞘・拵下地・柄巻き・鞘塗り・拵

関連イベントが多数あります(既に定員に達し受付が終了している可能性があります

1.《ギャラリートーク 》 学芸員が展示解説を行います 
開催日:6/12㈰、26㈰、7/18㈪、8/14㈰
時 間:午前10時30分~11時30分
会 場:鉄の展示館
定 員:先着10名参加費:無料(入館料別)

2.《「つばの拓本」のしおり作り 》 鐔を拓本にとって、オリジナルしおりを作ります 
開催日:6/12㈰
時 間:午前9時~午後4時30分(他のイベント中は休止)
会 場:鉄の展示館
定 員:先着10名
対 象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
参加費:500円(入館料別)

3.《「部分押し形」のしおり作り 》 刀の茎(なかご)を石華墨で写し取って、オリジナルしおりを作ります 
開催日:6/26㈰
時 間:午前9時~午後4時30分(他のイベント中は休止)
会 場:鉄の展示館
定 員:先着10名対 象:小学生以上(小学生は保護者同伴)参加費:500円(入館料別)

4.《一期三振り~國廣を追え!~ 》 三振りの刀の中から、堀川國廣の刀を探し出してもらいます! 
開催日:7/3㈰
時 間:午前9時~午後4時30分(終日開催)
会 場:鉄の展示館
定 員:先着10名
対 象:中学生以上
参加費:500円(入館料別)

5.《拵入りの刀を分解してみよう 》 拵に入っている刀を自分で分解し、刀身と小道具まで鑑賞します 
開催日:7/9㈯
時 間:午前9時~午後4時30分(終日開催)
会 場:鉄の展示館
定 員:先着10名
対 象:中学生以上
参加費:500円(入館料別)

6.《一期三振り~村正を追え!~ 》 三振りの刀の中から、村正の刀を探し出してもらいます! 
開催日:7/18㈪
時 間:午前9時~午後4時30分(他のイベント中は休止)
会 場:鉄の展示館
定 員:先着10名
対 象:中学生以上
参加費:500円(入館料別)

7.《ビギナー歓迎!初心者のための刀剣講座 》 古刀から現代刀まで、名刀の数々を手に取って鑑賞します。初心者大歓迎! 
開催日:7/24㈰
時 間:午前10時30分~正午
会 場:鉄の展示館
定 員:先着20名
対 象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
参加費:500円(入館料別)

8.《夏休み応援企画!手作りナイフを作ろう!》  五寸釘を使って、自分だけのオリジナルナイフを作ります 
開催日:7/31㈰
時 間:1.午前10時~正午、2.午後1時30分~3時30分
会 場:鉄の展示館
定 員:各回先着30名
参加費:500円(入館料別)

9.《刀のお手入れ体験 》 展示館所蔵の真剣で、刀のお手入れが体験できます 
開催日:8/6㈯
時 間:午前9時~午後4時30分(終日開催)
会 場:鉄の展示館
参加費:無料(入館料別)
 ※この他に、お手入れ体験を実施することがあります。くわしくは、展示館ホームページをご覧ください。

10.《一期三振り~助廣を追え!~ 》 三振りの刀の中から、助廣の刀を探し出してもらいます! 
開催日:8/14㈰
時 間:午前9時~午後4時30分(他のイベント中は休止)
会 場:鉄の展示館
定 員:先着10名
対 象:中学生以上
参加費:500円(入館料別)

11.《一期三振り~清麿を追え!~ 》 三振りの刀の中から、清麿の刀を探し出してもらいます! 
開催日:8/21㈰
時 間:午前9時~午後4時30分(終日開催)
会 場:鉄の展示館
定 員:先着10名
対 象:中学生以上参加費:500円(入館料別)

12.《「刀職者実技研修会」一般公開 》 日本刀制作に関わる様々な伝統技術(刀身制作・研磨・拵下地・金具制作・柄巻)の専門的技術向上をはかるための研修会を一般に公開します 
開催日:8/26㈮~28㈰
時 間:午前10時~午後4時(最終日は午後3時まで)
会 場:鉄の展示館
参加費:無料(入館料別)

13. 《小柄小刀を作ろう! 》 2日間かけて、本物の小柄小刀を作ります 
開催日:8/27㈯・28㈰
時 間:午前10時~午後5時
会 場:宮入鍛刀道場(初日集合は鉄の展示館)
定 員:先着10名
対 象:高校生以上
参加費:50,000円(入館料込み)
申込み:往復はがきでもしくはメールで申し込み。先着順 。
往復はがきもしくはメールに
 (1)参加希望者名(1組5名様まで)
    (2)代表者の住所・電話番号
    (3)往復はがきの場合は返信用はがきに宛先を記入の上、鉄の展示館イベント係までお送りください。
〠389-0601 長野県埴科郡坂城町坂城6313-2    Tel. 0268-82-1128tetsu@town.sakaki.nagano.jp