天然砥石を試す

またですがすみませんな。興味ない人が殆どだと思います。
d
しかし大切な事なんですよ。
良い仕事には良い砥石が必要なんです。
近年良質な天然砥に出会える機会は減っています。
値段も上がっていると感じる事も増えました。
趣味の研ぎをされる方の影響もあるようです。
我々職人は年間結構な数の天然砥を使いきります。
しかし趣味の方は一本を一生掛けて使います。
一本10万、20万、30万でも買ってしまう人は買ってしまいます。
私には手が出ません。
なんですかこの構造は。

さて今日は大平の戸前。
地艶は中山の戸前と誰が決めたのでしょう。
誰も決めていません。
引くのは内曇と言ったのは? そう習ったからそうしている。
と言う事で大平戸前を引く。



刃取りのこと

刃取りは、色、深さ、ぼかし具合、形(かたち)などについて、研師や刃艶の個性が出やすい。
色やぼかし具合などは刃艶の質の影響が出やすく、目標点さえ正しければ良質な刃艶の使用でそこに辿り着く事が出来る。
しかし「形」に関しては研師それぞれが持っているセンスの枠を超える事はなかなか困難である。
研師は皆、様々なパターンの刃取りをイメージ出来、それを形に表す事が出来るはずで私も同じだが、時に自分の中には無いパターンに刃取られた刀に出会う事がある。
先日、とある脇指の横手下、3cmほどの間だが私の中には無いパターンに刃取られていた。
目に焼き付けようにも感度が低くすぐに忘れてしまうので携帯写真を撮らせてもらった。
何故?と問われ説明したが、なんとその部分だけ訳有って棟からではなく、刃から刃取ったと言う。

刃取りには、棟から取る方法と刃から取る方法がある。
どちらが良いと言う事は無く、流派や得手不得手、また個々の考えの違いでどちらかを行う。
刃から取る方も刃文によっては棟からも行う人もあると聞くが、棟からが基本の人は全てを棟から行う人の方が多数派だと思う。
私も特殊な物や特に理由の有る場合以外は棟から刃取る。

今回の脇指も棟から刃取る人の刃取りだが、その部分、刃から刃取った事により、枠を超えた訳である(本人はまだ研磨歴が短いため気が付かなかったようだ)。
正直今まで考えた事が無かった。
さてまた大変だ。 枠超えは簡単ではない。



古い時代に採掘された砥石を試す

oo
初見では水木原かと思ったが濡らして見ると水木原とは違う蓮華がある。
しかし長らく見ている現行の内曇とも違う所が大変興味をそそる。

刀剣研磨に使用され「内曇」と呼ばれる砥石は一般には大平山の物を指す。(内曇砥とは通常は天上巣板を指し、他にも内曇砥を産出する山はある。そしてその中には刀剣用として優れた性質の物もある)
かつて大平山にはいくつかの採掘口があり坑道が広がっていた。
しかし他の殆どの山と同じく、様々な理由から閉山し、大平山では石原砥石工業所さんの採掘場だけが残り内曇砥の供給を続けていた。
私は詳しい位置関係を知らないが、よく耳にする話では、石原砥石工業所さんと日本砥石砿業さんが山の両側から採掘を行っていたそうである。
今日試した砥石は既に閉山しているが日本砥石砿業さんが採掘した大平山坑道から産出した古い時代の砥石だ。

早速砥石試し用小刀を当てて見たが、非常に明るい砥石であった。
しかし少し絞まり気味で筋も多く使い辛い石でもあり、改めて時間を掛けて試してみたい。

因みに、近年並川平兵衛商店さんが、閉山していた大平山の採掘場を再開させたと聞く。
研師にとっては非常に明るいニュースである。